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膀胱結石摘出手術

膀胱結石は、文字通り膀胱内で結石が形成される病気です。結石も顕微鏡で確認されるくらいの結晶から始まり、徐々に大きくなります。大きくなった結石はやがて、尿道を閉塞してしまう結果となることも少なくありません。また、尿道は雌犬より雄犬の方が細いため、雄犬の場合には小さな結石でも尿道を閉塞する危険性があります。排尿が出来なくなった場合には、膀胱結石摘出手術になります。症状は、頻尿、血尿、排尿困難などが一般的です。

次の症例は「尿意はあるが、排尿できない。」と来院された9歳の雄犬です。触診すると下腹部が張って硬くなっています。排尿できないために大きくなった膀胱と思われます。レントゲン撮影すると膀胱と尿道に結石があるのが解ります。 尿道の結石は恐らく精巣の上あたりにあると思われます。結果的には全く排尿できないため、すぐに手術をする必要があります。

次の症例は、2歳の雌犬です。最近、血尿が続くという主訴で治療をしていましたが、血尿が続くためレントゲン写真を撮ってみると、下の写真の様に比較的大きな結石が下腹部に写っていました。M1630002

この結石が本当に膀胱なかに存在するのか?エコーにて確認しました。

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症状、レントゲン写真、エコー検査といずれも膀胱結石の可能性が高いので全身麻酔にて膀胱結石を摘出することとなりました。因みにこの犬の一般状態や血液検査等に異常は認められませんでした。ただ、血尿が止まらないということでした。下の写真のように元気です。

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これがレントゲン写真に映っていた膀胱結石です。

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まだ、2歳だからこんなに大きな結石は出来ていることは予想外でしたが、はっきりと血尿の原因がわかり、それを取除くことができました。ただし、膀胱結石は、犬の体質と食事に関係していることが多いので、今後も定期的な尿検査と食事管理が必要になるかもしれません。

 

雌犬の膀胱結石が写っている下腹部のレントゲン写真です。この症例は9歳くらいですが実は3~4年前にも排尿困難で膀胱結石摘出手術をしています。再発の膀胱結石です。棒で指したところに、結石が4個あります。

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下の写真が実際の膀胱結石です。手術は、膀胱を開けて結石を取り除く作業となります。因みに膀胱結石の種類はいくつか知られ、下の結石はストルバイトという種類でした。

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超音波スケーリングと抜歯

歯科処置について

超音波スケーリングは、抜歯処置が必要な全ての犬に行ないます。これにより、歯の表面を覆っている歯石を除去できるからです。また、歯と歯肉の間に存在するプラークも丁寧に除去することができます。一方、抜歯は、歯の根元が化膿してしまう歯根膿瘍あるいは口腔内の腫瘤を切除する時に行ないます。また、スケーリング後に歯を観察して、近いうちに直に抜歯が必要になる場合にも行います。

高齢動物の歯科処置について

また最近ではペットの高齢化が進み、高齢犬における歯科処置も増えています。高齢犬に全身麻酔をかけて大丈夫なの?という質問をよく受けます。安全な全身麻酔はありませんが、検査をして安全に行えるように努めています。次にご紹介する症例は15歳のミニチュアダックスフントです。少し痩せていて、両眼は老齢性の白内障です。症状は臼歯に重度付着した歯石から歯肉炎がおこり、さらに皮膚が壊死して穴が開いてしまっています。 身体検査、レントゲン検査、血液検査と異常がなかったので、処置を行うことになりました。次の動画が処置前の状態です。

この症例は殆どの歯の状態が悪く、残った歯は3本だけでした。次の動画が歯科処置翌日の朝ごはんを食べている動画です。歯の痛みが取れてむしろ食事がすすんでいるようです。この感想は、歯科処置をした飼主さんからもよく耳にする感想です。

 

