カテゴリー別アーカイブ: 腫瘍外科

電気メス機械を導入しました。

今回は電気メスの機械を導入した事をご報告します。当院は昨年まで電気メスを使用していませんでしたが、本年より電気メスを導入しました。電気メスは止血機能に優れた外科機器です。

昨年までは、出血すると外科用縫合糸で縫合して止血していましたが、電気メスの導入によりメス先で出血部位に接触することにより止血できます。特に次の症例の様に出血箇所が多い腫瘤の切除などでは手術時間の短縮が期待できます。他にも色々な機能があり便利です。

次は手術終了時の写真です。手術終了時では電気メスを使用しても使用しなくても見た目に変化はありません。抜糸までの日数にも変化はありません。

ただ単純に手術時間が短縮できることを目的に電気メスを導入しました。上の症例も16歳でしたのでなるべく出血なく、手術時間が短くなることをペットも飼主さんも私も望んでいることは確かでしょう。手術後から以前にも増して食欲がでたことをお聞きしたら、みんな嬉しくなってしまいますね。下の写真は抜糸時の写真です。

 

モルモットの体表腫瘤切除手術

今回は、モルモットの体表腫瘤切除手術の話です。モルモットも他のペットと同様に平均寿命が延びて腫瘍の発生率も増加しているものと思われます。体表にできた腫瘍は、体内に出来た腫瘍に比べて飼主さんが触れるので、その存在に気付きやすいと思います。

今回の症例も腫瘍の大きさはゴルフボール大になりその表面が潰瘍を呈していました。生活の質を考慮して、全身麻酔下にて切除することになりました。当院ではモルモットに全身麻酔はマスクにて行っていますので、今回の症例のように鼻や口周囲にある腫瘤は切除しにくい傾向にあります。

下の写真は手術終了時の写真です。まだ、モルモットさんは完全に覚醒しておらずぼーっとした状態です。

次の動画が手術終了2時間後の状態です。この時点では、すでに好きな野菜を食べていました。

次の動画が手術1週間後の状態です。手術創は綺麗に縫合されています。以前より元気が良いように見えました。この状態を確認して治療は終了しました。

犬の断指術

今回は、指の切断術です。この手術は、指の先がj感染症を起こすなどして骨髄炎に波及したり、あるいは重度の外傷の治療を目的に行われます。また、大型犬などでは、指に腫瘍が発生することが知られていて、この適応となります。

次の症例は凡そ10歳のミニチュアダックスフンドです。後肢の指の側面にできた腫瘍です。抗生物質を投薬していたが、どんどん大きくなってきた為、腫瘍切除を希望し来院されました。腫瘍の大きくなるスピードが速いため、直ぐに切除することになりました。次の写真が切除前の状態です。第3指の側面にできた腫瘍は第4指を外側に押し出しているのがわかります。

定法どおり、レントゲンにて胸部に転移像がないか?あるいは心臓肥大はないか?患部の指の骨に転移している像はないか?など一通り検査します。他にも血液検査などを行い、麻酔中や麻酔後に異常が起こる可能性は低いか?高いか?などを調べます。比較的異常がない事を確認して手術となります。次の写真が切除して抜糸後の写真です。第3指の基節骨以下から切除しています。

切除後は、足を持上げる素振りも見せませんでした。痛くないわけではありませんが、犬は体重の70%を前肢で支えていることもあり、後肢は前肢の断指術よりも影響は少ないのかもしれません。現在では毛も揃い、通常の生活をしています。

次の症例を見てみましょう。症例は、10歳メスのセッターです。主訴は、「1か月前に猫を追っかけた際に、指を切った後に化膿して治らない。」とのことでした。患部を診ると、著しく第四指が肥厚して化膿しているのが解ります。 M2620001

患部をレントゲン撮影してみると、基節骨の近位端から末節骨まで確認できず、さらに基節骨の近位端は骨髄炎を起していました。よって指の切断手術をすることになりました。ただし、大型犬のため腫瘍なども考慮して、種子骨や関節包もなるべく取除き、切除した組織を病理組織診断を依頼しました。著しく肥厚した指の切除は、肉球辺縁での縫合になり、皮膚に余裕はありませんでした。

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次が手術翌日の状態です。1日中殆ど足を挙上していました。犬は、体重の7割を前肢で支えて、その負重は主に第3指と第4指にかかることが知られています。。今回は、第4指の切除なので心配な面もありました。

