カテゴリー別アーカイブ: 整形外科

猫の骨盤骨折

今回は猫の骨盤骨折です。この猫さんは数日顔を見せないと思っていたら庭でうずくまっている所を見つけてご来院されました。骨盤骨折は骨折部位の中でも割合的には少ないと思います。その原因は交通事故が殆んどで、今回も外にいたのでその類だと思います。

先ずは全体的に血液検査、レントゲン検査、エコー検査などをして全体的な異常がないか?確認します。この症例は骨盤骨折以外に異常を認められませんでしたが、数日おいて手術をすることになりました。次に骨盤のどの部位が骨折しているのか?が重要です。

骨盤は腸骨、恥骨、挫骨の3つの解剖領域に分かれます。次の写真は手術前の骨盤写真です。この写真では右腸骨骨折があるのと左恥骨部、左挫骨部が骨折しています。骨盤骨折でも1カ所のみ骨折している時は少ないようです。この下の写真の様に数か所で骨折している時が殆どです。

このまま放置しておくと骨盤腔が狭くなり、今後便秘が起こる可能性が高くなります。便秘が起こるとその後、内服薬が必要になったり、便を排出させる処置が必要になります。恐らく、それは猫にも飼主さんにも時間と労力の負担になることが予測されます。

次の写真が腸骨をプレートにて固定した手術後の写真です。手術前の写真と比較して骨盤腔内が広がったのがわかります。腸骨が整復されたことにより挫骨の骨折部も正常な位置となっています。恥骨に関しては骨折部の変位があることがわかります。

次の動画が手術翌日の状態です。特に動画を載せる必要もなかったのですが、飼主さんは見ると安心するものなので載せました。午後から食欲も出るようになりました。私達の前では一切動かないのでご勘弁ください。安静にして早く退院できるといいですね。

猫の肘関節脱臼整復手術

投稿するのは久しぶりになってしまいました。今回は猫の肘関節・脱臼整復手術です。あまり、肘関節の脱臼はありません。今回紹介する症例も何度か非観血的に整復を試みましたが、数日すると再脱臼を繰返しましたので、手術にて整復手術をすることになりました。

なぜ?肘関節の脱臼をしてしまったのか?原因は屋外にでる猫ですのでわかりません。 また、非観血的整復をするごとに脱臼しやすくなった感じがしました。そして、脱臼している患肢は、地面に着地し負重することはできません。

次の写真は手術の傷口です。肘の外側を切開して脱臼を整復してボルトを上腕骨遠位端と橈骨近位端にいれて靭帯の役割をすることで再脱臼を防ぐ手術を行いました。

次の動画がおよそ手術10日後の状態です。抜糸を終えて日に日に患肢に負重しているのがわかります。

現在、手術後およそ2年が経過していますが、再脱臼はなく元気に生活していることを確認しています。

 

 

犬の断指術

今回は、指の切断術です。この手術は、指の先がj感染症を起こすなどして骨髄炎に波及したり、あるいは重度の外傷の治療を目的に行われます。また、大型犬などでは、指に腫瘍が発生することが知られていて、この適応となります。

早速、実際の症例を見てみましょう。症例は、10歳メスのセッターです。主訴は、「1か月前に猫を追っかけた際に、指を切った後に化膿して治らない。」とのことでした。患部を診ると、著しく第四指が肥厚して化膿しているのが解ります。 M2620001

患部をレントゲン撮影してみると、基節骨の近位端から末節骨まで確認できず、さらに基節骨の近位端は骨髄炎を起していました。よって指の切断手術をすることになりました。ただし、大型犬のため腫瘍なども考慮して、種子骨や関節包もなるべく取除き、切除した組織を病理組織診断を依頼しました。著しく肥厚した指の切除は、肉球辺縁での縫合になり、皮膚に余裕はありませんでした。

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次が手術翌日の状態です。1日中殆ど足を挙上していました。犬は、体重の7割を前肢で支えて、その負重は主に第3指と第4指にかかることが知られています。。今回は、第4指の切除なので心配な面もありました。

しかし、経過を追うごとに徐々に負重し始めました。 次の動画が抜糸をした術後7日後の歩行状態です。殆ど左右の差がないくらいにしっかり歩行しているのが解ります。

指の腫瘍

今回の症例は14歳のビーグル犬です。4カ月前から指が徐々に大きくなっていることに気付いていましたが、食欲も元気もあることから様子を見ていたようです。来院時には、指はかなり腫大して隣の指も少し腫大しているような状態でした。血液検査では、著しい変化はありませんでしたが、触診で膝下リンパ節が腫大していました。

