カテゴリー別アーカイブ: 口腔外科・抜歯

舌の縫合

舌の縫合

動物の舌なんて切れることがあるのだろうか?切れるケースなんてあるのだろうか?と一瞬考えてしまいます。しかし、色々なアクシデントで切れるしまう事があるようです。教科書などでもあまり取り上げていないように感じます。今回はたまたま、舌が切れてしまった症例がいましたのレポートします。

まあ、理由はさておき、次の写真が麻酔時の写真です。舌がかろうじて繋がっているのは、横断面の凡そ1/8位でしょうか?口の周囲は血液が付着していましたが、麻酔時には明瞭な出血は認められませんでした。

定法通り、麻酔をかけた後に洗浄、消毒しました。次の写真が終了した際の写真です。

舌先の繋がっている部分が少ないので、この縫合で血流が舌の末端まで届くのだろうか?と些か不安でした。念のため舌の裏側も縫合しました。それが次の写真です。

術後、1週間で舌の状態を確認しましたが、普通に舌はくっ付いて、元の舌先になっていました。その時はすでに縫合糸の半分がなくっていました。改めて舌の血流の良さに驚きました。次の動画が凡そ術後3週間の状態です。全く問題なく生活することが出来ているようです。

高齢猫の麻酔について

若齢動物と老齢動物の違い

今回は高齢猫の麻酔についての話です。猫に限らず、高齢の動物は若い動物と比較して何が違うのか?一つ目は、何か基礎疾患をもっていることが多い事。二つ目は、各臓器の予備能力が低下している事ではないでしょうか? 予備能力とは循環機能や呼吸機能、肝臓や腎臓の代謝機能などが、年齢と共にその機能が減少して、若い個体に比較して変化に対応する能力が低下していることを意味しています。

手術前の検査

麻酔をかける前には、事前に身体検査 血液検査 レントゲン検査 エコー検査などを行います。ただし、様々な理由でこれらの検査をできない症例もいます。これらの検査で確認された基礎疾患の治療をおこないます。あるいは、基礎疾患の重症度などにより麻酔を用いることができない症例もいるかも知れません。

麻酔薬の選択

様々な要因を考慮して獣医師は麻酔薬を選択することになります。また、体重当たりの麻酔量も少し減少するなどの工夫も必要かもしれません。一般的に老齢動物の麻酔薬の用量は減少して、麻酔からの回復時間は延長します。使用する麻酔薬には夫々良い面と悪い面がありますので、どの麻酔薬を用いるにしても、目的をもって使用するのが良いと思われます。

手術中の注意点

その他に老齢動物は循環血液量が減少しているので輸液を行います。また、体温低下が起こり易いため、保温マットを利用するなどの準備も必要です。

症例1

次の症例は19歳の避妊メスの猫です。体表に腫瘤ができ、その表面は脱毛と潰瘍を呈していました。猫はその部位を舐め続けるため少し出血して生活の質の低下につながるため手術を依頼しました。 基礎疾患は慢性腎不全で普段より内服薬を投薬していました。

手術は無事終了して、手術後に血液検査異常がないことを確認して終了となりました。この症例は体に触れられることを極端に嫌うため、術前にエコー検査などはできませんでしたが、無事に終了することができました。次の動画は手術後1週間して抜糸の時の状態です。飼主さんもご飯を変わりなく食べているとのことでしたので安心しました。

症例2

先日、20歳の猫の歯科処置の依頼がありました。いつも通り、身体検査、血液検査、レントゲン検査を行いました。特に手術前の各種検査において著しい変化を認めませんでしたので、手術前から静脈点滴を開始した後に歯科処置をすることになりました。歯科処置中は殆ど注射麻酔で維持できました。一時的な疼痛を示すことがありましたが、殆ど吸入麻酔を使用することなく終えることができました。

