猫の鎖肛について

鎖肛について

今回のテーマは「鎖肛」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれません。肛門と直腸の連続性を発生過程の中で失った先天的疾患です。しかし、この病気を持つ子は発育過程の中で死に至るため、その発生率は良く解っていません。 鎖肛には肛門膜と直腸の位置関係によりⅠ~Ⅲ型に病型分類されています。

飼主さんは、「排便したいがでていない。」との主訴で来院されます。確かに症例の肛門を認められません。症例は猫で体重は750gくらいでしょうか? 「えっ、そんなに大きくなるの?」とお感じになった方もいるかもしれません。

この症例は、直腸と膣の間に瘻管(トンネル)が形成されていたため、液状の糞便を排泄していたことが推察されます。そのため、ここまで大きくなりましたが、この月齢になると食欲も増し、排便も瘻管から排出される大きさや硬さではなくなった為症状が顕在化したと考えられます。

次の写真は手術直後の写真です。

手術後数日間お預かりして排便と排尿が出るのを確認してから退院となりました。自力で排便コントロールができたので安心しました。因みに、私はこの鎖肛を猫で2度診ましたが、犬では診たことがありません。

 

 

猫の肘関節脱臼整復手術

投稿するのは久しぶりになってしまいました。今回は猫の肘関節・脱臼整復手術です。あまり、肘関節の脱臼はありません。今回紹介する症例も何度か非観血的に整復を試みましたが、数日すると再脱臼を繰返しましたので、手術にて整復手術をすることになりました。

なぜ?肘関節の脱臼をしてしまったのか?原因は屋外にでる猫ですのでわかりません。 また、非観血的整復をするごとに脱臼しやすくなった感じがしました。そして、脱臼している患肢は、地面に着地し負重することはできません。

次の写真は手術の傷口です。肘の外側を切開して脱臼を整復してボルトを上腕骨遠位端と橈骨近位端にいれて靭帯の役割をすることで再脱臼を防ぐ手術を行いました。

次の動画がおよそ手術10日後の状態です。抜糸を終えて日に日に患肢に負重しているのがわかります。

現在、手術後およそ2年が経過していますが、再脱臼はなく元気に生活していることを確認しています。

 

 

モルモットの体表腫瘤切除手術

今回は、モルモットの体表腫瘤切除手術の話です。モルモットも他のペットと同様に平均寿命が延びて腫瘍の発生率も増加しているものと思われます。体表にできた腫瘍は、体内に出来た腫瘍に比べて飼主さんが触れるので、その存在に気付きやすいと思います。

今回の症例も腫瘍の大きさはゴルフボール大になりその表面が潰瘍を呈していました。生活の質を考慮して、全身麻酔下にて切除することになりました。当院ではモルモットに全身麻酔はマスクにて行っていますので、今回の症例のように鼻や口周囲にある腫瘤は切除しにくい傾向にあります。

下の写真は手術終了時の写真です。まだ、モルモットさんは完全に覚醒しておらずぼーっとした状態です。

次の動画が手術終了2時間後の状態です。この時点では、すでに好きな野菜を食べていました。

次の動画が手術1週間後の状態です。手術創は綺麗に縫合されています。以前より元気が良いように見えました。この状態を確認して治療は終了しました。

猫の子宮蓄膿症について

今回は猫の子宮蓄膿症についてのお話しです。猫の子宮蓄膿症は、犬と同様に子宮内に膿が溜まる病気です。つまり、子宮内に化膿性物質が貯留する病態です。犬も猫もその病態に違いはないのですが、猫は若齢での発症も多いのではないか?と思いレポートさせて頂きました。 成書には、犬も猫もシニア世代に入る年齢から増加する傾向にあると記載されていますが、猫では1歳前後でも発症することが意外とあると思います。今回も生後1年くらいの猫の子宮蓄膿症を治療したのでレポートさせて頂きました。

