カテゴリー別アーカイブ: 口腔外科・抜歯

高齢動物の麻酔について

一般的な外科処置をするときにどうしても切り離せないのが全身麻酔が心配の種になることが多いと思われます。当院では、全身麻酔をする前には基本的に血液検査と胸部レントゲン検査を行っています。尿検査やエコー検査なども症例によっては追加することもあります。 その一方でペットが暴れて検査できない場合や費用的な面で検査をしないで麻酔をせざるおえないケースもあることも事実です。

今回は16歳の老犬の歯科処置をする機会を頂いたのでご紹介したいと思います。主訴は左下眼瞼の排膿です。膿は臼歯の歯根膿瘍が原因と思われます。身体検査では心雑音と腰が曲がり、首が少し上げにくいなどの症状を認めました。 皆さんがこの子の飼主さんでしたら全身麻酔をかけて歯科処置をしますか? 少し気が引けてしまいそうですよね。私も患者の立場なら同じです。

しかし、このまま抗生物質を投薬し続けて、この状態で終えるのも気が滅入ります。なので、血液検査と胸部レントゲン検査をして重大な問題がなければ、歯科処置をすることに決まりました。麻酔をする飼主さん全員に説明することですが、それでも絶対の安全を保障するものではないと説明を加えさせて頂きました。次の写真が歯科処置前の写真です。

次の写真も歯科処置前の写真です。歯石が歯を覆っていますね。

次が歯科処置中の写真です。上顎の犬歯と臼歯は抜歯してある状態です。

歯科処置の翌日には次の動画のようにしっかり食事をしていますね。

次の写真が歯科処置、1週間後の写真です。目元は綺麗になって、歯科処置をして大変よかったと思いました。高齢動物への全身麻酔はリスクもありますが、心配し過ぎて処置しない選択肢と同じくらい安全性を確認したうえで行う処置も大切だと考えています。

猫の抜歯とスケーリング

猫の抜歯とスケーリングは、基本的には歯が痛くて食べれない、あるいは歯根膿瘍の時に行なうのが殆どです。処置は、最初にスケーリング処置を行い、歯そのものを評価します。痛みの原因となっている歯や近い将来に抜歯や痛みの原因となるような歯は抜歯をします。歯科処置は、予約していただいた日の午前中に来院していただき、当日あるいは翌日に帰宅します。

この症例は6歳の雄猫で、口腔内からの出血という主訴で来院されました。強い痛みはないのですが、口腔内を観察すると下の写真の様に、歯肉が浮き上がり歯肉が暗赤色に変色して強い歯周炎が残存している臼歯周囲に認められました。M1820004

当院では、歯科処置は全身麻酔下にておこないます。この猫は大人しかったので、血液検査と胸部レントゲン検査を行った後に全身麻酔をかけて歯科処置を行いました。口腔全体を確認した後に、超音波スケーラーにて歯に付着した汚れを取り除きます。この症例では、切歯と犬歯は非常に状態が良いにもかかわらず、臼歯の状態は歯根がすぐに確認できる歯、動揺している歯、既に歯が割れて一部が残っている歯など悪いものばかりでした。よって抜歯することになりました。次の写真が抜歯後です。M1830004

次の動画が歯科処置2時間後の状態です。麻酔覚醒直後は、少し左右に動揺していましたが、暫くすると動画の様に普通ななっています。落着いていましたので、当日退院しました。

超音波スケーリングと抜歯

歯科処置について

超音波スケーリングは、抜歯処置が必要な全ての犬に行ないます。これにより、歯の表面を覆っている歯石を除去できるからです。また、歯と歯肉の間に存在するプラークも丁寧に除去することができます。一方、抜歯は、歯の根元が化膿してしまう歯根膿瘍あるいは口腔内の腫瘤を切除する時に行ないます。また、スケーリング後に歯を観察して、近いうちに直に抜歯が必要になる場合にも行います。

高齢動物の歯科処置について

また最近ではペットの高齢化が進み、高齢犬における歯科処置も増えています。高齢犬に全身麻酔をかけて大丈夫なの?という質問をよく受けます。安全な全身麻酔はありませんが、検査をして安全に行えるように努めています。次にご紹介する症例は15歳のミニチュアダックスフントです。少し痩せていて、両眼は老齢性の白内障です。症状は臼歯に重度付着した歯石から歯肉炎がおこり、さらに皮膚が壊死して穴が開いてしまっています。 身体検査、レントゲン検査、血液検査と異常がなかったので、処置を行うことになりました。次の動画が処置前の状態です。

この症例は殆どの歯の状態が悪く、残った歯は3本だけでした。次の動画が歯科処置翌日の朝ごはんを食べている動画です。歯の痛みが取れてむしろ食事がすすんでいるようです。この感想は、歯科処置をした飼主さんからもよく耳にする感想です。

 

歯根膿瘍と口腔内の腫瘤について

下の写真は歯根膿瘍にて抜歯が必要な症例の写真です。目の下が赤く炎症を起こしているのが解ります。ここは臼歯の歯根があり、歯根に膿が溜まったため、炎症を起こしています。つまり、この歯を抜いて消毒する必要があります。

IMGP1188

下の写真は、口腔内の腫瘤があるため、抜歯をしてから腫瘤を摘出しました。

IMGP2548

腫瘤を摘出した後の写真です。

IMGP2554

乳歯遺残による抜歯

乳歯遺残は、若齢小型の犬の乳歯、特に犬歯の乳歯が残る症例を多く見かけます。

多くは、永久歯が横から出てくることで乳歯が押出されて抜けることになりますが、
永久歯があるにも関わらず乳歯が横にあることでその間に食事の残渣等が詰まりやすくなります。

結果、永久歯の犬歯の周囲から歯周炎や歯肉炎などダメージが進行することになりますので、出来ることならば、乳歯遺残が存在するならば抜歯をお勧めします。

下の写真は犬歯の横に細い犬歯の乳歯が残っているのが解ります。

IMGP3487

次の写真は下顎の切歯が全て乳歯遺残となっていて、2列になっていることが解ります。割合は少ないですが、時折見られます。こうした場合にも避妊手術と一緒に乳歯を抜歯します。乳歯遺残があるのは、小型犬が主ですが柴犬などの中型犬でもごく希に認められます。

次が抜歯後の写真です。この症例は乳歯が8本残っており全て抜歯しました。