猫・皮膚と口腔の境界腫瘤

今日は皮膚と口腔の境界にできた腫瘤です。猫では、あまり発生の認められないイメージですのでレポートしました。腫瘤は皮膚に出来ているのですが、切除するには皮膚とともに裏の口腔粘膜も一緒に切除します。これは、眼瞼縁に出来た腫瘤切除と同じ理屈ですね。 他に皮膚と粘膜の接合部で口唇や口集の皮膚が罹患する感染症で粘膜皮膚膿皮症などが知られていますね。

次の写真が切除直後の写真です。この部位の皮膚は良く進展しますので、口の形が変形することなく形成されている事がわかります。

次の写真が抜糸時の状態です。きれいに皮膚が付いていますね。

舌の縫合

舌の縫合

動物の舌なんて切れることがあるのだろうか?切れるケースなんてあるのだろうか?と一瞬考えてしまいます。しかし、色々なアクシデントで切れるしまう事があるようです。教科書などでもあまり取り上げていないように感じます。今回はたまたま、舌が切れてしまった症例がいましたのレポートします。

まあ、理由はさておき、次の写真が麻酔時の写真です。舌がかろうじて繋がっているのは、横断面の凡そ1/8位でしょうか?口の周囲は血液が付着していましたが、麻酔時には明瞭な出血は認められませんでした。

定法通り、麻酔をかけた後に洗浄、消毒しました。次の写真が終了した際の写真です。

舌先の繋がっている部分が少ないので、この縫合で血流が舌の末端まで届くのだろうか?と些か不安でした。念のため舌の裏側も縫合しました。それが次の写真です。

術後、1週間で舌の状態を確認しましたが、普通に舌はくっ付いて、元の舌先になっていました。その時はすでに縫合糸の半分がなくっていました。改めて舌の血流の良さに驚きました。次の動画が凡そ術後3週間の状態です。全く問題なく生活することが出来ているようです。

LED無影灯を導入しました。

無影灯の変化

今回は手術時に使用するライトです。これまでは下の写真のような通常の電球を使用した一般的な無影灯を使っていました。長年使用していると経年劣化のためライトのカバーはやや白く曇るようなってきます。不思議な話ですが、手術中はあまり明るさとかは全く気になりません。しかし、手術をせずに単純に無影灯を見ていると気が付きます。写真だけでは伝わりませんが、単純に見ているととそろそろ…と思い始めていました。

自分の眼の変化とLEDライト導入理由

無影灯と同じように、年齢を重ねるにつれ私自身の眼もより光量を必要になったことを日々実感するようになりました。そこで、今回は手術用無影灯をLEDを使用したより明るい無影灯に変えました。さらに、今まではライトが上の写真のように1つでしたが、ライトをさらに1つ増設して2つのライトで手術する部位を照らすことが出来るようになります。

結論

LED無影灯を導入して皆が良かったと思います。理由は獣医は手術部位がより明るくなったこと、看護師はライトを増設したことで手術中にライトの移動が少なくなったこと、業者はLEDライトのため電球の交換などが不必要になったこと。ペットと飼主さんは言うまでもありません。

猫の眼球摘出手術について

最近、猫の角膜潰瘍が破れて、眼球内の虹彩が外に飛び出して数日経過してから来院するケースを目にします。猫では特に子猫の時点で、ウイルス感染後に細菌が感染し2次感染を併発することが原因となります。本来は最も外側にある角膜が破けないように外用薬などを使用したり、外科的に眼瞼縫合や瞬膜や結膜を使用して角膜を保護し再生するように治療します。

眼球摘出手術の適応

眼球摘出手術の適応を見てみると、眼内腫瘍、全眼球炎、慢性期の緑内障、整復困難な眼球脱出、眼球破裂などが挙げられています。

現実的な飼主さんの希望

角膜が破れて虹彩が脱出した猫はかなり痛みを伴うようで、飼主さんは痛みを取ってほしいと希望されます。その為、術前から疼痛緩和を行いながら麻酔処置をします。勿論、術中や術後も疼痛管理が必要です。また、眼球手術の中でも出血量が多い部類に入るそうです。止血の準備や止血異常の有無なども確認が必要でしょう。

