犬の精巣腫瘍摘出手術

飼主のみなさま、こんにちは。今回は精巣腫瘍摘出です。一般的には去勢手術ですが、正常な精巣ではありません。つまり、取除いた精巣を病理組織診断して腫瘍なのか?炎症なのか?他に変化が起きているのか?はっきりします。今回は結果が確認されているので精巣腫瘍とさせて頂いております。

今回の症例は、11歳、雄の柴犬です。フィラリア予防シーズンということで来院した時に、身体検査を同時に行うわけですが、この際に左右の精巣の大きさが異なることに気付きました。総合的に精巣腫瘍の可能性が高いため手術することになりました。写真は、精巣を摘出する前の陰嚢の写真です。精巣は左右1個づつありますが、画面右側の精巣が大きくなっているのが解ります。

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次の写真が、摘出した精巣です。画面右側の精巣の一部(棒で示している部位)が、暗赤色を呈して血管構造が不明瞭になっているのがわかります。どのような変化が起こっているのか?病理組織検査をすることになります。犬の精巣腫瘍は主にセルトリ細胞腫 間質細胞腫(ライディッヒ)精上皮腫の3種類の腫瘍が殆どです。その発生率は高齢になるにつれ高くなることが知られています。診断時の平均年齢は9-11歳ですが、停留精巣(陰睾)の腫瘍では、より若い傾向にあることが知られています。

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11歳でしたが、意外と手術後は元気があり、次の動画は術後5時間後の状態です。念のため、翌日退院することになりました。化膿止めを投薬して終了となりました。

今回、改めて身体検査の重要性を再認識しました。フィラリアや混合ワクチン接種などは、特に症状がなければ、何気ない理由で動物病院に行きますが、そこで普段の何気ない日頃の疑問を質問したり、身体検査をすることで早めに病気に気付き治療を開始できる機会になっています。本当に基本の身体検査が重要です。

 

 

次の症例は、9歳のコーギーの雄です。主訴は、血尿と睾丸を痛がり、舐めているという主訴でした。身体検査にて、睾丸を触診すると精巣(睾丸)の大きさが異なり、その表面が凸凹になっているのが解りました。少し触れるだけで、やはり異様に痛みがあるようでした。総合的に、精巣腫瘍の可能性が高いために両側共に精巣を切除することになりました。

手術前には胸部のレントゲン写真と血液検査、尿検査を行いました。

下の写真は、手術前の写真です。表層の一部が傷がついているのが解ります。この部分を自分で気にして噛んでしまったと思われます。この傷から出血して尿と混ざり、血尿に見えたと推察されました。

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次の写真が、切除した精巣です。表面が全体的に凸凹となっているのが解ります。M2190013

次が手術後の写真です。特別なことはありませんが、抜糸の必要はありません。M2190007

次の動画は手術終了後の動画です。非常に元気が良いですね。

しかし、この症例は、手術前の血液検査では異常のなかった腎臓の数値が、手術後の血液検査では正常値から逸脱して上昇していました。つまり、麻酔により慢性腎不全が顕在化した状態となりました。その後、静脈点滴を行い症状と血液検査の数値は落着き、翌日に退院されました。

今回も手術前の検査が、非常に重要であると再認識させられました。

次の症例は数年前から精巣腫瘍であることは認識していましたが、年齢や他の疾患などもあり手術に踏み切れませんでした。ただ調子が良く、腫瘍の巨大化のため、歩行がしずらくなったため手術を希望するに至りました。次の写真が手術前の状態です。確かに重そうで歩行しにくそうですね。

2~3年間の間に優に5倍の大きさになっており、その表面は触診にて凹凸が触れます。さらに水腫を伴っていたので大きさや重さが増しているのが推察されました。実際に切除した精巣です。右の正常な大きさの精巣に比べてかなり大きく、表面が凸凹しているのがわかりますね。

定法通り、血液検査などの術前検査を行い手術することになりました。