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猫の鎖肛について

鎖肛について

今回のテーマは「鎖肛」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれません。肛門と直腸の連続性を発生過程の中で失った先天的疾患です。しかし、この病気を持つ子は発育過程の中で死に至るため、その発生率は良く解っていません。 鎖肛には肛門膜と直腸の位置関係によりⅠ~Ⅲ型に病型分類されています。

飼主さんは、「排便したいがでていない。」との主訴で来院されます。確かに症例の肛門を認められません。症例は猫で体重は750gくらいでしょうか? 「えっ、そんなに大きくなるの?」とお感じになった方もいるかもしれません。

この症例は、直腸と膣の間に瘻管(トンネル)が形成されていたため、液状の糞便を排泄していたことが推察されます。そのため、ここまで大きくなりましたが、この月齢になると食欲も増し、排便も瘻管から排出される大きさや硬さではなくなった為症状が顕在化したと考えられます。

次の写真は手術直後の写真です。

手術後数日間お預かりして排便と排尿が出るのを確認してから退院となりました。自力で排便コントロールができたので安心しました。因みに、私はこの鎖肛を猫で2度診ましたが、犬では診たことがありません。

 

 

高齢動物の麻酔について

一般的な外科処置をするときにどうしても切り離せないのが全身麻酔が心配の種になることが多いと思われます。当院では、全身麻酔をする前には基本的に血液検査と胸部レントゲン検査を行っています。尿検査やエコー検査なども症例によっては追加することもあります。 その一方でペットが暴れて検査できない場合や費用的な面で検査をしないで麻酔をせざるおえないケースもあることも事実です。

今回は16歳の老犬の歯科処置をする機会を頂いたのでご紹介したいと思います。主訴は左下眼瞼の排膿です。膿は臼歯の歯根膿瘍が原因と思われます。身体検査では心雑音と腰が曲がり、首が少し上げにくいなどの症状を認めました。 皆さんがこの子の飼主さんでしたら全身麻酔をかけて歯科処置をしますか? 少し気が引けてしまいそうですよね。私も患者の立場なら同じです。

しかし、このまま抗生物質を投薬し続けて、この状態で終えるのも気が滅入ります。なので、血液検査と胸部レントゲン検査をして重大な問題がなければ、歯科処置をすることに決まりました。麻酔をする飼主さん全員に説明することですが、それでも絶対の安全を保障するものではないと説明を加えさせて頂きました。次の写真が歯科処置前の写真です。

次の写真も歯科処置前の写真です。歯石が歯を覆っていますね。

次が歯科処置中の写真です。上顎の犬歯と臼歯は抜歯してある状態です。

歯科処置の翌日には次の動画のようにしっかり食事をしていますね。

次の写真が歯科処置、1週間後の写真です。目元は綺麗になって、歯科処置をして大変よかったと思いました。高齢動物への全身麻酔はリスクもありますが、心配し過ぎて処置しない選択肢と同じくらい安全性を確認したうえで行う処置も大切だと考えています。

眼瞼縫合

眼瞼縫合は意外と機会の多い処置です。その多くが犬同士のケンカなどで眼球が亜脱臼した場合や眼球が突出したバグやフレンチブルドックなどの犬種で角膜潰瘍を起こした場合などにも行われます。特に眼球が突出した場合には、来院してすぐに処置に移ることになります。

内眼瞼側をすこし開けて、上眼瞼と下眼瞼を縫い合わせる処置になります。この時用いる縫合糸はすごく細いものになります。処置終了後には、エリザベスカラーを着用します。

自宅では隙間のある内眼瞼に点眼してもらい、それと内服薬を投薬して頂いています。 この処置は眼瞼を閉鎖するため眼球がほぼ外から見えなくなりますので時折、来院して頂いて眼の状態を確認する必要があります。10日から2週間後に抜糸をして眼瞼を開くことになります。