歯根膿瘍と口腔内の腫瘤について

下の写真は歯根膿瘍にて抜歯が必要な症例の写真です。目の下が赤く炎症を起こしているのが解ります。ここは臼歯の歯根があり、歯根に膿が溜まったため、炎症を起こしています。つまり、この歯を抜いて消毒する必要があります。

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下の写真は、口腔内の腫瘤があるため、抜歯をしてから腫瘤を摘出しました。

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腫瘤を摘出した後の写真です。

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乳歯遺残による抜歯

乳歯遺残は、若齢小型の犬の乳歯、特に犬歯の乳歯が残る症例を多く見かけます。

多くは、永久歯が横から出てくることで乳歯が押出されて抜けることになりますが、
永久歯があるにも関わらず乳歯が横にあることでその間に食事の残渣等が詰まりやすくなります。

結果、永久歯の犬歯の周囲から歯周炎や歯肉炎などダメージが進行することになりますので、出来ることならば、乳歯遺残が存在するならば抜歯をお勧めします。

下の写真は犬歯の横に細い犬歯の乳歯が残っているのが解ります。

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次の写真は下顎の切歯が全て乳歯遺残となっていて、2列になっていることが解ります。割合は少ないですが、時折見られます。こうした場合にも避妊手術と一緒に乳歯を抜歯します。乳歯遺残があるのは、小型犬が主ですが柴犬などの中型犬でもごく希に認められます。

次が抜歯後の写真です。この症例は乳歯が8本残っており全て抜歯しました。

 

犬の椎間板ヘルニア手術

はじめに

犬の椎間板ヘルニアは、殆どがミニチュアダックスフントです。意外と痛がるあるいは、歩くペースが遅いなどの低グレードの症状を主訴に来院するケースは少ない様に思われます。この様な症状の場合には、内服薬にて改善を待つことが多いと思われます。しかし、「歩けない、前足だけ動いてる。」などの症状の場合、内服薬での改善は可能性が低いので、手術になります。 手術は、背骨を一部削り脱出してしまった椎間板物質を取り除く作業になります。下の写真は取り除いた椎間板物質の写真です。

椎間板ヘルニアの発症は季節は圧倒的に冬に発症することが多いです。つまり、腰を痛がる、足を引きずるなど症状がでるのは、寒さが関連していると思われます。次の症例は、元旦に手術をして3日目の状態の動画です。徐々にですが、後肢に力が入っているようです。食欲もあり元気もあります。飼主様もご心配していると思われるので、状態をご報告させて頂きます。

上の動画の症例はMRIにて椎間板物質が重度に逸脱しているのを確認してありました。次の写真はこの症例から採取した椎間板物質です。採取量が多いのが良くわかります。

次の動画は術後1週間目の状態です。撮影を始めると全く動かなくなるため解りにくいですが、両側の後足は随分としっかり力が入るようになっています。

手術は、複数の痛み止めなどを使用して全身麻酔をして行います。手術後に血液検査をして異常値がなく、覚醒もしっかりしていれば術後からご飯を与えています。次の動画は手術後に特に異常がなかったので、手術終了5時間後より食事を与えて完食した症例です。

また、上の動画は術後2日目の様子ですが、尾を振り始めていたので少し改善の傾向が認められます。日を追うごとに尾の振り方は活発になっています。術後7日目になると抜糸となります。次の写真は抜糸時の写真です。概ね、問題ありませんでした。

また、本日少しの時間ですが、起立した状態を何度か確認しました。起立して2日目ですが、昨日より回数時間共に増えています。

次の動画は上の動画の翌日ですが、1日経過するだけでかなり力強く後肢は負重して起立しているのがわかります。

先程、椎間板ヘルニアで手術となる症例は圧倒的にミニチュアダックスフンドが多いと記載しましたが、次に多いのがフレンチブルドックではないでしょうか?この症例はフレンチブルドックで5歳です。椎間板ヘルニアの内科治療を行っていましたが、経過するにつれて悪化しているとのことで来院されました。神経学的検査をしてみると左の浅部痛覚の低下してましたが、両後肢の自律運動は残っていました。結果的に内科治療で改善が認められないことから手術する事になりました。手術する症例は事前にMRI撮影をして頂いています。どの場所にどのような状態で椎間板物質が逸脱しているのか?確認する為です。次の写真はこの症例で取り除かれた椎間板物質です。かなり量が多いことがわかります。

