作成者別アーカイブ: 谷村院長

ウサギの膀胱結石摘出手術

こんにちは、今回はウサギの膀胱結石です。ウサギの尿の中には、カルシウム系結晶が正常でも存在しており、スムーズに排尿されています。しかし、結晶が結石へと大きくなり排出されない場合には血尿や頻尿、排尿姿勢の持続などの症状が現れ問題となります。

今回の症例は、3歳のメスのウサギです。主訴は、「血尿が止まらない。」とのことでした。確かに、排尿の意思とは無関係に血尿が垂れています。レントゲン写真で膀胱内に結石を認めました。

ここまで結石が大きくなると自然排出される困難で、症状が持続していることから開腹して膀胱結石を摘出することになりました。手術前の血液検査を行い、静脈点滴をして手術になりました。下の写真が実際の結石です。

手術はスムーズに終了したのですが、手術後の血液検査で腎臓の機能が低下していることが解り、暫く点滴を続けました。翌日には腎臓の機能も戻り、次の動画の様に食事をとるようになりました。

今後は、食事面などを含め改善と注意が必要でしょう。

犬の肛門嚢摘出手術

折角なので、犬の肛門嚢摘出手術についてもお話ししておきます。犬の肛門嚢摘出手術の適応は、猫と同じように肛門嚢炎や肛門嚢破裂を繰返す犬や動物病院やトリミング施設に肛門嚢から分泌物を人為的に排出させている犬などです。

肛門嚢を排出させる手間や時間などを考慮すると、摘出すれば肛門嚢はなくなり分泌物の悪臭やお尻を擦り付けるなどの行動も無くなります。

手術の内容や方法は猫と全く同じです。下の写真は、手術終了時の写真です。一度是非ご検討をしてみては如何でしょうか?

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猫の肛門嚢摘出手術

今回は猫の肛門嚢摘出手術です。飼猫のおしりの横が化膿して破けた経験をお持ちの飼主さんも多いのではないでしょうか?肛門嚢は分泌腺細胞に内張りされ、分泌物を排便とともに排出します。

しかし、飼主さんが気づかない内に閉塞して分泌物が溜まり、炎症などもおきて肛門嚢が破裂してしまうことがあるのです。 この様に肛門嚢破裂を繰返す猫さんは、肛門嚢摘出手術の適応になります。 肛門嚢がなければ分泌物も溜まらないので、肛門嚢の病気が無くなります。もちろん、臭い分泌物も排出されなくなります。

手術は事前に予約・診察して頂き、当日は絶食して来院して頂きます。全身麻酔を施し、肛門周囲の被毛を剃毛します。下の写真は手術前の写真です。m2840001

次の写真が摘出した肛門嚢です。改めて見ると意外に大きいような感じもしますね?m2840015

次の写真が手術終了後の写真です。m2840011

1週間は抗生物質を投薬して頂き、エリザベスカラーを装着して頂きます。抜糸は特になく手術創を確認して終了になります。肛門嚢破裂を起こした経験のあるネコさんの飼主さんは、是非一度ご検討されては如何でしょうか?

耳血腫の手術

今回は、耳血腫のお話しです。文字通り耳の中に血が溜まってしまう病気です。耳の中の血管が破れてしまうために血が溜まった状態で、耳を掻くなどの物理的衝撃により起こることが知られています。他にも外耳炎、免疫や過敏症などが関連しています。下の写真は、耳血腫を患った耳で,出血により膨らんでいます。m2770004

次の写真は同部から針にて吸引した血液です。20ccくらいあります。m2770012

耳血腫の手術のメリットは、術後から血が溜まらないので煩わしさから早期に解放されることです。当院では、1週間後に抜糸をして2週間後にはエリザベスカラーを外します。来院回数が少なくて済むこと、フィブリンや血餅なども取除くため、比較的耳の厚みが薄いことも長所です。 デメリットは、全身麻酔を必要とすること、起立していた耳が倒れてしまうことがあることです。 次の動画が手術翌日の退院時の様子です。

