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電気メス機械を導入しました。

今回は電気メスの機械を導入した事をご報告します。当院は昨年まで電気メスを使用していませんでしたが、本年より電気メスを導入しました。電気メスは止血機能に優れた外科機器です。

昨年までは、出血すると外科用縫合糸で縫合して止血していましたが、電気メスの導入によりメス先で出血部位に接触することにより止血できます。特に次の症例の様に出血箇所が多い腫瘤の切除などでは手術時間の短縮が期待できます。他にも色々な機能があり便利です。

次は手術終了時の写真です。手術終了時では電気メスを使用しても使用しなくても見た目に変化はありません。抜糸までの日数にも変化はありません。

ただ単純に手術時間が短縮できることを目的に電気メスを導入しました。上の症例も16歳でしたのでなるべく出血なく、手術時間が短くなることをペットも飼主さんも私も望んでいることは確かでしょう。手術後から以前にも増して食欲がでたことをお聞きしたら、みんな嬉しくなってしまいますね。下の写真は抜糸時の写真です。

 

高齢猫の麻酔について

今回は高齢猫の麻酔についての話です。猫に限らず、高齢の動物は若い動物と比較して何が違うのか?一つ目は、何か基礎疾患をもっていることが多い事。二つ目は、各臓器の予備能力が低下している事ではないでしょうか? 予備能力とは循環機能や呼吸機能、肝臓や腎臓の代謝機能などが、年齢と共にその機能が減少して、若い個体に比較して変化に対応する能力が低下していることを意味しています。

麻酔をかける前には、事前に身体検査 血液検査 レントゲン検査 エコー検査などを行います。ただし、様々な理由でこれらの検査をできない症例もいます。これらの検査で確認された基礎疾患の治療をおこないます。あるいは、基礎疾患の重症度などにより麻酔を用いることができない症例もいるかも知れません。

様々な要因を考慮して獣医師は麻酔薬を選択することになります。また、体重当たりの麻酔量も少し減少するなどの工夫も必要かもしれません。一般的に老齢動物の麻酔薬の用量は減少して、麻酔からの回復時間は延長します。使用する麻酔薬には夫々良い面と悪い面がありますので、どの麻酔薬を用いるにしても、目的をもって使用するのが良いと思われます。

その他に老齢動物は循環血液量が減少しているので輸液を行います。また、体温低下が起こり易いため、保温マットを利用するなどの準備も必要です。

次の症例は19歳の避妊メスの猫です。体表に腫瘤ができ、その表面は脱毛と潰瘍を呈していました。猫はその部位を舐め続けるため少し出血して生活の質の低下につながるため手術を依頼しました。 基礎疾患は慢性腎不全で普段より内服薬を投薬していました。

手術は無事終了して、手術後に血液検査異常がないことを確認して終了となりました。この症例は体に触れられることを極端に嫌うため、術前にエコー検査などはできませんでしたが、無事に終了することができました。次の動画は手術後1週間して抜糸の時の状態です。飼主さんもご飯を変わりなく食べているとのことでしたので安心しました。

こんばんは、谷村です。本日は、猫の胃切開の手術です。文字通り胃を開ける手術です。胃を開けるにはそれなりの理由があるのですが、最近よく目にするのは女性の髪を束ねるゴムを多量に食べてしまう猫です。

何故か分かりませんが、少量ではなく、いつも多量です。猫のお腹を触診している時に、胃の中に独特の硬い異物に触れます。これはすぐに開腹した方がよいなと感じるものです。

他の異物の場合はこの様に胃を触診して気づくことは殆どありません。先日もこの様な独特の胃の触知のためにすぐに開腹したかったのですが、血液検査にて腎臓酵素値の上昇のために1日点滴を行ってから手術をしました。

下の写真は1頭の猫の胃の中にあった多量のヘアバンドです。胃はヘアバンドでパンパンに膨らんだ状態でした。定法通りに胃の血管の走行の少ない場所を必要最低限の長さで切開します。すべて取り出したら胃を閉じます。お腹の中を生理食塩水で良く洗い閉腹して終了です。因みにこの症例は空腸でもヘアバンドが閉塞しており小腸も切開しています。

手術後は2日間入院して退院することになりました。今は元気に過ごしています。他のヘアバンドを食べた症例も似たり寄ったりの量が胃から取り出しました。その後もまた、食べないか?心配になります。