症例

大きな貫通潰瘍で虹彩が大きく脱出し数日経過している場合は、全眼球炎になっていることが殆どではないでしょうか?全眼球炎になっていなければ、眼科専門医であれば他の手術方法があると記載されています。この症例は眼球は大きくなり、さらに眼球前眼房内は混濁していました。この場合は、眼球摘出術を選択することで、1.痛みをすぐに止めることができる。2.回復期がない。などのメリットがあるようです。次の写真は抜糸時の時の状態です。痛みはなく、元気もあるとのことでした。

 

 

 

 

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切除した腫瘍組織の病理組織診断について

切除した腫瘍組織の病理組織診断は行う必要がありますか?という質問を受けることがあります。最終的に組織診断を行うか?否か?は飼主さんが決めることですが、そのメリットについてここで記載しようと思います。

病理組織診断のメリット

先ず第一のメリットは組織診断が決まる可能性が高いことです。診断が決まるという事は、切除組織が腫瘍なのか?腫瘍ではないのか?良性腫瘍なのか?悪性腫瘍なのか?ということが解ります。第二のメリットは切除した組織が腫瘍を全て取りきれているのか?いないのか?わかることです。完全に切除していても腫瘍細胞が血管やリンパ管に入る像がみられるのか?見られないのか?などの情報が得られます。

針生検検査では判らない情報を得ることが出来ます。針生検では、大まかに腫瘍の可能性が高いのか?高くないのか?は分かることもありますが、切除した組織でなければ判断しかねるなどの解答も多く目にします。

病理組織診断結果までの時間

手術で切除した組織はホルマリンなどの固定液で浸透させて検査センターに送ります。検査センターで検査結果が出るまでに2週間前後の時間を要します。結果が出たら飼主様に連絡し、誤解のない様に病理診断書を一緒にみながら検査結果を説明しています。

病理組織診断から得られる予後と注意点

悪性腫瘍は完全に切除していても血管やリンパ管を介して腫瘍細胞が肺や肝臓などに遠隔転移を起こす可能性が残り、不完全切除の場合には同じ場所に再発する可能性が高くなります。私の少ない経験でも切除して1か月に再発した腫瘍もあれば3年後に再発した症例もあります。 逆に良性腫瘍で完全に切除していれば、その後に問題となるケースは限りなく低くなると言えます。 診断名が決まることで、抗がん剤が治療として効果的なのか?でないのか?など切除後の治療の選択肢が増えることも期待されます。

結論

以上の理由により当院では切除組織の病理組織検査を飼主の皆様へ勧めています。

具体例

先日、こんなケースがありました。診断は悪性腫瘍、血管やリンパ管への脈管内浸潤あり、しかし悪性腫瘍は完全に切除している。と病理診断が返却されました。しかし、1か月後に同じ場所へ再発していました。悪性腫瘍は切除しきれていても、腫瘍細胞が血管やリンパ管などから転移をしているため、再発や転移が起こるため油断できませんね。この場合は、高度医療を行う2次病院へ依頼し、さらなる拡大切除を行うか?拡大切除後にさらに放射線治療や抗癌治療を行う必要があるかもしれませんね。

雄犬の尿道結石摘出手術

今回は、雄犬の尿道結石摘出手術です。雄の尿道はメスの尿道に比べて細く長いことが知られています。また、その尿道径は細いため、小さな結石により尿道が閉塞してしまう可能性があります。

結石は腎臓や膀胱で形成され膀胱に位置している時は良いのですが、尿道に結石が入ると外尿道口に到達するまでの間に結石が尿道から動かなくなって閉塞を引起します。因みに尿道は出口(外尿道口)に向かうに従い細くなるので、小さい結石は膀胱を出てから遠くで、大きい結石は膀胱の近くで閉塞することになります。

今回の症例は膀胱で形成されていた結石が尿道に入り、遠位で閉塞していました。尿道閉塞を起こしたこの症例は、膀胱に尿が充満した状態で、尿が少しづつですが外尿道口から漏れて出ている状態が数日続いていたとのことでした。次のレントゲン写真は手術前の写真で、陰茎骨の所の尿道に結石が砂利状と玉状に存在して閉塞しているのがわかります。膀胱は前述のとおり膨満しているのがわかります。(前立腺も肥大しています。)