次の動画が術後1週間の様子です。動画を撮影し始めると動きが止まってしまい解りにくいですが、随分と両側後肢に力が入っているのが解ります。

次の動画は手術2日後の状態です。手術前に見られた後躯のフラツキは解消されています。また、手術した午後から起立していました。食欲もあり、今のところ元気いっぱいであるのが動画からも伝わると思います。

6日目ですが、本日抜糸を行いました。術創は奇麗でとくに問題ありません。明日はいよいよ退院ですね。リハビリも順調で、また大人しく過ごしています。

手術翌日から少しづつリハビリを開始していきます。下の写真は、リハビリをしている状態です。リハビリは夫々の症例に合った方法と時間で行っています。

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上のリハビリをしている症例は、4歳のダックスフンドです。やはり、突然の起立困難、歩行困難、排尿困難で来院されました。手術2日目からリハビリを開始して、手術18日目から歩行可能となりました。この2日目から歩行可能までリハビリを担当してくれている看護師の細田君にはいつも感謝です。影の功労者です。お陰様で手術3か月後の動画です。

起立可能となるまでの日数について

椎間板ヘルニアの手術後、起立可能となるまでの日数は様々です。その要因となるのは手術前のグレード(重症度)やその経過日数によることが知られています。また、徐々に神経機能の回復を確認しながら起立可能となる症例もいれば、前触れもなくいきなり立ち上がる症例もいます。次の症例は手術の翌々日から起立し始めた症例です。

次の症例は手術翌日からふらつきながらも起立し始めた症例です。この動画は手術後3日目の状態です。かなり力強く足を踏ん張っているのがわかります。

次の症例はやはり翌日から起立し始めた症例です。この症例は起立不能でしたが、尾は振れる状態でした。手術ではきちんと椎間板物質が除去され、手術前のMRI検査でも脊髄神経に浮腫等の変化を認められませんでした。

起立可能となる手術後の日数は平均して18日後くらいと思われます。一方で、起立できない症例もいます。これはやはり、重症度が高く、手術まで経過時間の長い症例です。なかには手術半年後に起立可能となる犬もいることから、その様な場合には焦らずに粘り強くリハビリを繰返すことが重要であると考えています。

寒い冬には気を付けよう!

2019年は温暖化の影響からか?12月になっても例年より暖かい日が多い気がしています。椎間板ヘルニアは例年冬に多く発症する傾向にあります。なるべく暖かくして過ごされると良いと思います。ペットを一人で留守番させる機会が多い年末年始には、ちょっとした工夫が必要かもしれませんね。今年もあと僅か、この調子であれば年内ギリギリで退院できそうで良かったですね。

手術後の面会について

手術後の面会についてですが、当院では椎間板ヘルニアの手術後において退院するまでの間に面会をするケースはほとんどありません。入院のワンちゃんの様子を電話や来院でお伝えしたり、あるいは今回の症例の様にこのレポートを使って動画を見て頂いています。この症例は手術4日後の様子です。昨日来ていただいた時は、頑なに食事を取っていないことやまだ、起立していないことを伝えましたが、本日朝には下の動画の様に立ち上がっていました。また、少量でありますが、食事を食べていました。

次の症例は、手術後中々当院の食事を食べてくれない症例です。昨日、持って来て頂いたいつも食べているご飯は迷わず食べました。手術後3日目の状態です。本日、4日目には自力で出来なかった排尿を確認しました。改善傾向にあると考えています。

次の症例は手術2日後の状態です。ご飯を食べていないので、血液検査で肝臓や腎臓の数値に異常がないか?調べました。問題なかったので強制給餌をしました。嫌がらずに食べました。焦っても仕方がないので一つ一つ進めていきましょう!

