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犬の肛門嚢摘出手術

折角なので、犬の肛門嚢摘出手術についてもお話ししておきます。犬の肛門嚢摘出手術の適応は、猫と同じように肛門嚢炎や肛門嚢破裂を繰返す犬や動物病院やトリミング施設に肛門嚢から分泌物を人為的に排出させている犬などです。

肛門嚢を排出させる手間や時間などを考慮すると、摘出すれば肛門嚢はなくなり分泌物の悪臭やお尻を擦り付けるなどの行動も無くなります。

手術の内容や方法は猫と全く同じです。下の写真は、手術終了時の写真です。一度是非ご検討をしてみては如何でしょうか?

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耳血腫の手術

今回は、耳血腫のお話しです。文字通り耳の中に血が溜まってしまう病気です。耳の中の血管が破れてしまうために血が溜まった状態で、耳を掻くなどの物理的衝撃により起こることが知られています。他にも外耳炎、免疫や過敏症などが関連しています。下の写真は、耳血腫を患った耳で,出血により膨らんでいます。m2770004

次の写真は同部から針にて吸引した血液です。20ccくらいあります。m2770012

耳血腫の手術のメリットは、術後から血が溜まらないので煩わしさから早期に解放されることです。当院では、1週間後に抜糸をして2週間後にはエリザベスカラーを外します。来院回数が少なくて済むこと、フィブリンや血餅なども取除くため、比較的耳の厚みが薄いことも長所です。 デメリットは、全身麻酔を必要とすること、起立していた耳が倒れてしまうことがあることです。 次の動画が手術翌日の退院時の様子です。

次の写真が手術1週間後の抜糸の際の写真です。耳の厚さが薄いのが解ります。さらに、その時の動画を載せます。患側の耳は薄く、快適に過ごしていましたが、飼主さん的には立派な起立していた耳が倒れてしまったことを少し残念がっていました。しかし、これで治療は終了になります。

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犬の断指術

今回は、指の切断術です。この手術は、指の先がj感染症を起こすなどして骨髄炎に波及したり、あるいは重度の外傷の治療を目的に行われます。また、大型犬などでは、指に腫瘍が発生することが知られていて、この適応となります。

早速、実際の症例を見てみましょう。症例は、10歳メスのセッターです。主訴は、「1か月前に猫を追っかけた際に、指を切った後に化膿して治らない。」とのことでした。患部を診ると、著しく第四指が肥厚して化膿しているのが解ります。 M2620001

患部をレントゲン撮影してみると、基節骨の近位端から末節骨まで確認できず、さらに基節骨の近位端は骨髄炎を起していました。よって指の切断手術をすることになりました。ただし、大型犬のため腫瘍なども考慮して、種子骨や関節包もなるべく取除き、切除した組織を病理組織診断を依頼しました。著しく肥厚した指の切除は、肉球辺縁での縫合になり、皮膚に余裕はありませんでした。

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次が手術翌日の状態です。1日中殆ど足を挙上していました。犬は、体重の7割を前肢で支えて、その負重は主に第3指と第4指にかかることが知られています。。今回は、第4指の切除なので心配な面もありました。

しかし、経過を追うごとに徐々に負重し始めました。 次の動画が抜糸をした術後7日後の歩行状態です。殆ど左右の差がないくらいにしっかり歩行しているのが解ります。

指の腫瘍

今回の症例は14歳のビーグル犬です。4カ月前から指が徐々に大きくなっていることに気付いていましたが、食欲も元気もあることから様子を見ていたようです。来院時には、指はかなり腫大して隣の指も少し腫大しているような状態でした。血液検査では、著しい変化はありませんでしたが、触診で膝下リンパ節が腫大していました。

手術は膝下リンパ節を切除することと、腫瘍を切除することを目的に行いました。腫瘍の切除はかなり大きく切除したため、表皮がすべて覆うことはできませんでした。次の動画が術後10日目の状態です。皮膚の欠損部分もありますが、順調に表皮が覆われて順調です。

