犬と猫の膝蓋骨内方脱臼手術

膝蓋骨内方脱臼は、文字通り膝の膝蓋骨が関節から膝の内側へ脱臼してしまった状態です。本来、この膝蓋骨は、上下運動の動きにより膝を動かすことができますが、脱臼状態になると本来の動きは出来ないため、後肢を持上げた状態になります。

次の動画は膝関節の大腿骨遠位端の滑車溝を移動する膝蓋骨(膝のお皿)を示したものです。少し分かりにくいですが、膝関節を進展屈曲する際の膝蓋骨の動きを示しました。左右の滑車溝から膝蓋骨が内側へ逸脱すれば膝蓋骨内包脱臼に、外側へ逸脱すれば膝蓋骨外包脱臼となります。

膝蓋骨内包脱臼はトイプードルやポメラニアンなどの小型犬に多く認められます。外包脱臼は大型犬に多く認めれることが知られています。この疾患はその脱臼した生後日数が若ければ若いほど軟骨や骨の変形を生じ、重症度も高くなる傾向があります。この脱臼の状態によりグレードがあります。脱臼が改善されない場合には手術を考慮する必要があるかもしれません。

手術は、先ほどの膝関節の滑車溝を削ることで膝蓋骨の脱臼を予防したり、膝蓋骨を牽引する筋肉の緊張を緩和したり、膝蓋靭帯を真直ぐにするものが基本となります。いくつかの手技を組み合わせて行うことで膝蓋骨の脱臼を防ぐ目的でおこないますが、それでも再脱臼する可能性もあります。

次の症例は12歳のトイプードルです。右後肢を持続的に挙上しているため来院しました。この時は膝蓋骨内包脱臼で膝蓋骨を滑車溝に整復するも直ぐに脱臼してしまう状態でした。さらに、レントゲン撮影をすると、十字靭帯も断裂していることが解りました。そのため、膝蓋骨内包脱臼の手術と同時に十字靭帯断裂の手術も行った症例です。次の動画は術後凡そ3週間後の動画です。少し違和感は残っていそうですが、歩行しています。

では、実際の症例をみてみましょう。症例は、8歳のオスのマルチーズです。主訴は「階段など段差のあるところを登らなくなった。」とのことです。身体検査では、左後肢の十字靭帯断裂とグレード4の膝蓋骨内方脱臼です。つまり、膝蓋骨は常に滑車溝から外れている状態です。下の動画は、手術前の状態です。一見、何でもない様にみえますが、自宅では主訴のような症状があります。

手術終了後は3週間程度の入院になります。入院時にはバンテージ交換や鎮痛や感染症対策が重要となります。また、再脱臼なども起こしていないか?確認しています。手術翌日は患肢を挙上した状態ですが、徐々に負重するようになります。下の動画が手術10日頃の動画です。

次の動画が手術およそ1か月後の動画です。非常に順調に回復しています。以前よりも歩行がスムーズになって生活しているとご報告を受けました。治療が終了しました。