相変わらず自分で食べてはくれませんが、随分と元気が出てきました。そしたら・・・いつの間にか起立しているではありませんか!6日目ですね。

次の症例も手術2日後の状態です。見た目は特に変化はありませんが、自力で排尿しているようです。食事はいつの間にか食べています。いつもの様に動画で状態を報告します!

手術後13日目で、やっと退院ですね。ご飯も昨日はよく食べていました。日を追うごとに神経機能も回復しているのがわかります。次の動画は本日の様子です。

手術後の回復傾向について

次の症例は、長時間の散歩の後に突然発症しました。飼主さんが見た時には、すでに歩行困難で前足だけで動き回る状態でした。下の動画は手術5日後ですが、順調に回復しているような子はこの症例の様に尾っぽを振り始める傾向にあります。

このミニチュアダックスフントは手術10日後から下の動画の様に起立可能となりました。まだ、若干ふらついているのが解ります。

手術18日後の様子です。何事もなかった様に行動している姿がなにより喜ばしいことです。

手術後の神経機能の回復期間について

次の症例は、ミニチュアダックスフンドの6歳メスです。初診時に歩きたがらないなどの主訴に来院されました。歩行時に一瞬両側後肢が交差するなどの症状が認められましたが、歩行は可能でした。ところが、その2日後には下の動画の様に一気に症状は進み、歩行困難や排尿困難などの症状が認めれるようになりました。

椎間板脱出部位を特定後、すぐに手術になりました。手術は無事に終わりました。しかし、下の手術6日目と19日目の動画を見ると解るように殆ど変化はないように見えます。もちろん、この時点では起立はできませんでした。

実際には神経学的な反応は、この6日目と19日目では断然19日目の方が改善が認められていました。ただ、一般的には起立不能という状態にしか見えません。徐々にですが、確実に神経学的な反応の改善を飼主さんに伝えて、自宅にてリハビリを指示しました。

次が手術50日目の動画です。飼主さんの自宅でのリハビリの成果が実を結び術後42日目くらいから徐々に歩行が可能になったとのことでした。飼主さんが、懸命なリハビリを行っていたことを想像すると、この姿を見て大変喜ばしく思いました。

この症例のように脊髄神経の機能がゆっくり回復するケースもあれば、手術2~3日後から起立可能となるケースなどがあることが解ります。これは、椎間板物質による傷害の程度やその時間に関係していると推察はされます。しかし、なかには手術後も脊髄神経の回復が認められない症例もあり、その場合には歩行や起立はできません。

 

2度目の椎間板ヘルニアの発症について

次の症例は、2度の椎間板ヘルニア手術を克服して2度歩行が可能となった症例です。椎間板は頸部から腰部まで背骨と背骨の間に存在していて、確率の問題はありますが、どの椎間板にも椎間板ヘルニアを起こす可能性があります。一度、椎間板ヘルニアの治療が終了した後も別の椎間板の脱出が起こる可能性があるわけです。

下の症例は、一度目は腰椎の椎間板ヘルニアを発症して手術後歩行可能となり、その1年後に胸椎の椎間板の脱出を起こしてやはり手術をして歩行可能となりました。1度のみならず2度も歩行困難から歩行可能になったのは素晴らしいことですが、3度目は勘弁してもらいたいと飼主さんと話してしまいました。

お陰様で下の動画は現在の状態です。

 

 