切除後は、定法通り切除した腫瘍とリンパ節を病理検査に提出して、しっかり切除できているのか?リンパ節に転移していないか?診断は何なのか?を調べます。様々な条件をもとに手術後も抗癌剤が必要な場合には継続して行うことも必要かもしれません。

 

皮膚縫合

今回は、皮膚縫合です。えっ!それだけ?と思われる飼主さんも多くいるのではないでしょうか?でも、時折来院されます。その殆どが、「毛玉を切っていたら誤って皮膚まで・・切ってしまった。」という理由ですが、稀に車のタイヤに毛を巻き込まれて皮膚が契れてしまったケースもあります。治療は、傷が塞がるのを待つ内科的選択肢と外科的に縫合する選択肢に分かれます。

ここでは、外科的に皮膚縫合する場合を取り上げます。このメリットは皮膚縫合して1週間後ぐらいには傷が塞がることです。デメリットは、全身麻酔のリスクがあること、費用がかかることではないでしょうか?  また、皮膚縫合をする条件として、受傷して時間が経過していないことや明らかな感染がないことなどが挙げられます。

複雑な裂傷

最初に、車のタイヤに皮膚を巻き込まれて皮膚が契れてしまった症例です。この場合、出血もひどく外傷領域も大きく、皮膚の切れ方も複雑です。しかし、このような場合にこそ外科的な縫合の必要性を感じます。このような交通事故の場合には、下の写真の様に皮膚が不安定でより癒合し難いためです。

しかし、これを縫合すると下のような写真になります。剃毛してよく観察すると、手根関節から爪の根元まで裂けているのが解ります。また、写真では解りませんが、指の間も裂けていました。

次がおよそ10日後の状態です。最初の状態です。一部は完全に癒合していませんが、状態としては申し分ない状態と判断しています。

単純な裂傷

では、実際の症例を見てみましょう。この症例も毛玉をカットしていたら、皮膚を切ってしまいました。恐らく被毛を持上げてカットしているので、ちょっと切っても、下の動画の様に大きな傷になってしまいます。

この症例は受傷して1時間くらいで来院しましたが、充分に消毒した後に皮膚を縫合しました。次の動画が1週間した抜糸した後の状態です。すっかり傷は閉鎖しているのがわかります。エリザベスカラーも外すことができました。

ウサギの去勢手術

ウサギの去勢手術も、左右の精巣を除去する作業です。オスの精巣は生後10~12週齢で陰嚢に下降することが知られていますが、鼠径輪が閉鎖しないため精巣がお腹中に移動してしまうことがあります。次の写真は手術前の状態です、両側の精巣がはっきりしているのが解ります。M2310007

次の写真が去勢終了後の写真です。エリザベスカラーの着用や抜糸の必要はありませんが、3日間化膿止めの内服をお願いしています。M2310013

 

 

骨プレート除去手術

骨プレート除去手術は、骨折を整復するため使用したプレートを取除く手術です。骨プレートを取除く目的は色々ありますが、寒い時期には痛みの原因となったり、異物反応やプレートの刺激により炎症を起こす原因となったり、成長過程のペットでは正常な骨の成長を妨げる原因なったりするなどの理由が挙げられます。

この症例は手術後は安定していましたが、プレートを付けた患肢の皮膚表面を手術1カ月後から気にし始めました。結果、皮膚の表面は赤く爛れることが多くなりましたのでプレートを除去することにしました。骨折整復手術から1カ月後ですが、若齢のため骨折の治癒も早く、安定していました。

プレート装着時のレントゲン写真です。

次の写真がプレート除去時の写真です。

次の動画はプレート除去して2日後の状態です。食欲も出始めました。お陰様で肢も問題なさそうですね。しっかりと負重しています。

次の動画がプレート除去1週間後の状態です。あまり気にしているようには見えませんね。プレートを除去する前より元気も食欲もあるように見えます。

 

下の症例は、イタリアン・グレート・ハウンドの7歳の症例です。1年前に右側橈骨遠位端の骨折整復手術を行い日常を過ごしていましたが、1週間前から骨折部位をしきりに舐めるとの主訴で来院されました。下の写真の様に皮膚は脱毛して、一部で菲薄化して漿液が排出していました。同部位のレントゲン変化を認めませんでした。歩行も問題ありませんでした。M1850001