次の写真は術後の状態で、閉塞していた結石が取り除かれているのがわかります。

完全に閉塞してしまうと、老廃物が尿として排出されないので腎不全の状態となってしまいます。下の写真は閉塞した遠位尿道を切開した手術後の状態です。

次の写真が抜糸後の状態です。現在では、普通に生活しているとのことでした。

尿道閉塞の切開部位

大まかに閉塞部位は陰嚢前部と会陰部に分かれる。先ほどの症例の結石の閉塞部位は陰嚢前部となる。ここでの閉塞は尿管が表皮近くに存在しているためアプローチが容易である。一方、会陰部の閉塞では、海綿状組織が厚いためアプローチしづらい。結果として、より手術時間を要し、会陰部切開では陰嚢前部切開と比較して、術後の尿道狭窄の比率が高いことが知られています。

私の数少ない経験でも会陰部切開を行った際は、結石を確認するまでに時間がかかった記憶があります。会陰部切開の実際は、肛門と陰嚢の間を切開します。合併症は感染や狭窄、瘻管形成などが報告されています。

結石の種類

閉塞した結石には様々な種類があります。結石の表面が滑らかなストロバイト結石や、表面が棘状のシュウ酸カルシウムの他、様々な特徴があります。次の写真は結石表面が棘状であることで尿道においても、膀胱においても摘出し難かったことを記憶しています。

次の写真が摘出後の写真です。

いずれにしても、結石の種類を特定することにより術後に食べる食事の種類を決定することに繋がります。確かに結石毎に対応した食事を摂取することで結石は形成されにくくなることは間違いではありませんが、それでも体質や飲水量など様々な要因により結石が再び形成されることもありますので、注意が必要です。

疼痛管理について

様々な手術が行われていますが、積極的に行われるようになった疼痛緩和療法は、飛躍的に進歩した分野なのではないでしょうか?どんな手術でも痛みを伴う事は想像に難くありません。動物病院でごく当たり前に行われている去勢手術や避妊手術でも、かなりの痛みを伴うに違いないと思います。

動物は痛みを感じると部屋の隅でじっとしていたり、震えたり、食欲が減退して、元気がなくなったりします。他にも色々な症状が知られていて、普段と異なる行動をすることが多いようです。一方で、痛みに対して感受性も個体により様々な印象を受けるのも事実です。

では、手術でペットがあまり痛みを感じないようにするにはどの様にすれば良いのでしょうか?それは、手術前から疼痛緩和を始める事であり、手術中も、さらに手術後もそれを実施することです。なるべく痛みの程度を軽くして、その時間を少なくすることを目的にしています。手術前から始めることで、手術中の痛みを軽減し、全身麻酔の濃度を減らすことが出来ます。手術中・手術後も継続することで、一般生活への回復が早くなることが期待されます。手術で使用する疼痛緩和治療薬は、異なる部位に異なる作用時間で作用することで効果的に鎮痛効果が得られます。

また、疼痛緩和治療薬も良い面ばかりではありません。同時にその副作用を補う薬を用いたり、夫々の個体の健康状態に合った鎮痛薬を使用するのが最善であると考えます。

電気メス機械を導入しました。

今回は電気メスの機械を導入した事をご報告します。当院は昨年まで電気メスを使用していませんでしたが、本年より電気メスを導入しました。電気メスは止血機能に優れた外科機器です。

昨年までは、出血すると外科用縫合糸で縫合して止血していましたが、電気メスの導入によりメス先で出血部位に接触することにより止血できます。特に次の症例の様に出血箇所が多い腫瘤の切除などでは手術時間の短縮が期待できます。他にも色々な機能があり便利です。

次は手術終了時の写真です。手術終了時では電気メスを使用しても使用しなくても見た目に変化はありません。抜糸までの日数にも変化はありません。

ただ単純に手術時間が短縮できることを目的に電気メスを導入しました。上の症例も16歳でしたのでなるべく出血なく、手術時間が短くなることをペットも飼主さんも私も望んでいることは確かでしょう。手術後から以前にも増して食欲がでたことをお聞きしたら、みんな嬉しくなってしまいますね。下の写真は抜糸時の写真です。

 

高齢猫の麻酔について

若齢動物と老齢動物の違い

今回は高齢猫の麻酔についての話です。猫に限らず、高齢の動物は若い動物と比較して何が違うのか?一つ目は、何か基礎疾患をもっていることが多い事。二つ目は、各臓器の予備能力が低下している事ではないでしょうか? 予備能力とは循環機能や呼吸機能、肝臓や腎臓の代謝機能などが、年齢と共にその機能が減少して、若い個体に比較して変化に対応する能力が低下していることを意味しています。