他にも誤飲にはゴム製品や紐などが多く見受けられます。これらの異物は口腔と胃あるいは胃と小腸 あるいは口腔と小腸で繋がっていることも多く、どこで切開するか?も重要なポイントかもしれませんね。

手術後は点滴して飲水から初めて、少量のご飯から徐々に食事の量を増やします。問題がなければ日に日に元気と食欲が出てきます。

猫の骨盤骨折

今回は猫の骨盤骨折です。この猫さんは数日顔を見せないと思っていたら庭でうずくまっている所を見つけてご来院されました。骨盤骨折は骨折部位の中でも割合的には少ないと思います。その原因は交通事故が殆んどで、今回も外にいたのでその類だと思います。

先ずは全体的に血液検査、レントゲン検査、エコー検査などをして全体的な異常がないか?確認します。この症例は骨盤骨折以外に異常を認められませんでしたが、数日おいて手術をすることになりました。次に骨盤のどの部位が骨折しているのか?が重要です。

骨盤は腸骨、恥骨、挫骨の3つの解剖領域に分かれます。次の写真は手術前の骨盤写真です。この写真では右腸骨骨折があるのと左恥骨部、左挫骨部が骨折しています。骨盤骨折でも1カ所のみ骨折している時は少ないようです。この下の写真の様に数か所で骨折している時が殆どです。

このまま放置しておくと骨盤腔が狭くなり、今後便秘が起こる可能性が高くなります。便秘が起こるとその後、内服薬が必要になったり、便を排出させる処置が必要になります。恐らく、それは猫にも飼主さんにも時間と労力の負担になることが予測されます。

次の写真が腸骨をプレートにて固定した手術後の写真です。手術前の写真と比較して骨盤腔内が広がったのがわかります。腸骨が整復されたことにより挫骨の骨折部も正常な位置となっています。恥骨に関しては骨折部の変位があることがわかります。

次の動画が手術翌日の状態です。特に動画を載せる必要もなかったのですが、飼主さんは見ると安心するものなので載せました。午後から食欲も出るようになりました。私達の前では一切動かないのでご勘弁ください。安静にして早く退院できるといいですね。

猫の鎖肛について

鎖肛について

今回のテーマは「鎖肛」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれません。肛門と直腸の連続性を発生過程の中で失った先天的疾患です。しかし、この病気を持つ子は発育過程の中で死に至るため、その発生率は良く解っていません。 鎖肛には肛門膜と直腸の位置関係によりⅠ~Ⅲ型に病型分類されています。

飼主さんは、「排便したいがでていない。」との主訴で来院されます。確かに症例の肛門を認められません。症例は猫で体重は750gくらいでしょうか? 「えっ、そんなに大きくなるの?」とお感じになった方もいるかもしれません。

この症例は、直腸と膣の間に瘻管(トンネル)が形成されていたため、液状の糞便を排泄していたことが推察されます。そのため、ここまで大きくなりましたが、この月齢になると食欲も増し、排便も瘻管から排出される大きさや硬さではなくなった為症状が顕在化したと考えられます。

次の写真は手術直後の写真です。

手術後数日間お預かりして排便と排尿が出るのを確認してから退院となりました。自力で排便コントロールができたので安心しました。因みに、私はこの鎖肛を猫で2度診ましたが、犬では診たことがありません。

 

 

猫の肘関節脱臼整復手術

投稿するのは久しぶりになってしまいました。今回は猫の肘関節・脱臼整復手術です。あまり、肘関節の脱臼はありません。今回紹介する症例も何度か非観血的に整復を試みましたが、数日すると再脱臼を繰返しましたので、手術にて整復手術をすることになりました。

なぜ?肘関節の脱臼をしてしまったのか?原因は屋外にでる猫ですのでわかりません。 また、非観血的整復をするごとに脱臼しやすくなった感じがしました。そして、脱臼している患肢は、地面に着地し負重することはできません。

次の写真は手術の傷口です。肘の外側を切開して脱臼を整復してボルトを上腕骨遠位端と橈骨近位端にいれて靭帯の役割をすることで再脱臼を防ぐ手術を行いました。

次の動画がおよそ手術10日後の状態です。抜糸を終えて日に日に患肢に負重しているのがわかります。

現在、手術後およそ2年が経過していますが、再脱臼はなく元気に生活していることを確認しています。

 

 