しかし、経過を追うごとに徐々に負重し始めました。 次の動画が抜糸をした術後7日後の歩行状態です。殆ど左右の差がないくらいにしっかり歩行しているのが解ります。

指の腫瘍

今回の症例は14歳のビーグル犬です。4カ月前から指が徐々に大きくなっていることに気付いていましたが、食欲も元気もあることから様子を見ていたようです。来院時には、指はかなり腫大して隣の指も少し腫大しているような状態でした。血液検査では、著しい変化はありませんでしたが、触診で膝下リンパ節が腫大していました。

手術は膝下リンパ節を切除することと、腫瘍を切除することを目的に行いました。腫瘍の切除はかなり大きく切除したため、表皮がすべて覆うことはできませんでした。次の動画が術後10日目の状態です。皮膚の欠損部分もありますが、順調に表皮が覆われて順調です。

切除後は、定法通り切除した腫瘍とリンパ節を病理検査に提出して、しっかり切除できているのか?リンパ節に転移していないか?診断は何なのか?を調べます。様々な条件をもとに手術後も抗癌剤が必要な場合には継続して行うことも必要かもしれません。

 

猫の体表腫瘤切除手術

一般論

猫の体表腫瘤ですが、つまり猫の皮膚表面にできた腫瘍についてのお話です。様々な場所に様々な大きさの腫瘤を飼主さんは見つけられて来院されます。病理検査をすると炎症性病変であったり、良性腫瘍や過形成、あるいは悪性腫瘍の場合など様々です。

当院では基本的に腫瘤を確認すると、針で腫瘤を指して細胞を採取して顕微鏡で確認します。大まかに①様子をみてよいもの②病理検査に判断をゆだねるもの③すぐに切除した方がよいものに分かれます。それにより方針が異なってきます。

各症例

症例1

次の症例は「陰嚢部をよくなめている。」との主訴で来院されました。確認すると腫瘤は陰嚢に形成されて表面が赤く、脱毛して軽度に潰瘍を呈していました。内服薬で投薬しましたが、その大きさに変化がなかったため、針で腫瘤を指して細胞を採取して標本を作製しました。顕微鏡を確認すると「肥満細胞腫」の可能性が高いため③のすぐに切除した方がよいため、飼主さんとご相談したうえで切除する方針にきまりました。

切除した組織は、やはり病理組織検査に依頼することで、より詳細な情報を得ることができてその情報をもとに切除後の治療方針や予後などを説明することになります。次の写真は切除して2週間後の写真です。

定期に経過観察することになりました。抗がん剤治療などもありますが、選択肢の中から飼主さんが最も良いと考えた治療方針が最適と考えています。

症例2

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私個人の経験では、犬に比べてその発生率は低い様に思われますが、発生すると悪性傾向が強い印象があります。手術内容は、定法にしたがい、腫瘤周囲から切除する作業になります。 切除した腫瘤は、病理組織診断により良性なのか悪性なのか、しっかり切除できているのか?検査します。

症例は、15歳のオス猫です。初めて気付いたのは2年前で、最近さらに大きくなり、皮膚表面が自壊してきたとの主訴で来院されました。すでに発生部位などは解りませんが、生活の質を考慮して切除することになりました。下の動画の様に、腫瘤は腰から下に、非常に大きいのがわかります。

下の写真が切除した腫瘤です。大きさは20×10×10cmで重さが1.4キログラムもありました。M2100015

次の動画が、手術直後の状態です。年齢も高齢で、麻酔時間も長かったわりに状態が落着いていたので助かりました。食欲と元気も手術3日目より徐々に出るようになりました。

次の動画が、手術5日後の状態です。通常、手術創は1本の線になりますが、今回の様に大きな腫瘤の場合には、手術創が少し複雑になります。

次の動画が約2か月後の動画です。一般健康状態や外貌からも全く問題ありませんが、触診をすると非常に小さいですが、悪性腫瘍の再発と思われる組織が確認されました。

ウサギの乳腺腫瘍摘出手術

飼主の皆様、こんにちは。今日はウサギの乳腺腫瘍です。これは、乳を分泌する乳腺細胞が腫瘍化したものです。やはり、高齢のメスのウサギに起こる疾患です。乳腺腫瘍が大きくなっていれば飼主さんが気付き、小さければ獣医が気付くのが一般的ではないでしょうか?