次の写真が手術1週間後の抜糸の際の写真です。耳の厚さが薄いのが解ります。さらに、その時の動画を載せます。患側の耳は薄く、快適に過ごしていましたが、飼主さん的には立派な起立していた耳が倒れてしまったことを少し残念がっていました。しかし、これで治療は終了になります。

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犬の断指術

今回は、指の切断術です。この手術は、指の先がj感染症を起こすなどして骨髄炎に波及したり、あるいは重度の外傷の治療を目的に行われます。また、大型犬などでは、指に腫瘍が発生することが知られていて、この適応となります。しかし、実際の臨床の現場では小型犬でも指先に腫瘍が多く発生してる感も否めません。次の症例はビションフリーゼで左前脚の指の末節付近に腫瘍ができました。その為、外科手術を行いました。次の動画は手術翌日の状態です。跛行を呈することなく、元気にしているのは嬉しい事ですね。

次の症例は凡そ10歳のミニチュアダックスフンドです。後肢の指の側面にできた腫瘍です。抗生物質を投薬していたが、どんどん大きくなってきた為、腫瘍切除を希望し来院されました。腫瘍の大きくなるスピードが速いため、直ぐに切除することになりました。次の写真が切除前の状態です。第3指の側面にできた腫瘍は第4指を外側に押し出しているのがわかります。

定法どおり、レントゲンにて胸部に転移像がないか?あるいは心臓肥大はないか?患部の指の骨に転移している像はないか?など一通り検査します。他にも血液検査などを行い、麻酔中や麻酔後に異常が起こる可能性は低いか?高いか?などを調べます。比較的異常がない事を確認して手術となります。次の写真が切除して抜糸後の写真です。第3指の基節骨以下から切除しています。

切除後は、足を持上げる素振りも見せませんでした。痛くないわけではありませんが、犬は体重の70%を前肢で支えていることもあり、後肢は前肢の断指術よりも影響は少ないのかもしれません。現在では毛も揃い、通常の生活をしています。

次の症例を見てみましょう。症例は、10歳メスのセッターです。主訴は、「1か月前に猫を追っかけた際に、指を切った後に化膿して治らない。」とのことでした。患部を診ると、著しく第四指が肥厚して化膿しているのが解ります。 M2620001

患部をレントゲン撮影してみると、基節骨の近位端から末節骨まで確認できず、さらに基節骨の近位端は骨髄炎を起していました。よって指の切断手術をすることになりました。ただし、大型犬のため腫瘍なども考慮して、種子骨や関節包もなるべく取除き、切除した組織を病理組織診断を依頼しました。著しく肥厚した指の切除は、肉球辺縁での縫合になり、皮膚に余裕はありませんでした。

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次が手術翌日の状態です。1日中殆ど足を挙上していました。犬は、体重の7割を前肢で支えて、その負重は主に第3指と第4指にかかることが知られています。。今回は、第4指の切除なので心配な面もありました。

しかし、経過を追うごとに徐々に負重し始めました。 次の動画が抜糸をした術後7日後の歩行状態です。殆ど左右の差がないくらいにしっかり歩行しているのが解ります。

指の腫瘍

今回の症例は14歳のビーグル犬です。4カ月前から指が徐々に大きくなっていることに気付いていましたが、食欲も元気もあることから様子を見ていたようです。来院時には、指はかなり腫大して隣の指も少し腫大しているような状態でした。血液検査では、著しい変化はありませんでしたが、触診で膝下リンパ節が腫大していました。

手術は膝下リンパ節を切除することと、腫瘍を切除することを目的に行いました。腫瘍の切除はかなり大きく切除したため、表皮がすべて覆うことはできませんでした。次の動画が術後10日目の状態です。皮膚の欠損部分もありますが、順調に表皮が覆われて順調です。

切除後は、定法通り切除した腫瘍とリンパ節を病理検査に提出して、しっかり切除できているのか?リンパ節に転移していないか?診断は何なのか?を調べます。様々な条件をもとに手術後も抗癌剤が必要な場合には継続して行うことも必要かもしれません。

 