歯科処置後の麻酔からの覚醒もスムーズでした。処置を終えた感想は、年齢の割に非常に麻酔からの覚醒がスムーズであった点です。年齢という物差しで麻酔の是非を判断することも大切ですが、この症例の様に手術前の各種検査で麻酔の適応・不適応を決めるのも大変重要な要素であることを改めて見直す機会となりました。

手術後の血液検査にても著しい変化はありませんでした。抜歯を終えて、少しでも通常の生活が飼主さんと猫さん共に快適になることを願ってやみません。

高齢動物の麻酔について

一般的な外科処置をするときにどうしても切り離せないのが全身麻酔が心配の種になることが多いと思われます。当院では、全身麻酔をする前には基本的に血液検査と胸部レントゲン検査を行っています。尿検査やエコー検査なども症例によっては追加することもあります。 その一方でペットが暴れて検査できない場合や費用的な面で検査をしないで麻酔をせざるおえないケースもあることも事実です。

今回は16歳の老犬の歯科処置をする機会を頂いたのでご紹介したいと思います。主訴は左下眼瞼の排膿です。膿は臼歯の歯根膿瘍が原因と思われます。身体検査では心雑音と腰が曲がり、首が少し上げにくいなどの症状を認めました。 皆さんがこの子の飼主さんでしたら全身麻酔をかけて歯科処置をしますか? 少し気が引けてしまいそうですよね。私も患者の立場なら同じです。

しかし、このまま抗生物質を投薬し続けて、この状態で終えるのも気が滅入ります。なので、血液検査と胸部レントゲン検査をして重大な問題がなければ、歯科処置をすることに決まりました。麻酔をする飼主さん全員に説明することですが、それでも絶対の安全を保障するものではないと説明を加えさせて頂きました。次の写真が歯科処置前の写真です。

次の写真も歯科処置前の写真です。歯石が歯を覆っていますね。

次が歯科処置中の写真です。上顎の犬歯と臼歯は抜歯してある状態です。

歯科処置の翌日には次の動画のようにしっかり食事をしていますね。

次の写真が歯科処置、1週間後の写真です。目元は綺麗になって、歯科処置をして大変よかったと思いました。高齢動物への全身麻酔はリスクもありますが、心配し過ぎて処置しない選択肢と同じくらい安全性を確認したうえで行う処置も大切だと考えています。

猫の抜歯とスケーリング

猫の抜歯とスケーリングは、基本的には歯が痛くて食べれない、あるいは歯根膿瘍の時に行なうのが殆どです。処置は、最初にスケーリング処置を行い、歯そのものを評価します。痛みの原因となっている歯や近い将来に抜歯や痛みの原因となるような歯は抜歯をします。歯科処置は、予約していただいた日の午前中に来院していただき、当日あるいは翌日に帰宅します。

この症例は6歳の雄猫で、口腔内からの出血という主訴で来院されました。強い痛みはないのですが、口腔内を観察すると下の写真の様に、歯肉が浮き上がり歯肉が暗赤色に変色して強い歯周炎が残存している臼歯周囲に認められました。M1820004

当院では、歯科処置は全身麻酔下にておこないます。この猫は大人しかったので、血液検査と胸部レントゲン検査を行った後に全身麻酔をかけて歯科処置を行いました。口腔全体を確認した後に、超音波スケーラーにて歯に付着した汚れを取り除きます。この症例では、切歯と犬歯は非常に状態が良いにもかかわらず、臼歯の状態は歯根がすぐに確認できる歯、動揺している歯、既に歯が割れて一部が残っている歯など悪いものばかりでした。よって抜歯することになりました。次の写真が抜歯後です。M1830004

次の動画が歯科処置2時間後の状態です。麻酔覚醒直後は、少し左右に動揺していましたが、暫くすると動画の様に普通ななっています。落着いていましたので、当日退院しました。

次に猫の歯肉口内炎による抜歯治療のお話です。猫の歯肉口内炎の原因は不明であります。ただし、ウイルスや細菌感染の関与や過剰な免疫反応などが関与している可能性があり、色々な要素により構成されて発症しています。このため、治療法が確立されておらず、内科治療では治りにくい病気です。