手術前の検査

麻酔をかける前には、事前に身体検査 血液検査 レントゲン検査 エコー検査などを行います。ただし、様々な理由でこれらの検査をできない症例もいます。これらの検査で確認された基礎疾患の治療をおこないます。あるいは、基礎疾患の重症度などにより麻酔を用いることができない症例もいるかも知れません。

麻酔薬の選択

様々な要因を考慮して獣医師は麻酔薬を選択することになります。また、体重当たりの麻酔量も少し減少するなどの工夫も必要かもしれません。一般的に老齢動物の麻酔薬の用量は減少して、麻酔からの回復時間は延長します。使用する麻酔薬には夫々良い面と悪い面がありますので、どの麻酔薬を用いるにしても、目的をもって使用するのが良いと思われます。

手術中の注意点

その他に老齢動物は循環血液量が減少しているので輸液を行います。また、体温低下が起こり易いため、保温マットを利用するなどの準備も必要です。

症例1

次の症例は19歳の避妊メスの猫です。体表に腫瘤ができ、その表面は脱毛と潰瘍を呈していました。猫はその部位を舐め続けるため少し出血して生活の質の低下につながるため手術を依頼しました。 基礎疾患は慢性腎不全で普段より内服薬を投薬していました。

手術は無事終了して、手術後に血液検査異常がないことを確認して終了となりました。この症例は体に触れられることを極端に嫌うため、術前にエコー検査などはできませんでしたが、無事に終了することができました。次の動画は手術後1週間して抜糸の時の状態です。飼主さんもご飯を変わりなく食べているとのことでしたので安心しました。

症例2

先日、20歳の猫の歯科処置の依頼がありました。いつも通り、身体検査、血液検査、レントゲン検査を行いました。特に手術前の各種検査において著しい変化を認めませんでしたので、手術前から静脈点滴を開始した後に歯科処置をすることになりました。歯科処置中は殆ど注射麻酔で維持できました。一時的な疼痛を示すことがありましたが、殆ど吸入麻酔を使用することなく終えることができました。

歯科処置後の麻酔からの覚醒もスムーズでした。処置を終えた感想は、年齢の割に非常に麻酔からの覚醒がスムーズであった点です。年齢という物差しで麻酔の是非を判断することも大切ですが、この症例の様に手術前の各種検査で麻酔の適応・不適応を決めるのも大変重要な要素であることを改めて見直す機会となりました。

手術後の血液検査にても著しい変化はありませんでした。抜歯を終えて、少しでも通常の生活が飼主さんと猫さん共に快適になることを願ってやみません。

肉球の手術

肉球の外科

今日は肉球の手術についてのお話です。肉球は地面からのショックを吸収して摩擦に耐えうる最も強靭な組織と言えます。その肉球に腫瘍ができたり、裂傷や病変が存在する場合に肉球の手術が適応になりますが、強靭な組織がゆえ裂傷なども非常に稀であると認識しています。

肉球の数と呼び名について

肉球と言っても前肢には各指の指球と真ん中の大きな掌球、手根球の6個の肉球が存在しています。後肢にも各指の趾球と真ん中の足底球の5個の肉球が存在しています。

症例報告

今回は肉球の裂傷についてのレポートです。肉球は他の皮膚と同様に縫合しますが、肉球は自身の体重の負荷により適切に縫合しても離開しやすい特徴があります。そのため、適切に縫合しても副子がないと裂開する可能性が高くなるため、副子が必要になります。ただし、ここでまた一つ問題が出てきます。体格が大きく、活動性の高い犬ほど副子を管理するのが大変になってきます。

次の症例はボーダーコリーの7か月で、第三指球を大きく深く裂傷してしまいました。つぎの動画は手術直後の状態です。すでに左前肢にオレンジ色の副子を装着しているのがわかります。

手術後からは1日間隔で副子を外して、患部を確認して消毒し副子を装着する作業を繰返します。一口に副子と言っても観察、消毒、ガーゼ、包帯、アルミ副子 それを覆うベットラップとかなり大変な作業です。次の動画は10日後に状態です。特に変わりませんが、副子にも慣れているのがわかります。

手術後12日目で抜糸を行い、無事に退院されました。骨折ではありませんが、副子で生活することや、それを管理するのはペットにとってもスタッフにとっても大変でした。お大事にして下さい。