皮膚縫合

今回は、皮膚縫合です。えっ!それだけ?と思われる飼主さんも多くいるのではないでしょうか?でも、時折来院されます。その殆どが、「毛玉を切っていたら誤って皮膚まで・・切ってしまった。」という理由ですが、稀に車のタイヤに毛を巻き込まれて皮膚が契れてしまったケースもあります。治療は、傷が塞がるのを待つ内科的選択肢と外科的に縫合する選択肢に分かれます。

ここでは、外科的に皮膚縫合する場合を取り上げます。このメリットは皮膚縫合して1週間後ぐらいには傷が塞がることです。デメリットは、全身麻酔のリスクがあること、費用がかかることではないでしょうか?  また、皮膚縫合をする条件として、受傷して時間が経過していないことや明らかな感染がないことなどが挙げられます。

複雑な裂傷

最初に、車のタイヤに皮膚を巻き込まれて皮膚が契れてしまった症例です。この場合、出血もひどく外傷領域も大きく、皮膚の切れ方も複雑です。しかし、このような場合にこそ外科的な縫合の必要性を感じます。このような交通事故の場合には、下の写真の様に皮膚が不安定でより癒合し難いためです。

しかし、これを縫合すると下のような写真になります。剃毛してよく観察すると、手根関節から爪の根元まで裂けているのが解ります。また、写真では解りませんが、指の間も裂けていました。

次がおよそ10日後の状態です。最初の状態です。一部は完全に癒合していませんが、状態としては申し分ない状態と判断しています。

単純な裂傷

では、実際の症例を見てみましょう。この症例も毛玉をカットしていたら、皮膚を切ってしまいました。恐らく被毛を持上げてカットしているので、ちょっと切っても、下の動画の様に大きな傷になってしまいます。

この症例は受傷して1時間くらいで来院しましたが、充分に消毒した後に皮膚を縫合しました。次の動画が1週間した抜糸した後の状態です。すっかり傷は閉鎖しているのがわかります。エリザベスカラーも外すことができました。

猫の股関節脱臼の手術

今回は、猫の股関節脱臼の手術です。 猫で股関節脱臼のみを発症した症例は個人的には少ないと思います。症例は、アメリカン・カールです。普段は、室内飼育ですが、「どうやら外へ逃出してしまい帰宅後から右後肢を引きずる。」という主訴です。身体検査後に、骨盤をレントゲン撮影しました。下の写真で右の股関節(向かって左)が脱臼しているのが解ります。これ以外の異常は認められませんでした。

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次が手術後のレントゲン写真です。手術は、股関節から大腿骨頭が外れないようする作業です。そのため骨盤内には金属が入っています。この手術方法は犬の股関節脱臼の手術と同じです。犬の股関節脱臼もご参照ください。

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本当は入院して安静にしているのが理想ですが、この症例は、気が強く全く触れることが出来なかったので、すぐに退院になりました。ただし、退院してもケージで過ごして頂くのは変わりません。 次の動画は抜糸をした時の状態です。手術創の大きさなどが参考になれば幸いです。

猫の横隔膜ヘルニアの手術

猫の横隔膜ヘルニアは、交通事故など突発的にお腹に圧力がかかり、胸腔と腹腔を分ける横隔膜が破けてしまう疾患です。このため、本来お腹にある肝臓や胃、小腸などが胸腔に移動してしまい、肺が充分に膨らまない状態になります。次の動画は、手術前の状態です。呼吸の回数が早く、お腹だけが動ているように見えます。

次の写真は、この症例にバリウムを投与して30分後に撮影した胸部レントゲン像です。横隔膜ヘルニアであることを確認しました。胸腔に胃や小腸の大部分が入っているので、大きな穴が開いてることが想像できます。M2470005

飼主さんは、「猫がやっとのこと帰ってきて、ずっと寝ている。随分と痩せてしまった。」と言って来院されました。これは、消化管の殆どが胸腔に移動しまったためにお腹がぺちゃんこになり、痩せて見えたのでしょう。 手術は、胸に移動してしまった消化管などの臓器を腹腔に戻した後、破れた横隔膜を縫い合わせる作業となります。結果、胸と腹が分けられます。次の写真が、手術後の胸部レントゲンです。胸腔内には抜気と排液のためのカテーテルが入っています。