症状として、疼痛、流延、嚥下困難、口臭、食欲低下、被毛粗剛、体重減少などを示します。内科治療では抗菌薬やステロイド、インターフェロン、鎮痛剤や免疫抑制剤などが行われています。一方、外科治療では部分的抜歯、全臼歯抜歯、全顎抜歯などが行われています。

今回の症例は、尾側粘膜には炎症は殆ど起こしていませんでしたので、比較的良好な予後を示すタイプでした。内科治療で抗菌剤を投与している時は食欲もあり良いのですが、休薬して暫くすると流延や食欲低下、痛み、体重低下を繰返していました。そのため、前臼歯抜歯を行いました。次の写真がその際に抜歯した歯です。

その後は、抗菌薬を投薬しなくても症状を示すことがなくなりました。体重もほぼ2倍に増加しました。同じネコとは思えないですね。

 

超音波スケーリングと抜歯

歯科処置について

超音波スケーリングは、抜歯処置が必要な全ての犬に行ないます。これにより、歯の表面を覆っている歯石を除去できるからです。また、歯と歯肉の間に存在するプラークも丁寧に除去することができます。一方、抜歯は、歯の根元が化膿してしまう歯根膿瘍あるいは口腔内の腫瘤を切除する時に行ないます。また、スケーリング後に歯を観察して、近いうちに直に抜歯が必要になる場合にも行います。

高齢動物の歯科処置について

また最近ではペットの高齢化が進み、高齢犬における歯科処置も増えています。高齢犬に全身麻酔をかけて大丈夫なの?という質問をよく受けます。安全な全身麻酔はありませんが、検査をして安全に行えるように努めています。次にご紹介する症例は15歳のミニチュアダックスフントです。少し痩せていて、両眼は老齢性の白内障です。症状は臼歯に重度付着した歯石から歯肉炎がおこり、さらに皮膚が壊死して穴が開いてしまっています。 身体検査、レントゲン検査、血液検査と異常がなかったので、処置を行うことになりました。次の動画が処置前の状態です。

この症例は殆どの歯の状態が悪く、残った歯は3本だけでした。次の動画が歯科処置翌日の朝ごはんを食べている動画です。歯の痛みが取れてむしろ食事がすすんでいるようです。この感想は、歯科処置をした飼主さんからもよく耳にする感想です。

 

歯根膿瘍と口腔内の腫瘤について

下の写真は歯根膿瘍にて抜歯が必要な症例の写真です。目の下が赤く炎症を起こしているのが解ります。ここは臼歯の歯根があり、歯根に膿が溜まったため、炎症を起こしています。つまり、この歯を抜いて消毒する必要があります。

IMGP1188

下の写真は、口腔内の腫瘤があるため、抜歯をしてから腫瘤を摘出しました。

IMGP2548

腫瘤を摘出した後の写真です。

IMGP2554

乳歯遺残による抜歯

乳歯遺残は、若齢小型の犬の乳歯、特に犬歯の乳歯が残る症例を多く見かけます。

多くは、永久歯が横から出てくることで乳歯が押出されて抜けることになりますが、
永久歯があるにも関わらず乳歯が横にあることでその間に食事の残渣等が詰まりやすくなります。

結果、永久歯の犬歯の周囲から歯周炎や歯肉炎などダメージが進行することになりますので、出来ることならば、乳歯遺残が存在するならば抜歯をお勧めします。

下の写真は犬歯の横に細い犬歯の乳歯が残っているのが解ります。

IMGP3487

次の写真は下顎の切歯が全て乳歯遺残となっていて、2列になっていることが解ります。割合は少ないですが、時折見られます。こうした場合にも避妊手術と一緒に乳歯を抜歯します。乳歯遺残があるのは、小型犬が主ですが柴犬などの中型犬でもごく希に認められます。

次が抜歯後の写真です。この症例は乳歯が8本残っており全て抜歯しました。