脊髄軟化症について

椎間板ヘルニア症において、深部痛覚の消失しているグレード5の症例では僅かな確率ですが、脊髄神経が進行的に溶けてしまう脊髄軟化症が発症することが報告されています。また、グレード4の症例でも報告されています。                                        通常、完全麻痺から10日以内にその徴候が明らかとなるため、椎間板ヘルニア手術終了後に現れることなります。私の経験では、手術中に脊髄神経に変化は認められません。そして、症状がでたら、脊髄軟化症の進行は早く予後不良となります。                       その症状は、やや元気・食欲の消失、極端な神経学的検査の反応低下、LMN神経障害、起立不能、呼吸不全へと進行することが知られています。                                脊髄軟化症となった場合には、有効な治療法はありません。椎間板ヘルニア手術を受けるペットさんは、起立や歩行の出来ないグレード4あるいは5の状態であることが殆んどであり、常にこの脊髄軟化症のリスクがあること認識していなければなりません。

 

 

神経障害の重症度と手術までの日数について

次の症例は、6歳のメスのダックスフンドです。この症例は、歩行不能な状態が10日間續いた後に、来院されました。来院時のグレードはⅣの状態でした。歩行不能な状態が長かったので、脊髄神経の回復能力はどうかな?と思いましたが、神経学的検査では、諦める段階ではないので手術になりました。次の動画が手術前の状態です。

下の写真が手術創と取出した椎間板物質です。体が小さい割には、多量の椎間板物質がとりだされました。

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次の動画が手術11日目の状態です。起立・歩行が出来なくなってから10日間経過した症例でしたが、脊髄神経が回復できる状態で手術をしたことが功を奏しました。改めて、経過日数も大切ですが、それ以上に脊髄神経の障害レベル(グレード)が重要であることを再認識した症例でした。

次の症例は来院日はグレード3~4でしたが、翌日には深部痛覚がなくなりグレード5となっていました。もちろん、排尿もできない状態です。この様に経過が早くグレードの高い症例は神経機能の回復も遅く、あるいは改善しない場合もあります。 この症例は手術後2日目より自力排尿できるようになりました。次の動画では手術前より元気になっているのがわかります。

 

発症年齢と高齢動物の椎間板ヘルニア手術について

当院で椎間板ヘルニアの外科手術を受けた症例の年齢は4歳から15歳までの範囲です。神経機能の回復は発症年齢はあまり関係ないように感じます。下の症例でもご紹介しますが、発症年齢が高齢だから歩行が不可能か?と質問を受けますが、神経機能の回復に著しい変化はない様に思います。あくまで私見ですが、手術後の歩行可能になる日数にあまり変化が見られないからです。次の症例も14歳ですでに白内障を患っていますが、突然の起立不能から翌日に手術をして14日後には起立が可能となりました。

 

次の症例もすでに15歳になる年齢です。下の動画の様に2日前まで歩行可能であり椎間板ヘルニアの内科治療をしていました。

しかし、その2日後には次の動画の様に歩行困難をしめしました。椎間板ヘルニアが一気に進行したと考えられます。非常に残念ですが、この進行を止める方法はありません。手術になる症例はいづれも一気に悪化する症例ばかりです。

次の動画が手術2か月後の状態です。ゆっくりですが、歩行可能になりました。今では楽しく過ごしています。

 

犬の前肢断脚手術

犬の断脚手術は足に悪性腫瘍が発生した際に原発巣を除去することで転移を予防する、あるいは生活の質を高める目的で行います。

犬では、大型犬に発生する骨肉腫を切除する目的で断脚手術することが知られています。下の写真は、右前肢橈骨に発生した骨肉腫のために断脚したラブラドルレトリバーです。

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手術後に抗癌治療を行い、手術1年後まで生活することができました。

 

犬の体表腫瘤切除手術

体表腫瘤

体表腫瘤は色々な部位に様々な大きさで形成されます。若い個体よりも老いた個体の方が発生率は高いことが知られています。また、切除した組織を病理組織診断することで良性の腫瘤か?悪性の腫瘤か?判別することになります。 基本的に手術前は血液検査と胸部レントゲン撮影を行っております。