手術は膝下リンパ節を切除することと、腫瘍を切除することを目的に行いました。腫瘍の切除はかなり大きく切除したため、表皮がすべて覆うことはできませんでした。次の動画が術後10日目の状態です。皮膚の欠損部分もありますが、順調に表皮が覆われて順調です。

切除後は、定法通り切除した腫瘍とリンパ節を病理検査に提出して、しっかり切除できているのか?リンパ節に転移していないか?診断は何なのか?を調べます。様々な条件をもとに手術後も抗癌剤が必要な場合には継続して行うことも必要かもしれません。

 

猫の股関節脱臼の手術

今回は、猫の股関節脱臼の手術です。 猫で股関節脱臼のみを発症した症例は個人的には少ないと思います。症例は、アメリカン・カールです。普段は、室内飼育ですが、「どうやら外へ逃出してしまい帰宅後から右後肢を引きずる。」という主訴です。身体検査後に、骨盤をレントゲン撮影しました。下の写真で右の股関節(向かって左)が脱臼しているのが解ります。これ以外の異常は認められませんでした。

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次が手術後のレントゲン写真です。手術は、股関節から大腿骨頭が外れないようする作業です。そのため骨盤内には金属が入っています。この手術方法は犬の股関節脱臼の手術と同じです。犬の股関節脱臼もご参照ください。

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本当は入院して安静にしているのが理想ですが、この症例は、気が強く全く触れることが出来なかったので、すぐに退院になりました。ただし、退院してもケージで過ごして頂くのは変わりません。 次の動画は抜糸をした時の状態です。手術創の大きさなどが参考になれば幸いです。

骨プレート除去手術

骨プレート除去手術は、骨折を整復するため使用したプレートを取除く手術です。骨プレートを取除く目的は色々ありますが、寒い時期には痛みの原因となったり、異物反応やプレートの刺激により炎症を起こす原因となったり、成長過程のペットでは正常な骨の成長を妨げる原因なったりするなどの理由が挙げられます。

この症例は手術後は安定していましたが、プレートを付けた患肢の皮膚表面を手術1カ月後から気にし始めました。結果、皮膚の表面は赤く爛れることが多くなりましたのでプレートを除去することにしました。骨折整復手術から1カ月後ですが、若齢のため骨折の治癒も早く、安定していました。

プレート装着時のレントゲン写真です。

次の写真がプレート除去時の写真です。

次の動画はプレート除去して2日後の状態です。食欲も出始めました。お陰様で肢も問題なさそうですね。しっかりと負重しています。

次の動画がプレート除去1週間後の状態です。あまり気にしているようには見えませんね。プレートを除去する前より元気も食欲もあるように見えます。

 

下の症例は、イタリアン・グレート・ハウンドの7歳の症例です。1年前に右側橈骨遠位端の骨折整復手術を行い日常を過ごしていましたが、1週間前から骨折部位をしきりに舐めるとの主訴で来院されました。下の写真の様に皮膚は脱毛して、一部で菲薄化して漿液が排出していました。同部位のレントゲン変化を認めませんでした。歩行も問題ありませんでした。M1850001

しかし、骨プレートが刺激となり同部位を気にしていることから、プレートを除去することで症状は治まると考えました。デメリットは、再骨折する可能性もありますので、プレート除去後は安静に過ごすように伝えて手術になりました。次の写真がプレートを除去前後のレントゲン写真です。

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次の写真が、手術2週間後の写真です。抜糸も終了して手術前に認めた皮膚症状がないのが解ります。もちろん、患部を舐めることも無くなりました。

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次の動画が同じく手術2週間後の状態です。この症例は、術後すぐに歩行し始めましたが、一週間後に少し跛行(びっこ)を示しました。その後また、徐々に跛行は順調に歩行しているのがわかります。

犬と猫の膝蓋骨内方脱臼手術

膝蓋骨内方脱臼は、文字通り膝の膝蓋骨が関節から膝の内側へ脱臼してしまった状態です。本来、この膝蓋骨は、上下運動の動きにより膝を動かすことができますが、脱臼状態になると本来の動きは出来ないため、後肢を持上げた状態になります。

この脱臼の状態には進行状態によりグレードがありますが、脱臼が改善されない場合には手術をお勧めします。手術は、関節の溝を削り、筋肉の緊張を緩和するものが基本となります。溝を深くすることで膝蓋骨の脱臼を防ぐことになります。

