腫瘍は、細胞分化の過程が障害されて、制御できずに分裂増殖した状態です。腫瘍と一括りにしていますが、転移をしない良性腫瘍と血管やリンパ管を介して転移をする悪性腫瘍に大きく分けられます。
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発生場所
腫瘍は色々なところに発生します。皮膚などにできた腫瘍は触れたり、眼にみえるので解りやすいですね。他にも口腔内や喉の奥(咽頭や喉頭)、胸の中の臓器(胸腔)やお腹の中の臓器(腹腔)、肛門、骨など様々な臓器から発生が報告されています。
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原因
その原因は殆どが遺伝によるもので食べ物や生活環境などに関連して発生することはほとんどありません。
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診断名
腫瘍は細胞が自律的に増殖して形成されていますが、どのような細胞が増殖しているのか?病理検査をすることで解ることが多いです。つまり、リンパ球が増えればリンパ腫ですし、肥満細胞が増えれば肥満細胞腫、扁平上皮細胞が増えれば扁平上皮腫や扁平上皮癌といった具合に増殖した細胞の名称を使用して、さらに良性・悪性、あるいは発生場所を加味されて腫瘍の名前が決められます。 しかし、時折病理検査でも細胞がわからない時などもあり、特に細胞が未分化で悪性度の強い時にそのような傾向があります。 このことは、切除した組織を病理検査して診断する場合や腫瘍に針をさして細胞を採取して診断できることもあります。
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治療
診断がでたら、次に腫瘍の治療です。 選択肢として、
①外科による切除、②抗癌剤を使用した抗癌治療、③高度設備による放射線治療などがあり、④その組合せの治療などが行われています。
つまり、腫瘍の診断名により①外科切除が良いのか?あるいは②抗がん剤治療だけで良いのか?あるいは④組合せがよいのか?③放射線治療のみ有効なのか?などがはっきりしてくることが多いと思います。
また、抗がん剤治療は、診断名により使用する抗癌剤が異なることが知られています。
様々な抗癌剤があり、腫瘍とも相性があるのでより効果的な抗癌剤を選択することが大切だと思われます。そして、腫瘍によっては抗癌剤に効果を示さない種類の腫瘍も知られていて、全ての腫瘍に効果があるわけではありません。
マリー動物病院では①外科による切除 ②抗癌剤治療 と④その組合せによる治療をおこなっております。
腫瘍性疾患は定期健診でなるべく早期発見して、治療をすることが重要です。
早期診断して、早期治療することでペットにダメージを少なく、治療効果が得られることが多いからです。
◆全身体表リンパ節の腫大をしめし、食欲廃絶にて来院した16歳の小型犬②癌治療のみ
抗癌治療をしている様子。
治療初期には 諦めてしまいそうでしたが、現在では元気 に過ごしています。
◆跛行をしめし、来院した大型犬①外科切除 と ②抗癌治療
骨肉腫と診断され、手術にて断脚後に抗癌治療を行う。
その後、1年生活して天寿を全うしました。
◆消化器疾患にて来院した際に、たまたまリンパ腫と診断されたミニチュアダックスフンド②抗癌治療のみ
抗癌治療を終了して4年経ちますが、経過良好です。
治療経過の良い写真ばかり載せましたが、手術する前に既に肺に転移している症例、著しく内蔵機能が低下している症例、抗癌治療はしても著しく元気や食欲が消失する症例など色々あります。
そのような理由で手術や抗癌治療を選択しないことも数多くあります。
飼主とペットが共に笑顔でいられる時間を過ごせるような治療ができれば幸いです。
小さな変化に気付いたら、気づいた時点で診察を受けては如何でしょうか?