猫の体表腫瘤切除手術

一般論

猫の体表腫瘤ですが、つまり猫の皮膚表面にできた腫瘍についてのお話です。様々な場所に様々な大きさの腫瘤を飼主さんは見つけられて来院されます。病理検査をすると炎症性病変であったり、良性腫瘍や過形成、あるいは悪性腫瘍の場合など様々です。

当院では基本的に腫瘤を確認すると、針で腫瘤を指して細胞を採取して顕微鏡で確認します。大まかに①様子をみてよいもの②病理検査に判断をゆだねるもの③すぐに切除した方がよいものに分かれます。それにより方針が異なってきます。

各症例

症例1

次の症例は「陰嚢部をよくなめている。」との主訴で来院されました。確認すると腫瘤は陰嚢に形成されて表面が赤く、脱毛して軽度に潰瘍を呈していました。内服薬で投薬しましたが、その大きさに変化がなかったため、針で腫瘤を指して細胞を採取して標本を作製しました。顕微鏡を確認すると「肥満細胞腫」の可能性が高いため③のすぐに切除した方がよいため、飼主さんとご相談したうえで切除する方針にきまりました。

切除した組織は、やはり病理組織検査に依頼することで、より詳細な情報を得ることができてその情報をもとに切除後の治療方針や予後などを説明することになります。次の写真は切除して2週間後の写真です。

定期に経過観察することになりました。抗がん剤治療などもありますが、選択肢の中から飼主さんが最も良いと考えた治療方針が最適と考えています。

症例2

M2090001

私個人の経験では、犬に比べてその発生率は低い様に思われますが、発生すると悪性傾向が強い印象があります。手術内容は、定法にしたがい、腫瘤周囲から切除する作業になります。 切除した腫瘤は、病理組織診断により良性なのか悪性なのか、しっかり切除できているのか?検査します。

症例は、15歳のオス猫です。初めて気付いたのは2年前で、最近さらに大きくなり、皮膚表面が自壊してきたとの主訴で来院されました。すでに発生部位などは解りませんが、生活の質を考慮して切除することになりました。下の動画の様に、腫瘤は腰から下に、非常に大きいのがわかります。

下の写真が切除した腫瘤です。大きさは20×10×10cmで重さが1.4キログラムもありました。M2100015

次の動画が、手術直後の状態です。年齢も高齢で、麻酔時間も長かったわりに状態が落着いていたので助かりました。食欲と元気も手術3日目より徐々に出るようになりました。

次の動画が、手術5日後の状態です。通常、手術創は1本の線になりますが、今回の様に大きな腫瘤の場合には、手術創が少し複雑になります。

次の動画が約2か月後の動画です。一般健康状態や外貌からも全く問題ありませんが、触診をすると非常に小さいですが、悪性腫瘍の再発と思われる組織が確認されました。