次の症例は12歳のトイプードルです。右後肢を持続的に挙上しているため来院しました。この時は膝蓋骨内包脱臼で膝蓋骨を滑車溝に整復するも直ぐに脱臼してしまう状態でした。さらに、レントゲン撮影をすると、十字靭帯も断裂していることが解りました。そのため、膝蓋骨内包脱臼の手術と同時に十字靭帯断裂の手術も行った症例です。次の動画は術後凡そ3週間後の動画です。少し違和感はありそうですが、歩行しています。

では、実際の症例をみてみましょう。症例は、8歳のオスのマルチーズです。主訴は「階段など段差のあるところを登らなくなった。」とのことです。身体検査では、左後肢の十字靭帯断裂とグレード4の膝蓋骨内方脱臼です。つまり、膝蓋骨は常に滑車溝から外れている状態です。下の動画は、手術前の状態です。一見、何でもない様にみえますが、自宅では主訴のような症状があります。

手術終了後は3週間程度の入院になります。入院時にはバンテージ交換や鎮痛や感染症対策が重要となります。また、再脱臼なども起こしていないか?確認しています。手術翌日は患肢を挙上した状態ですが、徐々に負重するようになります。下の動画が手術10日頃の動画です。

次の動画が手術およそ1か月後の動画です。非常に順調に回復しています。以前よりも歩行がスムーズになって生活しているとご報告を受けました。治療が終了しました。

猫の骨折整復手術

骨折の時の手術について

猫の骨折は、犬よりも稀ですが、時折認められます。多くは交通事故などの原因が多いのではないでしょうか?骨折部位はプレートとボルトあるいは、ピンにて固定をします。手術後は安静にして骨が癒合するのを待ちます。この時、猫では基本的にはギプスなどで保護しません。

プレート固定手術

大腿骨骨折(後肢)

次は実際の症例を見てみましょう。骨折の原因は布団の中にいる猫さんを気付かず踏んでしまったことが原因です。来院時には触診にてすぐに骨折しているのが解りました。その時のレントゲン写真です。骨折部位は右大腿骨遠位端で横骨折しているのが解ります。                                 

次の動画は翌日の状態です。やはり元気はありません。患肢を下にしています。

来院から3日目に手術を行いました。下の写真が手術時にプレートとボルトで固定している時の写真です。下に3つボルトを入れる必要があったので、膝の関節包も切開してあります。比較的スムーズに手術は終わりました。

次の動画が手術終了1時間後の動画です。やはりぐったりしていますね。でも、これはぐったりしているのではなく、落着いている状態です。鎮痛薬の効果がしっかり出ていると思われます。

次の動画が手術翌日の動画です。ご飯を出すと勢いよく食べ始めました。そして、手術した右後足も地面につけ始めていますね。先ほどの動画に比べてすごく元気が出ていることがわかります。個人的にはもう少し大人しくしていてほしいのですが・・・。退院がはやくなりそうですね。1週間もすると抜糸をしますので、しばしお待ちください。

手術後5日目に本日抜糸をしました。非常に元気にしております。

早いもので手術後1週間が経過しました。順調に過ごしております。

下腿骨骨折(後肢)

今回の症例は、興奮して手すりから落下したことが原因で下腿骨を骨折してしまいました。骨折時の写真です。

下腿骨は、その内側面は豊富な筋肉で覆われていないため、骨折部位を把握しやすい特徴があります。また、手術では内側よりアプローチして写真の様に内側面にプレートを固定します。

次の動画は手術2日後の状態です。すでに後肢を着地しています。食欲も出てきて元気に過ごしていることがわかります。早く退院できるといいですね。

手術6日目に抜糸しました。傷口に問題はなく、エリザベスカラーを外しました。

 

 

成長板骨折のためピンで固定したレントゲン写真

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手術後の様子

骨折手術から半年後の写真です。固定していたピンは既に役割を終えて、少し移動しいるのが解ります。何かの折に痛みが出る可能性があるので、次回にピンを抜く予定となりました。

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動画の写真の子が生後1年となり、使用していたピンを抜き、抜糸した時の写真です。こんなに立派になりました。M1750001

 

 

十字靭帯断裂整復手術

犬の十字靭帯は、大腿骨の遠位端と下腿骨の近位端をつないでいる靭帯です。この靭帯の断裂は、膝に過度の緊張や負担がかかったりした場合に突然発症するケースが殆んどです。当然、靭帯が断裂すると膝関節が緩み、不安定な状態になります。 私の経験では、犬の犬種や体格には関係ない様に思われますが、比較的小型犬での発症を目にします。

この症例はトイプードルの9歳です。とても大切に育てられていますが、ちょっとしたきっかけで左後肢をびっこするようになりました。身体検査等で確認すると十字靭帯断裂であることがわかりました。次の動画は手術までの歩行状態で左後肢が殆ど負重していない事がわかります。

