犬の胃切開手術

今日は、胃切開手術です。主訴は「帰宅後、嘔吐をして元気もない。」との事でした。異物を食べる癖はありますか?との質問も飼主さんは異物は食べないとのことでした。レントゲン撮影をしてみると、胃内にガスが軽度に貯留している他に、胃幽門部付近に丸い不透過像を認めました。

2日目のレントゲン検査では、さらに胃内にガスが重度に貯留していました。所謂、胃拡張の状態です。血液検査では異常は認められませんでした。エコー検査を追加して、胃内の貯留ガスを除去して静脈点滴を行いました。

3日目はさらに胃内ガスは貯留していました。やはり、不自然なため消化管造影検査をしてみると胃が180℃回転している胃捻転の状態になっていました。この状態になると流延を示し、とても苦しそうな表情をします。

この症例では、すぐに自然と胃捻転は戻りました。しかし、再発の危険性もあるため、飼主さんに了承を得て緊急開腹手術を行う運びになりました。

開腹すると、胃の出口(幽門部)にスーパーボールががっちり嵌っていました。スーパーボールを胃の中央に移動して胃切開を行おうと試みましたが、まったく動きませんので幽門部で切開することにしました。次の写真が摘出したスーパーボールです。

このスーパーボールの閉塞は他の異物と少しことなり、強烈な症状がでることが多いような気がします。胃捻転や痙攣など非常に苦しくて痛がるような症状を示すこともあります。これは、スーパーボールが消化管に隙間なく閉塞する状態、つまり完全閉塞するためと考えます。また、エコー検査では、他の異物と違い、スーパーボールは音響陰影を示さないことも知られています。

また、他にもプラスチックやトウモロコシの芯 栗 おもちゃ ゴム リードや縫い針 画鋲 靴下 マスク タオル 雑巾など色々なものを食べて来院した犬を経験しております。これら全てが胃切開の適応ではありませんが、様々なものを食べる可能性があり十分に注意する必要があります。

摘出終了後は、合併症がなければ他の異物摘出と同様に時間の経過とともに改善します。次の動画は手術2日目の状態です。

手術6日目に抜糸が終了して退院になりました。食事を徐々に増やしているため、お腹が空いている状態ですので、異物を食べないよう注意が必要です。