猫の抜歯とスケーリング

猫の抜歯とスケーリングは、基本的には歯が痛くて食べれない、あるいは歯根膿瘍の時に行なうのが殆どです。処置は、最初にスケーリング処置を行い、歯そのものを評価します。痛みの原因となっている歯や近い将来に抜歯や痛みの原因となるような歯は抜歯をします。歯科処置は、予約していただいた日の午前中に来院していただき、当日あるいは翌日に帰宅します。

この症例は6歳の雄猫で、口腔内からの出血という主訴で来院されました。強い痛みはないのですが、口腔内を観察すると下の写真の様に、歯肉が浮き上がり歯肉が暗赤色に変色して強い歯周炎が残存している臼歯周囲に認められました。M1820004

当院では、歯科処置は全身麻酔下にておこないます。この猫は大人しかったので、血液検査と胸部レントゲン検査を行った後に全身麻酔をかけて歯科処置を行いました。口腔全体を確認した後に、超音波スケーラーにて歯に付着した汚れを取り除きます。この症例では、切歯と犬歯は非常に状態が良いにもかかわらず、臼歯の状態は歯根がすぐに確認できる歯、動揺している歯、既に歯が割れて一部が残っている歯など悪いものばかりでした。よって抜歯することになりました。次の写真が抜歯後です。M1830004

次の動画が歯科処置2時間後の状態です。麻酔覚醒直後は、少し左右に動揺していましたが、暫くすると動画の様に普通ななっています。落着いていましたので、当日退院しました。

次に猫の歯肉口内炎による抜歯治療のお話です。猫の歯肉口内炎の原因は不明であります。ただし、ウイルスや細菌感染の関与や過剰な免疫反応などが関与している可能性があり、色々な要素により構成されて発症しています。このため、治療法が確立されておらず、内科治療では治りにくい病気です。

症状として、疼痛、流延、嚥下困難、口臭、食欲低下、被毛粗剛、体重減少などを示します。内科治療では抗菌薬やステロイド、インターフェロン、鎮痛剤や免疫抑制剤などが行われています。一方、外科治療では部分的抜歯、全臼歯抜歯、全顎抜歯などが行われています。

今回の症例は、尾側粘膜には炎症は殆ど起こしていませんでしたので、比較的良好な予後を示すタイプでした。内科治療で抗菌剤を投与している時は食欲もあり良いのですが、休薬して暫くすると流延や食欲低下、痛み、体重低下を繰返していました。そのため、前臼歯抜歯を行いました。次の写真がその際に抜歯した歯です。

その後は、抗菌薬を投薬しなくても症状を示すことがなくなりました。体重もほぼ2倍に増加しました。同じネコとは思えないですね。