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実際、手術ではT字状に横隔膜が破れていて、胸腔に胃・脾臓・小腸・肝臓が入り込んでいました。それら臓器で圧迫されていた左側の肺は、小さいまま退縮して拡張しませんでしたが、下の動画の様に手術3日目には呼吸も楽になり、排液と抜気も無くなりました。胸も軽くなったので上体を起こしていますね。

手術6日後の状態です。胸のカテーテルが取れて、胸郭が広がり安定した呼吸をしているのがわかります。

手術7日目の状態です。抜糸してエリザベスカラーも取れて、普通の猫と変わりませんね。

ウサギの去勢手術

ウサギの去勢手術も、左右の精巣を除去する作業です。オスの精巣は生後10~12週齢で陰嚢に下降することが知られていますが、鼠径輪が閉鎖しないため精巣がお腹中に移動してしまうことがあります。次の写真は手術前の状態です、両側の精巣がはっきりしているのが解ります。M2310007

次の写真が去勢終了後の写真です。エリザベスカラーの着用や抜糸の必要はありませんが、3日間化膿止めの内服をお願いしています。M2310013

 

 

猫の体表腫瘤切除手術

一般論

猫の体表腫瘤ですが、つまり猫の皮膚表面にできた腫瘍についてのお話です。様々な場所に様々な大きさの腫瘤を飼主さんは見つけられて来院されます。病理検査をすると炎症性病変であったり、良性腫瘍や過形成、あるいは悪性腫瘍の場合など様々です。

当院では基本的に腫瘤を確認すると、針で腫瘤を指して細胞を採取して顕微鏡で確認します。大まかに①様子をみてよいもの②病理検査に判断をゆだねるもの③すぐに切除した方がよいものに分かれます。それにより方針が異なってきます。

各症例

症例1

次の症例は「陰嚢部をよくなめている。」との主訴で来院されました。確認すると腫瘤は陰嚢に形成されて表面が赤く、脱毛して軽度に潰瘍を呈していました。内服薬で投薬しましたが、その大きさに変化がなかったため、針で腫瘤を指して細胞を採取して標本を作製しました。顕微鏡を確認すると「肥満細胞腫」の可能性が高いため③のすぐに切除した方がよいため、飼主さんとご相談したうえで切除する方針にきまりました。

切除した組織は、やはり病理組織検査に依頼することで、より詳細な情報を得ることができてその情報をもとに切除後の治療方針や予後などを説明することになります。次の写真は切除して2週間後の写真です。

定期に経過観察することになりました。抗がん剤治療などもありますが、選択肢の中から飼主さんが最も良いと考えた治療方針が最適と考えています。

症例2

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私個人の経験では、犬に比べてその発生率は低い様に思われますが、発生すると悪性傾向が強い印象があります。手術内容は、定法にしたがい、腫瘤周囲から切除する作業になります。 切除した腫瘤は、病理組織診断により良性なのか悪性なのか、しっかり切除できているのか?検査します。

症例は、15歳のオス猫です。初めて気付いたのは2年前で、最近さらに大きくなり、皮膚表面が自壊してきたとの主訴で来院されました。すでに発生部位などは解りませんが、生活の質を考慮して切除することになりました。下の動画の様に、腫瘤は腰から下に、非常に大きいのがわかります。

下の写真が切除した腫瘤です。大きさは20×10×10cmで重さが1.4キログラムもありました。M2100015

次の動画が、手術直後の状態です。年齢も高齢で、麻酔時間も長かったわりに状態が落着いていたので助かりました。食欲と元気も手術3日目より徐々に出るようになりました。

次の動画が、手術5日後の状態です。通常、手術創は1本の線になりますが、今回の様に大きな腫瘤の場合には、手術創が少し複雑になります。

次の動画が約2か月後の動画です。一般健康状態や外貌からも全く問題ありませんが、触診をすると非常に小さいですが、悪性腫瘍の再発と思われる組織が確認されました。