犬の子宮蓄膿症

犬の子宮蓄膿症は、文字通り子宮に膿が溜る生殖器疾患です。症状は、食欲廃絶、多飲、発熱、外陰部からの排膿などです。この様な症状を認めた場合はご来院下さい。手術前の検査では、身体検査は勿論ですが、血液検査やレントゲン検査などを行い、エコー検査では特徴的な像を認めます。

1.手術前には抗生物質の投与や静脈点滴などをして脱水などを改善します。

2.手術では、膿の溜まった子宮と卵巣を丁寧に取外します。

3.退院は、手術後の状態にもよりますが、3~5日後ぐらいになります。退院時には、随分としっかり起立可能な状態となっています。

4.抜糸は手術後7~10日後におこないます。

 

次の症例は、ラブラドルレトリバー11歳です。主訴は、起立が出来なくなったとのことでした。問診では骨・神経疾患を疑いましたが、身体検査・血液検査・エコー検査をしてみると子宮蓄膿症と急性腎不全であることが解りました。 来院時の段階では腎臓で殆ど尿を生成していない状態であるようです。子宮蓄膿症の症例では、免疫複合体が糸球体に沈着することや細菌のエンドトキシンの干渉で腎臓機能の低下を認めることが時折あります。 治療は静脈点滴にて急性腎不全を治療した翌々日に子宮蓄膿症の手術を行いました。腎機能の改善に伴い排尿量が徐々に多くなりました。下の動画は、点滴をしている時の状態です。全く元気がないのが解ります。

次の動画が、手術直後の状態です。腎不全の再発もなく、無事に手術を乗切ってくれました。ぐったりしてますね。下の写真が、摘出した卵巣と子宮です。左側の子宮が太くなっていて、この中には膿が溜まっています。

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次の動画が手術2日後の状態です。まだ、食欲はありませんでしたが、目が覚めている時間が増えて歩行や起立時間も少しづつ長くなりました。この症例も手術5日後には退院することができました。

余談ですが、回復した段階ですでに子宮が破けて、お腹に膿汁が貯留している症例の予後は良くありません。以前、食欲の低下などの症状がないため、子宮蓄膿症を数カ月経過を見ていた症例がいました。いざ、食欲が無くなったため手術の依頼があり開腹してみると子宮の一部が破けそうになっていました。周囲の脂肪組織がその分部に張付き、膿の排出を防いでいました。 また、開腹した段階でお腹に滲出液が貯留している症例もいました。その場合は、閉腹する前に良く洗浄して、抗生物質を投与することで乗り切ることも出来るようです。非常に浸出液も膿も似ているので注意が必要です。 以上より、気付いた時点で、すぐに検査をして手術をすることが大切であると感じました。