猫の子宮蓄膿症について

今回は猫の子宮蓄膿症についてのお話しです。猫の子宮蓄膿症は、犬と同様に子宮内に膿が溜まる病気です。病態に違いはないのですが、猫は若齢での発症も多いのではないか?と思いレポートさせて頂きました。 成書には、犬も猫もシニア世代に入る年齢から増加する傾向にあると記載されていますが、猫では1歳前後でも発症することが意外とあると思います。今回も生後1年くらいの猫の子宮蓄膿症を治療したのでレポートさせて頂きました。

この症例は1歳の雌ネコです。既往歴はありません。外陰部からの出血をもとにエコー検査によりすぐに手術になりました。 早期の発見でしたので食欲もありますし、症状も明瞭ではありません。しかし、開腹すると予測通り子宮は腫大していて、その中を確認してみると下の写真の様に膿が貯留しています。

手術の傷口も次の写真の様に通常の避妊手術に比べて少し大きいのですが、手術後の状態はある程度元気でしたので2日入院して退院することになりました。

こんなに元気で若い猫が子宮蓄膿症になるわけがない。とついつい考えがちですが、先入観なく診療することの大切さを痛感させられる症例ですね。

猫の試験的開腹手術

今日は猫の試験的開腹手術です。この処置はあまりないのですが、どうしても判断がつかない時に診断と治療を目的に行います。色々と理由で行われます。現在では医療機器の発達により昔よりこの処置は減っているのではないでしょうか?

次の症例は持続的な嘔吐と下痢、そして体重の著しい減少です。麻酔に耐えられる状態の時に診断と治療を目的に試験的開腹手術を行うことにしました。 試験的開腹なので、上腹部から下腹部まで切開します。開腹後は、順に臓器を確認する作業となります。 この症例では空腸を中心に小腸壁が全域で肥厚していましたので、小腸壁の一部を採材し、他に異常がないか確認して閉腹することになりました。 下の写真は採材しているところです。

採材した組織は病理組織診断を依頼して診断してもらいます。その結果をもとに治療となります。この症例も病理診断をもとに治療を行い、現在では元気に過ごしております。次の動画は手術後の状態です。

 

猫の肛門嚢摘出手術

今回は猫の肛門嚢摘出手術です。飼猫のおしりの横が化膿して破けた経験をお持ちの飼主さんも多いのではないでしょうか?肛門嚢は分泌腺細胞に内張りされ、分泌物を排便とともに排出します。

しかし、飼主さんが気づかない内に閉塞して分泌物が溜まり、炎症などもおきて肛門嚢が破裂してしまうことがあるのです。 この様に肛門嚢破裂を繰返す猫さんは、肛門嚢摘出手術の適応になります。 肛門嚢がなければ分泌物も溜まらないので、肛門嚢の病気が無くなります。もちろん、臭い分泌物も排出されなくなります。

手術は事前に予約・診察して頂き、当日は絶食して来院して頂きます。全身麻酔を施し、肛門周囲の被毛を剃毛します。下の写真は手術前の写真です。m2840001

次の写真が摘出した肛門嚢です。改めて見ると意外に大きいような感じもしますね?m2840015

次の写真が手術終了後の写真です。m2840011

1週間は抗生物質を投薬して頂き、エリザベスカラーを装着して頂きます。抜糸は特になく手術創を確認して終了になります。肛門嚢破裂を起こした経験のあるネコさんの飼主さんは、是非一度ご検討されては如何でしょうか?

猫の股関節脱臼の手術

今回は、猫の股関節脱臼の手術です。 猫で股関節脱臼のみを発症した症例は個人的には少ないと思います。症例は、アメリカン・カールです。普段は、室内飼育ですが、「どうやら外へ逃出してしまい帰宅後から右後肢を引きずる。」という主訴です。身体検査後に、骨盤をレントゲン撮影しました。下の写真で右の股関節(向かって左)が脱臼しているのが解ります。これ以外の異常は認められませんでした。

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次が手術後のレントゲン写真です。手術は、股関節から大腿骨頭が外れないようする作業です。そのため骨盤内には金属が入っています。この手術方法は犬の股関節脱臼の手術と同じです。犬の股関節脱臼もご参照ください。

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本当は入院して安静にしているのが理想ですが、この症例は、気が強く全く触れることが出来なかったので、すぐに退院になりました。ただし、退院してもケージで過ごして頂くのは変わりません。 次の動画は抜糸をした時の状態です。手術創の大きさなどが参考になれば幸いです。