しかし、骨プレートが刺激となり同部位を気にしていることから、プレートを除去することで症状は治まると考えました。デメリットは、再骨折する可能性もありますので、プレート除去後は安静に過ごすように伝えて手術になりました。次の写真がプレートを除去前後のレントゲン写真です。

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次の写真が、手術2週間後の写真です。抜糸も終了して手術前に認めた皮膚症状がないのが解ります。もちろん、患部を舐めることも無くなりました。

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次の動画が同じく手術2週間後の状態です。この症例は、術後すぐに歩行し始めましたが、一週間後に少し跛行(びっこ)を示しました。その後また、徐々に跛行は順調に歩行しているのがわかります。

犬・停留精巣(陰睾)の去勢手術

今回は、陰嚢内に精巣が下降していない停留精巣の去勢手術です。勿論、雄犬に限ることのお話しです。精巣が、出生後にお腹から陰嚢内に下降せずにお腹の中に留まってしまったり、お腹から出たが陰嚢まで行かずに途中で止まってしまった状態の精巣を停留精巣(陰睾)と呼びます。それが、両方の精巣に起こったり、片方の精巣に起こったりします。 精巣が陰嚢内に下りずに、体内に停留して高温条件下では精巣腫瘍の発生率が高くなることが知られています。

今回の症例は、6か月の柴犬です。陰嚢内には、1つしか精巣を確認できません。

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停留精巣はペニスの横に存在していました。次の写真は停留精巣を確認しているところで、ペニスの横にありました。このため、切開部位は下の写真の様に2か所になりました。

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手術後は、6日間の投薬と抜糸までのエリザベスカラー着用をお願いして帰宅しました。1週間後に抜糸になります。

 

 

犬の精巣腫瘍摘出手術

飼主のみなさま、こんにちは。今回は精巣腫瘍摘出です。一般的には去勢手術ですが、正常な精巣ではありません。つまり、取除いた精巣を病理組織診断して腫瘍なのか?炎症なのか?他に変化が起きているのか?はっきりします。今回は結果が確認されているので精巣腫瘍とさせて頂いております。

今回の症例は、11歳、雄の柴犬です。フィラリア予防シーズンということで来院した時に、身体検査を同時に行うわけですが、この際に左右の精巣の大きさが異なることに気付きました。総合的に精巣腫瘍の可能性が高いため手術することになりました。写真は、精巣を摘出する前の陰嚢の写真です。精巣は左右1個づつありますが、画面右側の精巣が大きくなっているのが解ります。

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次の写真が、摘出した精巣です。画面右側の精巣の一部(棒で示している部位)が、暗赤色を呈して血管構造が不明瞭になっているのがわかります。どのような変化が起こっているのか?病理組織検査をすることになります。犬の精巣腫瘍は主にセルトリ細胞腫 間質細胞腫(ライディッヒ)精上皮腫の3種類の腫瘍が殆どです。その発生率は高齢になるにつれ高くなることが知られています。診断時の平均年齢は9-11歳ですが、停留精巣(陰睾)の腫瘍では、より若い傾向にあることが知られています。

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11歳でしたが、意外と手術後は元気があり、次の動画は術後5時間後の状態です。念のため、翌日退院することになりました。化膿止めを投薬して終了となりました。

今回、改めて身体検査の重要性を再認識しました。フィラリアや混合ワクチン接種などは、特に症状がなければ、何気ない理由で動物病院に行きますが、そこで普段の何気ない日頃の疑問を質問したり、身体検査をすることで早めに病気に気付き治療を開始できる機会になっています。本当に基本の身体検査が重要です。

 

 

次の症例は、9歳のコーギーの雄です。主訴は、血尿と睾丸を痛がり、舐めているという主訴でした。身体検査にて、睾丸を触診すると精巣(睾丸)の大きさが異なり、その表面が凸凹になっているのが解りました。少し触れるだけで、やはり異様に痛みがあるようでした。総合的に、精巣腫瘍の可能性が高いために両側共に精巣を切除することになりました。