この症例は1歳の雌ネコです。既往歴はありません。外陰部からの出血をもとにエコー検査によりすぐに手術になりました。 早期の発見でしたので食欲もありますし、症状も明瞭ではありません。しかし、開腹すると予測通り子宮は腫大していて、その中を確認してみると下の写真の様に膿が貯留しています。

手術の傷口も次の写真の様に通常の避妊手術に比べて少し大きいのですが、手術後の状態はある程度元気でしたので2日入院して退院することになりました。

こんなに元気で若い猫が子宮蓄膿症になるわけがない。とついつい考えがちですが、先入観なく診療することの大切さを痛感させられる症例ですね。因みに子宮内に無菌性の液体が貯留することを子宮水症あるいは子宮水腫と呼ばれています。避妊手術を依頼されて、回復したら子宮水腫であったことは何度か経験しています。子宮水腫の場合、意外と食欲も元気もある事が多く、飼主さんも気づかないことが殆どです。次の写真は左が通常の卵巣と子宮で、右が子宮水腫の状態です。

高齢動物の麻酔について

一般的な外科処置をするときにどうしても切り離せないのが全身麻酔が心配の種になることが多いと思われます。当院では、全身麻酔をする前には基本的に血液検査と胸部レントゲン検査を行っています。尿検査やエコー検査なども症例によっては追加することもあります。 その一方でペットが暴れて検査できない場合や費用的な面で検査をしないで麻酔をせざるおえないケースもあることも事実です。

今回は16歳の老犬の歯科処置をする機会を頂いたのでご紹介したいと思います。主訴は左下眼瞼の排膿です。膿は臼歯の歯根膿瘍が原因と思われます。身体検査では心雑音と腰が曲がり、首が少し上げにくいなどの症状を認めました。 皆さんがこの子の飼主さんでしたら全身麻酔をかけて歯科処置をしますか? 少し気が引けてしまいそうですよね。私も患者の立場なら同じです。

しかし、このまま抗生物質を投薬し続けて、この状態で終えるのも気が滅入ります。なので、血液検査と胸部レントゲン検査をして重大な問題がなければ、歯科処置をすることに決まりました。麻酔をする飼主さん全員に説明することですが、それでも絶対の安全を保障するものではないと説明を加えさせて頂きました。次の写真が歯科処置前の写真です。

次の写真も歯科処置前の写真です。歯石が歯を覆っていますね。

次が歯科処置中の写真です。上顎の犬歯と臼歯は抜歯してある状態です。

歯科処置の翌日には次の動画のようにしっかり食事をしていますね。

次の写真が歯科処置、1週間後の写真です。目元は綺麗になって、歯科処置をして大変よかったと思いました。高齢動物への全身麻酔はリスクもありますが、心配し過ぎて処置しない選択肢と同じくらい安全性を確認したうえで行う処置も大切だと考えています。

猫の試験的開腹手術

今日は猫の試験的開腹手術です。この処置はあまりないのですが、どうしても判断がつかない時に診断と治療を目的に行います。色々と理由で行われます。現在では医療機器の発達により昔よりこの処置は減っているのではないでしょうか?

次の症例は持続的な嘔吐と下痢、そして体重の著しい減少です。麻酔に耐えられる状態の時に診断と治療を目的に試験的開腹手術を行うことにしました。 試験的開腹なので、上腹部から下腹部まで切開します。開腹後は、順に臓器を確認する作業となります。 この症例では空腸を中心に小腸壁が全域で肥厚していましたので、小腸壁の一部を採材し、他に異常がないか確認して閉腹することになりました。 下の写真は採材しているところです。

採材した組織は病理組織診断を依頼して診断してもらいます。その結果をもとに治療となります。この症例も病理診断をもとに治療を行い、現在では元気に過ごしております。次の動画は手術後の状態です。

 

眼瞼縫合

眼瞼縫合は意外と機会の多い処置です。その多くが犬同士のケンカなどで眼球が亜脱臼した場合や眼球が突出したバグやフレンチブルドックなどの犬種で角膜潰瘍を起こした場合などにも行われます。特に眼球が突出した場合には、来院してすぐに処置に移ることになります。