次の動画は手術後凡そ10日後の状態です。バンテージはしているものの、左後肢は地面に負重していることがわかります。もう少しで退院です。

 

次の症例は十字靭帯断裂を確定して手術しましたが、入院内では全く立ち上がりませんし、動きません。ただのんびりしているだけなので、術後の肢の状態が良いのか?悪いのか?判断が付きかねた症例です。あまりにも動かないので本日、確かめてみました。動画のように悪くないようです。

次の症例も4歳の避妊済み雌のチワワです。やはり急に痛がり、跛行を示して来院されました。検査をすると十字靭帯断裂の可能性が高いため、レントゲンにて確認して確定診断をしました。この動画は術後2日目の状態です。飼主さんにしか慣れていないので、私たちの前では全く動きませんが、ご覧の通り足は着地しているので問題ない様に思えます。引き続き経過観察をしながら入院をしています。

手術5日後もすると随分と余裕が出てきます。表情と態度が穏やかですね。

次の動画は手術8日後に抜糸が終了した状態です。随分と活動性と本来の性格が出てきますね。

次の症例はペキニーズの症例です。やはり跛行が1週間以上続いために来院されました。次の動画は手術後4日目の状態です。まだ不安定ながらも患肢(右後肢)は着地しています。この症例もバンテージにより患肢の負担軽減をする効果が得られます。

次の動画が術後11日目の状態です。バンテージを外した状態で歩行に馴らしています。

次の症例は12歳の柴犬の男の子です。ロープで遊んでいたら絡まり、キャンと鳴いた後から右後肢を挙上したままになり、来院されました。見ていてもかなり痛そうで、ほとんど右後肢が着地していませんね。

次の動画が手術して4日経過した時の状態です。右後肢にはバンテージで固定されています。足は少しづつですが、着地していますね。

次の動画が手術して10日経過した時の肢の状態です。なるべく安静に過ごしていますが、かなり痛みも低下しためか?凄く引っ張る力が強く、肢も随分安定した状態であることがわかります。もう少しで退院ですね。退院時にはバンテージもエリザベスカラーも外して退院です。

次の症例もシーズーの8歳の男の子です。やはり、跛行を示すことで来院しました。下の動画では、左後肢に負重できずに歩行していることが解ります。

身体検査とレントゲン検査にて十字靭帯断裂の診断がつけられ、手術になります。手術は、不安定な膝関節を安定するように行います。次の動画は手術1週間後の歩行状態です。随分と安定して歩行していますね。手術した左後肢にはバンテージ固定しています。時間が経つにつれより安定した歩行になります。

次の症例も比較的若いキャバリアの男の子です。何した訳でもないのですが、急に「キャン、キャン」と鳴いた後から右後肢をびっこを引くようになり来院されました。身体検査等で十字靭帯断裂を疑い、レントゲン検査で確認して手術になりました。次の動画は手術3日後の状態です。痛みに敏感なのか?手術翌日はじっとしていましたが、ようやく本来の調子に戻り食欲が出るようになりました。

次の動画は抜糸の時の状態です。傷口も良好です。

次の動画は、手術13日後で退院まじかの歩行状態です。あまり左右変わりませんね。包帯が巻いてある右足が患肢です。
次の症例は雄のマルチーズです。十字靭帯が切れることで、後肢は不安定になり跛行を示すことになります。下の動画は、手術前の歩行状態で、右後肢がぎこちない歩行になっているのが解ります。こ

次の写真が手術翌日の写真です。少し痛々しいですが、痛みがなくなってくると手術前と異なりしっかりと負重します。2週間後の退院となります。

HP 前十字靭帯断裂 写真

猫の後肢断脚手術

猫の後肢断脚手術は様々なケースで適応となると考えられます。 犬と異なり、悪性腫瘍が足に発生することは少ないと思われますが、その様な時に行なわれます。

当院の猫は,大腿骨の遠位端より化膿して腐っていたため、断脚手術の治療を選びました。この動画の様に後肢断脚手術後も活動性においては影響があまりないのが解ります。ちなみに断脚後7年が経過しています。

犬の前肢断脚手術

犬の断脚手術は足に悪性腫瘍が発生した際に原発巣を除去することで転移を予防する、あるいは生活の質を高める目的で行います。

犬では、大型犬に発生する骨肉腫を切除する目的で断脚手術することが知られています。下の写真は、右前肢橈骨に発生した骨肉腫のために断脚したラブラドルレトリバーです。

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手術後に抗癌治療を行い、手術1年後まで生活することができました。