手術前には胸部のレントゲン写真と血液検査、尿検査を行いました。

下の写真は、手術前の写真です。表層の一部が傷がついているのが解ります。この部分を自分で気にして噛んでしまったと思われます。この傷から出血して尿と混ざり、血尿に見えたと推察されました。

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次の写真が、切除した精巣です。表面が全体的に凸凹となっているのが解ります。M2190013

次が手術後の写真です。特別なことはありませんが、抜糸の必要はありません。M2190007

次の動画は手術終了後の動画です。非常に元気が良いですね。

しかし、この症例は、手術前の血液検査では異常のなかった腎臓の数値が、手術後の血液検査では正常値から逸脱して上昇していました。つまり、麻酔により慢性腎不全が顕在化した状態となりました。その後、静脈点滴を行い症状と血液検査の数値は落着き、翌日に退院されました。

今回も手術前の検査が、非常に重要であると再認識させられました。

次の症例は数年前から精巣腫瘍であることは認識していましたが、年齢や他の疾患などもあり手術に踏み切れませんでした。ただ調子が良く、腫瘍の巨大化のため、歩行がしずらくなったため手術を希望するに至りました。次の写真が手術前の状態です。確かに重そうで歩行しにくそうですね。

2~3年間の間に優に5倍の大きさになっており、その表面は触診にて凹凸が触れます。さらに水腫を伴っていたので大きさや重さが増しているのが推察されました。実際に切除した精巣です。右の正常な大きさの精巣に比べてかなり大きく、表面が凸凹しているのがわかりますね。

定法通り、血液検査などの術前検査を行い手術することになりました。

 

皮膚疾患の検査・治療切除

この症例はパピヨンの避妊メス、11歳です。少し前より体全体に痒みを示して、夜も眠れていないなどの症状で来院されました。当初、内科治療で体全体の痒みは落着きましたが、尾根部だけは内科治療では良くなりませんでした。下の写真の様に潰瘍が認められます。M1780003

そこで、飼主さんと相談して外科的に同部位を全体的に切除することになりました。目的は病変部の組織を取除くこと、同部位の病理組織診断をすること、培養検査を行うことです。ただし、デメリットもあります。最大のデメリットは、他の体表の部位と異なり尾の皮膚は余裕がないため、切除部位を大きく空けたまま終了することになります。つまり、傷が塞がるまで時間と管理が必要になります。下の写真は、手術終了直後の患部です。

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次の写真が手術17日後の写真です。徐々にですが、傷口が小さくなっているのがわかります。手術17日後

次の動画が手術28日後の状態です。殆ど傷口は塞がっています、瘢痕部の脱毛は認めますが問題ありません。また、当初、患部を気にしている様子もないので治療を終了しました。

次の写真は手術7か月後の状態です。全く分からない状態です。しかし、皮膚をかき分けてみると瘢痕形成部位は確認されます。現時点では、全く痒みもありません。M2130002

犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)の手術

犬の瞬膜腺の脱出は、その見た目からチェリーアイと呼ばれています。瞬膜とは、目の内側に隠れている薄い膜です。瞬膜腺は、その膜の根元にある分泌腺で、通常では外から認められません。つまり、チェリーアイは、この瞬膜腺が脱出している状態です。

下の症例は、生後4ヵ月のメスのイングリッシュ・ブルドックです。犬の左目の内側が赤く膨らんでいるのがわかります。これが脱出している瞬膜腺です。いわゆる、チェリーアイです。初診時Ⅱ

この症例は、すぐに手術をすることになりました。手術では、瞬膜腺が外に飛び出さないようにする作業となります。手術直後では、瞬膜腺の脱出は認められないものの、瞬膜が外に押し出されていました。下の写真は手術1週間後の写真です。手術1週間後

次の写真が、手術より1年半後の写真です。殆ど左右の違いがないのが解ります。しかし、時折脱出してしまうことがあるそうで、その時は容易に戻ると報告を受けました。日常生活に支障がない程度なので問題ありませんが、より研鑽が必要であると思いました。

チェリーアイ・手術1年半後