内眼瞼側をすこし開けて、上眼瞼と下眼瞼を縫い合わせる処置になります。この時用いる縫合糸はすごく細いものになります。処置終了後には、エリザベスカラーを着用します。

自宅では隙間のある内眼瞼に点眼してもらい、それと内服薬を投薬して頂いています。 この処置は眼瞼を閉鎖するため眼球がほぼ外から見えなくなりますので時折、来院して頂いて眼の状態を確認する必要があります。10日から2週間後に抜糸をして眼瞼を開くことになります。

下の症例は角膜に潰瘍が出来てしまったため、眼瞼縫合を行いました。次の写真は眼瞼縫合を終えた直後の眼の状態です。解りにくいですが、内眼瞼が少し開いていますね。ここから点眼薬を投薬します。飼主さんも慣れるまで時間がかかるかもしれませんね。

ウサギの膀胱結石摘出手術

こんにちは、今回はウサギの膀胱結石です。ウサギの尿の中には、カルシウム系結晶が正常でも存在しており、スムーズに排尿されています。しかし、結晶が結石へと大きくなり排出されない場合には血尿や頻尿、排尿姿勢の持続などの症状が現れ問題となります。

今回の症例は、3歳のメスのウサギです。主訴は、「血尿が止まらない。」とのことでした。確かに、排尿の意思とは無関係に血尿が垂れています。レントゲン写真で膀胱内に結石を認めました。

ここまで結石が大きくなると自然排出される困難で、症状が持続していることから開腹して膀胱結石を摘出することになりました。手術前の血液検査を行い、静脈点滴をして手術になりました。下の写真が実際の結石です。

手術はスムーズに終了したのですが、手術後の血液検査で腎臓の機能が低下していることが解り、暫く点滴を続けました。翌日には腎臓の機能も戻り、次の動画の様に食事をとるようになりました。

今後は、食事面などを含め改善と注意が必要でしょう。

犬の肛門嚢摘出手術

折角なので、犬の肛門嚢摘出手術についてもお話ししておきます。犬の肛門嚢摘出手術の適応は、猫と同じように肛門嚢炎や肛門嚢破裂を繰返す犬や動物病院やトリミング施設に肛門嚢から分泌物を人為的に排出させている犬などです。

肛門嚢を排出させる手間や時間などを考慮すると、摘出すれば肛門嚢はなくなり分泌物の悪臭やお尻を擦り付けるなどの行動も無くなります。

手術の内容や方法は猫と全く同じです。下の写真は、手術終了時の写真です。一度是非ご検討をしてみては如何でしょうか?

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猫の肛門嚢摘出手術

今回は猫の肛門嚢摘出手術です。飼猫のおしりの横が化膿して破けた経験をお持ちの飼主さんも多いのではないでしょうか?肛門嚢は分泌腺細胞に内張りされ、分泌物を排便とともに排出します。

しかし、飼主さんが気づかない内に閉塞して分泌物が溜まり、炎症などもおきて肛門嚢が破裂してしまうことがあるのです。 この様に肛門嚢破裂を繰返す猫さんは、肛門嚢摘出手術の適応になります。 肛門嚢がなければ分泌物も溜まらないので、肛門嚢の病気が無くなります。もちろん、臭い分泌物も排出されなくなります。

手術は事前に予約・診察して頂き、当日は絶食して来院して頂きます。全身麻酔を施し、肛門周囲の被毛を剃毛します。下の写真は手術前の写真です。m2840001

次の写真が摘出した肛門嚢です。改めて見ると意外に大きいような感じもしますね?m2840015

次の写真が手術終了後の写真です。m2840011

1週間は抗生物質を投薬して頂き、エリザベスカラーを装着して頂きます。抜糸は特になく手術創を確認して終了になります。肛門嚢破裂を起こした経験のあるネコさんの飼主さんは、是非一度ご検討されては如何でしょうか?