下の症例は角膜に潰瘍が出来てしまったため、眼瞼縫合を行いました。次の写真は眼瞼縫合を終えた直後の眼の状態です。解りにくいですが、内眼瞼が少し開いていますね。ここから点眼薬を投薬します。飼主さんも慣れるまで時間がかかるかもしれませんね。

ウサギの膀胱結石摘出手術

こんにちは、今回はウサギの膀胱結石です。ウサギの尿の中には、カルシウム系結晶が正常でも存在しており、スムーズに排尿されています。しかし、結晶が結石へと大きくなり排出されない場合には血尿や頻尿、排尿姿勢の持続などの症状が現れ問題となります。

今回の症例は、3歳のメスのウサギです。主訴は、「血尿が止まらない。」とのことでした。確かに、排尿の意思とは無関係に血尿が垂れています。レントゲン写真で膀胱内に結石を認めました。

ここまで結石が大きくなると自然排出される困難で、症状が持続していることから開腹して膀胱結石を摘出することになりました。手術前の血液検査を行い、静脈点滴をして手術になりました。下の写真が実際の結石です。

手術はスムーズに終了したのですが、手術後の血液検査で腎臓の機能が低下していることが解り、暫く点滴を続けました。翌日には腎臓の機能も戻り、次の動画の様に食事をとるようになりました。

今後は、食事面などを含め改善と注意が必要でしょう。

犬の肛門嚢摘出手術

折角なので、犬の肛門嚢摘出手術についてもお話ししておきます。犬の肛門嚢摘出手術の適応は、猫と同じように肛門嚢炎や肛門嚢破裂を繰返す犬や動物病院やトリミング施設に肛門嚢から分泌物を人為的に排出させている犬などです。

肛門嚢を排出させる手間や時間などを考慮すると、摘出すれば肛門嚢はなくなり分泌物の悪臭やお尻を擦り付けるなどの行動も無くなります。

手術の内容や方法は猫と全く同じです。下の写真は、手術終了時の写真です。一度是非ご検討をしてみては如何でしょうか?

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耳血腫の手術

今回は、耳血腫のお話しです。文字通り耳の中に血が溜まってしまう病気です。耳の中の血管が破れてしまうために血が溜まった状態で、耳を掻くなどの物理的衝撃により起こることが知られています。他にも外耳炎、免疫や過敏症などが関連しています。下の写真は、耳血腫を患った耳で,出血により膨らんでいます。m2770004

次の写真は同部から針にて吸引した血液です。20ccくらいあります。m2770012

耳血腫の手術のメリットは、術後から血が溜まらないので煩わしさから早期に解放されることです。当院では、1週間後に抜糸をして2週間後にはエリザベスカラーを外します。来院回数が少なくて済むこと、フィブリンや血餅なども取除くため、比較的耳の厚みが薄いことも長所です。 デメリットは、全身麻酔を必要とすること、起立していた耳が倒れてしまうことがあることです。 次の動画が手術翌日の退院時の様子です。

次の写真が手術1週間後の抜糸の際の写真です。耳の厚さが薄いのが解ります。さらに、その時の動画を載せます。患側の耳は薄く、快適に過ごしていましたが、飼主さん的には立派な起立していた耳が倒れてしまったことを少し残念がっていました。しかし、これで治療は終了になります。

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犬の断指術

今回は、指の切断術です。この手術は、指の先がj感染症を起こすなどして骨髄炎に波及したり、あるいは重度の外傷の治療を目的に行われます。また、大型犬などでは、指に腫瘍が発生することが知られていて、この適応となります。しかし、実際の臨床の現場では小型犬でも指先に腫瘍が多く発生してる感も否めません。次の症例はビションフリーゼで左前脚の指の末節付近に腫瘍ができました。その為、外科手術を行いました。次の動画は手術翌日の状態です。跛行を呈することなく、元気にしているのは嬉しい事ですね。