今回の症例も歯科処置の際に身体検査をすることで、小さい乳腺腫瘍に気付くことができました。もちろん、一般健康状態に異常はありませんでしたが、早めに切除することになりました。症例は5歳のメスです。写真は切除前の乳腺組織です。他の乳腺に比較して大きく盛り上がっているのが解ります。

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次が乳腺腫瘍を切除した後の写真です。

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手術終了1時間後の動画です。状態が落着いていたので当日帰宅することになりました。

犬の精巣腫瘍摘出手術

飼主のみなさま、こんにちは。今回は精巣腫瘍摘出です。一般的には去勢手術ですが、正常な精巣ではありません。つまり、取除いた精巣を病理組織診断して腫瘍なのか?炎症なのか?他に変化が起きているのか?はっきりします。今回は結果が確認されているので精巣腫瘍とさせて頂いております。

今回の症例は、11歳、雄の柴犬です。フィラリア予防シーズンということで来院した時に、身体検査を同時に行うわけですが、この際に左右の精巣の大きさが異なることに気付きました。総合的に精巣腫瘍の可能性が高いため手術することになりました。写真は、精巣を摘出する前の陰嚢の写真です。精巣は左右1個づつありますが、画面右側の精巣が大きくなっているのが解ります。

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次の写真が、摘出した精巣です。画面右側の精巣の一部(棒で示している部位)が、暗赤色を呈して血管構造が不明瞭になっているのがわかります。どのような変化が起こっているのか?病理組織検査をすることになります。犬の精巣腫瘍は主にセルトリ細胞腫 間質細胞腫(ライディッヒ)精上皮腫の3種類の腫瘍が殆どです。その発生率は高齢になるにつれ高くなることが知られています。診断時の平均年齢は9-11歳ですが、停留精巣(陰睾)の腫瘍では、より若い傾向にあることが知られています。

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11歳でしたが、意外と手術後は元気があり、次の動画は術後5時間後の状態です。念のため、翌日退院することになりました。化膿止めを投薬して終了となりました。

今回、改めて身体検査の重要性を再認識しました。フィラリアや混合ワクチン接種などは、特に症状がなければ、何気ない理由で動物病院に行きますが、そこで普段の何気ない日頃の疑問を質問したり、身体検査をすることで早めに病気に気付き治療を開始できる機会になっています。本当に基本の身体検査が重要です。

 

 

次の症例は、9歳のコーギーの雄です。主訴は、血尿と睾丸を痛がり、舐めているという主訴でした。身体検査にて、睾丸を触診すると精巣(睾丸)の大きさが異なり、その表面が凸凹になっているのが解りました。少し触れるだけで、やはり異様に痛みがあるようでした。総合的に、精巣腫瘍の可能性が高いために両側共に精巣を切除することになりました。

手術前には胸部のレントゲン写真と血液検査、尿検査を行いました。

下の写真は、手術前の写真です。表層の一部が傷がついているのが解ります。この部分を自分で気にして噛んでしまったと思われます。この傷から出血して尿と混ざり、血尿に見えたと推察されました。

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次の写真が、切除した精巣です。表面が全体的に凸凹となっているのが解ります。M2190013

次が手術後の写真です。特別なことはありませんが、抜糸の必要はありません。M2190007

次の動画は手術終了後の動画です。非常に元気が良いですね。

しかし、この症例は、手術前の血液検査では異常のなかった腎臓の数値が、手術後の血液検査では正常値から逸脱して上昇していました。つまり、麻酔により慢性腎不全が顕在化した状態となりました。その後、静脈点滴を行い症状と血液検査の数値は落着き、翌日に退院されました。

今回も手術前の検査が、非常に重要であると再認識させられました。

次の症例は数年前から精巣腫瘍であることは認識していましたが、年齢や他の疾患などもあり手術に踏み切れませんでした。ただ調子が良く、腫瘍の巨大化のため、歩行がしずらくなったため手術を希望するに至りました。次の写真が手術前の状態です。確かに重そうで歩行しにくそうですね。

2~3年間の間に優に5倍の大きさになっており、その表面は触診にて凹凸が触れます。さらに水腫を伴っていたので大きさや重さが増しているのが推察されました。実際に切除した精巣です。右の正常な大きさの精巣に比べてかなり大きく、表面が凸凹しているのがわかりますね。

定法通り、血液検査などの術前検査を行い手術することになりました。

 

犬の前肢断脚手術

犬の断脚手術は足に悪性腫瘍が発生した際に原発巣を除去することで転移を予防する、あるいは生活の質を高める目的で行います。

犬では、大型犬に発生する骨肉腫を切除する目的で断脚手術することが知られています。下の写真は、右前肢橈骨に発生した骨肉腫のために断脚したラブラドルレトリバーです。

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手術後に抗癌治療を行い、手術1年後まで生活することができました。