摘出前の針生検と摘出後の組織診断

一般的に手術前に腫瘤に針を刺して、どんな細胞で腫瘤が構成されているのか?針生検を行います。針生検後、標本作成して顕微鏡で細胞を確認します。しかし、細胞間の結合が強い場合や、腫瘤の産生物が多いなどの理由で診断に有効な細胞を採取できないこともあります。 ただし、一般的に腫瘤摘出した方が良いか?を判断するには非常に有効な検査です。

そして、この作成した標本を病理診断医に確認してもらいます。 これはより正確に診断するためです。しかし、多くの標本に診断がつけられ報告されますが、中には「組織摘出してみないと正確な診断はできません。」と報告されることもあります。その場合は、手術して摘出した組織を病理組織診断することになります。

次の症例は、上記の通り針生検を行いましたが、腫瘤の産生物のため判断できませんでした。そのため腫瘤を摘出後、組織診断を依頼した症例です。この症例は、9歳雄の雑種です。下の写真は手術前の状態です。剃毛した領域の中央に腫瘤を認めます。

次の動画は手術1週間後の抜糸終了時の動画です。特に変わりはありませんでした。

組織診断は約10日後に結果が戻ってきました。多くの検体が10~14日後に戻ってきます。そして、組織診断の良いところは、針生検標本では解らなかった検体も診断ができることがほとんどです。また、腫瘤組織周辺の状況など多くの情報が得られます。

小さい腫瘤と大きな腫瘤

小さい腫瘤は大丈夫? 大きな腫瘤は悪性ですか?と質問を受けることがしばしばあります。「一概には言えませんので針生検をしてみては?」とお答えさせて頂いてます。針生検後、作成した標本を見て「切除したほうが良いのか?」「様子を見た方が良いのか?」判断しています。

「先生、結構大きいのに様子を見ていて良いのですか?」あるいは「こんなに小さいのに、本当に切除した方が良いのですか?」 この様な場合は病理診断を依頼しています。確かに、切除の判断は腫瘤の大きさも一因ですが、針生検で採取された細胞をみて判断することが殆んどです。 しかし、どんどん大きくなってきたなど場合は、生活の質にかかわることや細胞分裂が盛んなことを示しているという理由で切除となるケースも多いです。

次の症例は非常に小さな腫瘤ですが、すぐに切除したケースです。症例は6歳、雄のフレンチブルドックです。最初、どこに腫瘤があるのか?解りませんでした。とても小さいが、針生検することになりました。標本作成後、すぐ切除した方がよいと判断しましたが、念のため病理検査に依頼することにしました。本当に麻酔して切除した方が良いのか?確かめるためです。病理診断後も切除した方が良いことが解りました。

病理診断から少し大きめの切除が望まれることが解りました。次の写真が切除後の写真です。

腫瘤の経時的組織変化について

次の症例は暫く、体表にリンパ液の貯留がゴルフボール大存在するだけでありました。リンパ液の軽度貯留のみでその沈査も病理検査を依頼した結果特に変化がありませんでした。あまり変化がないので安心していましたが、暫くして経過観察のために来院した時には、腫瘤はすでにソフトボール大より大きくなり、貯留液も血液を多量に含んだ性状に変化していました。そのためすぐに手術になりました。下の動画は腫瘤切除前の状態です。腫瘤内は血液を含む腫瘤内側は腫瘍細胞が複雑に内張りする構造になっていることがエコー検査でわかりました。ただ、どの時点でその様な構造変化を示し始めたのか?は解りませんでした。

つぎの動画は手術後の状態です。あまり手術跡もわかりませんが、切除前より活動的になったと報告がありました。今回の様に手術前の病理検査では安全な結果だとしても、ごく稀に腫瘤本来の病変が突然明瞭になることがあるようです。「変だな?」と思ったら動物病院の先生に確認すると良いでしょう。