次の症例は凡そ10歳のミニチュアダックスフンドです。後肢の指の側面にできた腫瘍です。抗生物質を投薬していたが、どんどん大きくなってきた為、腫瘍切除を希望し来院されました。腫瘍の大きくなるスピードが速いため、直ぐに切除することになりました。次の写真が切除前の状態です。第3指の側面にできた腫瘍は第4指を外側に押し出しているのがわかります。

定法どおり、レントゲンにて胸部に転移像がないか?あるいは心臓肥大はないか?患部の指の骨に転移している像はないか?など一通り検査します。他にも血液検査などを行い、麻酔中や麻酔後に異常が起こる可能性は低いか?高いか?などを調べます。比較的異常がない事を確認して手術となります。次の写真が切除して抜糸後の写真です。第3指の基節骨以下から切除しています。

切除後は、足を持上げる素振りも見せませんでした。痛くないわけではありませんが、犬は体重の70%を前肢で支えていることもあり、後肢は前肢の断指術よりも影響は少ないのかもしれません。現在では毛も揃い、通常の生活をしています。

次の症例を見てみましょう。症例は、10歳メスのセッターです。主訴は、「1か月前に猫を追っかけた際に、指を切った後に化膿して治らない。」とのことでした。患部を診ると、著しく第四指が肥厚して化膿しているのが解ります。 M2620001

患部をレントゲン撮影してみると、基節骨の近位端から末節骨まで確認できず、さらに基節骨の近位端は骨髄炎を起していました。よって指の切断手術をすることになりました。ただし、大型犬のため腫瘍なども考慮して、種子骨や関節包もなるべく取除き、切除した組織を病理組織診断を依頼しました。著しく肥厚した指の切除は、肉球辺縁での縫合になり、皮膚に余裕はありませんでした。

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次が手術翌日の状態です。1日中殆ど足を挙上していました。犬は、体重の7割を前肢で支えて、その負重は主に第3指と第4指にかかることが知られています。。今回は、第4指の切除なので心配な面もありました。

しかし、経過を追うごとに徐々に負重し始めました。 次の動画が抜糸をした術後7日後の歩行状態です。殆ど左右の差がないくらいにしっかり歩行しているのが解ります。

指の腫瘍

今回の症例は14歳のビーグル犬です。4カ月前から指が徐々に大きくなっていることに気付いていましたが、食欲も元気もあることから様子を見ていたようです。来院時には、指はかなり腫大して隣の指も少し腫大しているような状態でした。血液検査では、著しい変化はありませんでしたが、触診で膝下リンパ節が腫大していました。

手術は膝下リンパ節を切除することと、腫瘍を切除することを目的に行いました。腫瘍の切除はかなり大きく切除したため、表皮がすべて覆うことはできませんでした。次の動画が術後10日目の状態です。皮膚の欠損部分もありますが、順調に表皮が覆われて順調です。

切除後は、定法通り切除した腫瘍とリンパ節を病理検査に提出して、しっかり切除できているのか?リンパ節に転移していないか?診断は何なのか?を調べます。様々な条件をもとに手術後も抗癌剤が必要な場合には継続して行うことも必要かもしれません。

 

皮膚縫合

今回は、皮膚縫合です。えっ!それだけ?と思われる飼主さんも多くいるのではないでしょうか?でも、時折来院されます。その殆どが、「毛玉を切っていたら誤って皮膚まで・・切ってしまった。」という理由ですが、稀に車のタイヤに毛を巻き込まれて皮膚が契れてしまったケースもあります。治療は、傷が塞がるのを待つ内科的選択肢と外科的に縫合する選択肢に分かれます。

ここでは、外科的に皮膚縫合する場合を取り上げます。このメリットは皮膚縫合して1週間後ぐらいには傷が塞がることです。デメリットは、全身麻酔のリスクがあること、費用がかかることではないでしょうか?  また、皮膚縫合をする条件として、受傷して時間が経過していないことや明らかな感染がないことなどが挙げられます。

