高齢猫の麻酔について

今回は高齢猫の麻酔についての話です。猫に限らず、高齢の動物は若い動物と比較して何が違うのか?一つ目は、何か基礎疾患をもっていることが多い事。二つ目は、各臓器の予備能力が低下している事ではないでしょうか? 予備能力とは循環機能や呼吸機能、肝臓や腎臓の代謝機能などが、年齢と共にその機能が減少して、若い個体に比較して変化に対応する能力が低下していることを意味しています。

麻酔をかける前には、事前に身体検査 血液検査 レントゲン検査 エコー検査などを行います。ただし、様々な理由でこれらの検査をできない症例もいます。これらの検査で確認された基礎疾患の治療をおこないます。あるいは、基礎疾患の重症度などにより麻酔を用いることができない症例もいるかも知れません。

様々な要因を考慮して獣医師は麻酔薬を選択することになります。また、体重当たりの麻酔量も少し減少するなどの工夫も必要かもしれません。一般的に老齢動物の麻酔薬の用量は減少して、麻酔からの回復時間は延長します。使用する麻酔薬には夫々良い面と悪い面がありますので、どの麻酔薬を用いるにしても、目的をもって使用するのが良いと思われます。

その他に老齢動物は循環血液量が減少しているので輸液を行います。また、体温低下が起こり易いため、保温マットを利用するなどの準備も必要です。

次の症例は19歳の避妊メスの猫です。体表に腫瘤ができ、その表面は脱毛と潰瘍を呈していました。猫はその部位を舐め続けるため少し出血して生活の質の低下につながるため手術を依頼しました。 基礎疾患は慢性腎不全で普段より内服薬を投薬していました。

手術は無事終了して、手術後に血液検査異常がないことを確認して終了となりました。この症例は体に触れられることを極端に嫌うため、術前にエコー検査などはできませんでしたが、無事に終了することができました。次の動画は手術後1週間して抜糸の時の状態です。飼主さんもご飯を変わりなく食べているとのことでしたので安心しました。