高齢動物の腫瘤切除

この症例は、14歳の雑種の雄犬です。「気付いたら後足が赤かった。」という主訴で来院されました。よく見るとウズラの卵より若干大きいくらいの腫瘤があり、その表面が自壊して出血しています。前述の通り血液検査後に手術になりました。写真は手術前の患部です。

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これが手術終了後の写真です。少し大きめに腫瘤を摘出するので、傷口もこれくらいの大きさになります。

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高齢による影響だと思われますが、麻酔の覚醒がやや遅く心配もしましたが、手術当日から食欲もあり翌日退院しました。手術1時間後の様子です。

次の写真が抜糸直後の患部です。お陰様でエリザベスカラーを外して帰宅することができました。抜糸時

肛門周囲腺腫

犬の肛門周囲腺腫瘤は、精巣ホルモンが誘発して発生する肛門部に形成される腫瘍です。そのため、シニア世代の去勢していない犬に多く発生します。下の症例も、11歳の未去勢のミニチュアダックスフントです。以前からここに腫瘤があったのは気づいていましたが、色々な都合で手術はしていませんでした。ところが、最近ではこの部分から出血するとのことで摘出することになりました。

下の写真では、肛門の左下に腫瘤を認めます。

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手術は、最初に去勢手術を行ったあとに肛門周囲腺腫の摘出手術をおこないます。次の写真は切除後の写真です。切除後も普通に排便できます。念のために、当日は点滴を続けて翌日退院しました。

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犬の異物摂取による腸閉塞

犬の異物摂取は、様々あります。異物摂取しても排出してしまえば問題ありませんが、小腸で異物が閉塞を起こした時に症状が現れます。

私の臨床経験では、石や野菜や果物の丸のみ、生理用品、紐、焼き鳥の串、ハンドタオル、ゴムの塊、靴下などです。検査はエコー検査や造影検査をおこないます。

下の写真はタコ糸を食べて腸閉塞をおこした写真です。タコ糸は、胃から空腸にありました。

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完全な腸閉塞をおこすとその周囲の血液循環が悪くなり、閉塞部の腸組織は腐ってしまうこともあります。このため、明らかな場合には手術が必要になります。手術終了後、徐々に食事を再開させます。

 

実際の症例を見てみましょう。症例は5歳メスのトイプードルです。主訴は、「痙攣してフラフラしている。嘔吐もした。」です。この主訴だけ聞くと神経疾患かな?と推察しましたが、いくつか検査をすると、十二指腸の先で完全閉塞していることが解りました。そのため、点滴などで状態を回復した後に手術することになりました。

この症例のように完全閉塞を起こしている場合の方が、上の写真の様な不完全閉塞よりも重篤であることが知られています。

実際に開腹してみると、十二指腸の入り口付近でスーパーボールを確認しました。下が、取出したスーパーボールの写真です。閉塞していた部位は、胆汁や膵臓の消化酵素の出口に近く、膵臓の一部が硬結しており、今後に膵炎などを起こさないか?注意が必要です。

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手術の翌日にはまだ、元気がありませんでしたが、徐々にトイプードルの活発性が戻りました。下の動画は手術2日目です。

次の動画が、手術5日後です。徐々にご飯の量を増やしています。

犬の骨折手術

犬の骨折は、小型犬を踏んでしまった、あるいは抱っこして落下してしまったなどの原因が殆んどです。
基本的に必要な検査は身体検査とレントゲン検査です。下の写真は手術前の写真です。右側の手首のところが、折れているのが解ります。この症例も落下が原因でした。

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次の写真は、手術後の写真です。プレートにて固定されています。この症例は小型犬で手首の骨が小さく、骨折部位が遠位端であったのでプレートを作成してあります。