複雑な裂傷

最初に、車のタイヤに皮膚を巻き込まれて皮膚が契れてしまった症例です。この場合、出血もひどく外傷領域も大きく、皮膚の切れ方も複雑です。しかし、このような場合にこそ外科的な縫合の必要性を感じます。このような交通事故の場合には、下の写真の様に皮膚が不安定でより癒合し難いためです。

しかし、これを縫合すると下のような写真になります。剃毛してよく観察すると、手根関節から爪の根元まで裂けているのが解ります。また、写真では解りませんが、指の間も裂けていました。

次がおよそ10日後の状態です。最初の状態です。一部は完全に癒合していませんが、状態としては申し分ない状態と判断しています。

単純な裂傷

では、実際の症例を見てみましょう。この症例も毛玉をカットしていたら、皮膚を切ってしまいました。恐らく被毛を持上げてカットしているので、ちょっと切っても、下の動画の様に大きな傷になってしまいます。

この症例は受傷して1時間くらいで来院しましたが、充分に消毒した後に皮膚を縫合しました。次の動画が1週間した抜糸した後の状態です。すっかり傷は閉鎖しているのがわかります。エリザベスカラーも外すことができました。

ウサギの去勢手術

ウサギの去勢手術も、左右の精巣を除去する作業です。オスの精巣は生後10~12週齢で陰嚢に下降することが知られていますが、鼠径輪が閉鎖しないため精巣がお腹中に移動してしまうことがあります。次の写真は手術前の状態です、両側の精巣がはっきりしているのが解ります。M2310007

次の写真が去勢終了後の写真です。エリザベスカラーの着用や抜糸の必要はありませんが、3日間化膿止めの内服をお願いしています。M2310013

 

 

骨プレート除去手術

骨プレート除去手術は、骨折を整復するため使用したプレートを取除く手術です。骨プレートを取除く目的は色々ありますが、寒い時期には痛みの原因となったり、異物反応やプレートの刺激により炎症を起こす原因となったり、成長過程のペットでは正常な骨の成長を妨げる原因なったりするなどの理由が挙げられます。

この症例は手術後は安定していましたが、プレートを付けた患肢の皮膚表面を手術1カ月後から気にし始めました。結果、皮膚の表面は赤く爛れることが多くなりましたのでプレートを除去することにしました。骨折整復手術から1カ月後ですが、若齢のため骨折の治癒も早く、安定していました。

プレート装着時のレントゲン写真です。

次の写真がプレート除去時の写真です。

次の動画はプレート除去して2日後の状態です。食欲も出始めました。お陰様で肢も問題なさそうですね。しっかりと負重しています。

次の動画がプレート除去1週間後の状態です。あまり気にしているようには見えませんね。プレートを除去する前より元気も食欲もあるように見えます。

 

下の症例は、イタリアン・グレート・ハウンドの7歳の症例です。1年前に右側橈骨遠位端の骨折整復手術を行い日常を過ごしていましたが、1週間前から骨折部位をしきりに舐めるとの主訴で来院されました。下の写真の様に皮膚は脱毛して、一部で菲薄化して漿液が排出していました。同部位のレントゲン変化を認めませんでした。歩行も問題ありませんでした。M1850001

しかし、骨プレートが刺激となり同部位を気にしていることから、プレートを除去することで症状は治まると考えました。デメリットは、再骨折する可能性もありますので、プレート除去後は安静に過ごすように伝えて手術になりました。次の写真がプレートを除去前後のレントゲン写真です。

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次の写真が、手術2週間後の写真です。抜糸も終了して手術前に認めた皮膚症状がないのが解ります。もちろん、患部を舐めることも無くなりました。

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次の動画が同じく手術2週間後の状態です。この症例は、術後すぐに歩行し始めましたが、一週間後に少し跛行(びっこ)を示しました。その後また、徐々に跛行は順調に歩行しているのがわかります。