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この様に骨折の手術はプレートなどを中心として骨を固定して、骨がしっかりくっつくのを待つ治療になります。当院では3週間の入院になります。入院中は安静に過ごし、基本的にはバンテージ交換や投薬などを行います。入院中の様子を撮った動画です。

下の動画が、術後38日目の様子です。すっかりギプスを外しても問題なく足を負重しているのが解ります。まだ、足を浮かしているのが解りますが、徐々に足の接地時間は長くなります。

退院までの日数について

次の症例は、生後4ヵ月の子犬です。この症例は「暴れていたら骨折してしまった。」との主訴で来院されました。定法通りにプレートとボルトで整復しました。つぎの動画は手術後9日目の状態です。遊びたい盛りですね。

先ほどの症例に比べて、体がしっかりしていませんのでエリザベスカラーやステンレスのギプスも装着していません。一般的に退院するまで3週間前後となります。

後肢の骨折

後足の大腿骨遠位端の骨折です。次の症例は自転車に衝突された後から急に左後肢を持上げる様になったとの主訴で来院されました。触診すると明らかに大腿骨遠位端がグラグラとしていました。レントゲン撮影をすると、大腿骨遠位端において関節内で骨折しているように見えました。(レントゲン写真は準備中)次の症例の様に手術前にプレートを数枚用意しましたが、実際に骨折部を確認すると骨折部から遠位部(膝関節)が短く不安定のため、プレート固定を断念しました。結局、ワイヤーを骨折部に3本入れて何とか骨折部の安定が得られました。(写真は準備中)次の写真は術後8日目に抜糸をした際の写真です。

無事に抜糸も終わりました。抱っこをしていると大人しいのですが。次の動画は術後9日目の状態です。抜糸まではエリザベスカラーは装着しませんでしたが、その後はバンテージを外すようになったので、エリザベスカラーを装着しています。

次の動画が術後16日目の状態です。ケージ内で過ごすことで自然とリハビリになっています。

次の症例も抱っこをしていたが、落下したことが原因で骨折した症例です。骨折部位は右後肢・大腿骨遠位端です。この骨折部位は膝関節を開ける必要があることと、大腿骨の大きさや形状に合わせる必要があります。手術前の写真と骨プレートで整復した手術後の写真を載せます。

手術5日目の術創です。

次の動画は手術7日目の状態です。患肢は包帯で補助されています。しっかり足を着けていますね。前肢と異なり後肢は前の症例の様にギプスなどで固定することは殆どありません。包帯はしばらく付けたままですが、早く退院できると良いですね。

犬の胃捻転手術

犬の胃捻転は、大型犬に多い疾病ですが、小型犬でも稀に見られます。

病態は胃が全体に捻じれることで、嘔吐も下すことできずに胃の中にガスが

充満した状態です。下の写真は、犬の腹部を横向きで撮影した写真です。大きくなった胃の

中が、ガスで充満しているのがわかります。

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当院では、胃捻転が診断された際にはすぐに手術になります。この疾患は術中、術後も

集中管理が必要です。死亡率も高い疾病なので注意が必要です。

手術は、胃の捻じれを整復した後に胃を固定して閉腹します。退院は手術5日後前後と

なります。

 

犬の股関節脱臼

犬の股関節脱臼は、交通事故などの外的圧力により脱臼することが多いのですが、最近では、ただじゃれていて、あるいは抱っこして落としてといった原因が多くなってきました。後者の場合は、多くが小型犬種です。当院では、特にトイプードルや柴犬で多いように見られます。脱臼した犬は、痛がり後足を挙げたままの状態となり、病院に来院されます。当院での治療は手術になります。手術では股関節が再脱臼しないように固定します。

下の写真は手術前の写真です。右側の大腿骨の骨頭と骨盤側の寛骨臼に注目すると(写真左側)、股関節が外れているのが解ります。

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次の写真が手術をして股関節が外れないように固定した手術後の写真です。

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下の動画は手術3週間後の歩行状態です。