骨プレート除去手術

骨プレート除去手術は、骨折を整復するため使用したプレートを取除く手術です。骨プレートを取除く目的は色々ありますが、寒い時期には痛みの原因となったり、異物反応やプレートの刺激により炎症を起こす原因となったり、成長過程のペットでは正常な骨の成長を妨げる原因なったりするなどの理由が挙げられます。

この症例は手術後は安定していましたが、プレートを付けた患肢の皮膚表面を手術1カ月後から気にし始めました。結果、皮膚の表面は赤く爛れることが多くなりましたのでプレートを除去することにしました。骨折整復手術から1カ月後ですが、若齢のため骨折の治癒も早く、安定していました。

プレート装着時のレントゲン写真です。

次の写真がプレート除去時の写真です。

次の動画はプレート除去して2日後の状態です。食欲も出始めました。お陰様で肢も問題なさそうですね。しっかりと負重しています。

次の動画がプレート除去1週間後の状態です。あまり気にしているようには見えませんね。プレートを除去する前より元気も食欲もあるように見えます。

 

下の症例は、イタリアン・グレート・ハウンドの7歳の症例です。1年前に右側橈骨遠位端の骨折整復手術を行い日常を過ごしていましたが、1週間前から骨折部位をしきりに舐めるとの主訴で来院されました。下の写真の様に皮膚は脱毛して、一部で菲薄化して漿液が排出していました。同部位のレントゲン変化を認めませんでした。歩行も問題ありませんでした。M1850001

しかし、骨プレートが刺激となり同部位を気にしていることから、プレートを除去することで症状は治まると考えました。デメリットは、再骨折する可能性もありますので、プレート除去後は安静に過ごすように伝えて手術になりました。次の写真がプレートを除去前後のレントゲン写真です。

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次の写真が、手術2週間後の写真です。抜糸も終了して手術前に認めた皮膚症状がないのが解ります。もちろん、患部を舐めることも無くなりました。

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次の動画が同じく手術2週間後の状態です。この症例は、術後すぐに歩行し始めましたが、一週間後に少し跛行(びっこ)を示しました。その後また、徐々に跛行は順調に歩行しているのがわかります。

ウサギの乳腺腫瘍摘出手術

飼主の皆様、こんにちは。今日はウサギの乳腺腫瘍です。これは、乳を分泌する乳腺細胞が腫瘍化したものです。やはり、高齢のメスのウサギに起こる疾患です。乳腺腫瘍が大きくなっていれば飼主さんが気付き、小さければ獣医が気付くのが一般的ではないでしょうか?

今回の症例も歯科処置の際に身体検査をすることで、小さい乳腺腫瘍に気付くことができました。もちろん、一般健康状態に異常はありませんでしたが、早めに切除することになりました。症例は5歳のメスです。写真は切除前の乳腺組織です。他の乳腺に比較して大きく盛り上がっているのが解ります。

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次が乳腺腫瘍を切除した後の写真です。

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手術終了1時間後の動画です。状態が落着いていたので当日帰宅することになりました。

犬・停留精巣(陰睾)の去勢手術

今回は、陰嚢内に精巣が下降していない停留精巣の去勢手術です。勿論、雄犬に限ることのお話しです。精巣が、出生後にお腹から陰嚢内に下降せずにお腹の中に留まってしまったり、お腹から出たが陰嚢まで行かずに途中で止まってしまった状態の精巣を停留精巣(陰睾)と呼びます。それが、両方の精巣に起こったり、片方の精巣に起こったりします。 精巣が陰嚢内に下りずに、体内に停留して高温条件下では精巣腫瘍の発生率が高くなることが知られています。

今回の症例は、6か月の柴犬です。陰嚢内には、1つしか精巣を確認できません。

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停留精巣はペニスの横に存在していました。次の写真は停留精巣を確認しているところで、ペニスの横にありました。このため、切開部位は下の写真の様に2か所になりました。

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手術後は、6日間の投薬と抜糸までのエリザベスカラー着用をお願いして帰宅しました。1週間後に抜糸になります。

 

 

犬の精巣腫瘍摘出手術

飼主のみなさま、こんにちは。今回は精巣腫瘍摘出です。一般的には去勢手術ですが、正常な精巣ではありません。つまり、取除いた精巣を病理組織診断して腫瘍なのか?炎症なのか?他に変化が起きているのか?はっきりします。今回は結果が確認されているので精巣腫瘍とさせて頂いております。

今回の症例は、11歳、雄の柴犬です。フィラリア予防シーズンということで来院した時に、身体検査を同時に行うわけですが、この際に左右の精巣の大きさが異なることに気付きました。総合的に精巣腫瘍の可能性が高いため手術することになりました。写真は、精巣を摘出する前の陰嚢の写真です。精巣は左右1個づつありますが、画面右側の精巣が大きくなっているのが解ります。

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次の写真が、摘出した精巣です。画面右側の精巣の一部(棒で示している部位)が、暗赤色を呈して血管構造が不明瞭になっているのがわかります。どのような変化が起こっているのか?病理組織検査をすることになります。犬の精巣腫瘍は主にセルトリ細胞腫 間質細胞腫(ライディッヒ)精上皮腫の3種類の腫瘍が殆どです。その発生率は高齢になるにつれ高くなることが知られています。診断時の平均年齢は9-11歳ですが、停留精巣(陰睾)の腫瘍では、より若い傾向にあることが知られています。

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11歳でしたが、意外と手術後は元気があり、次の動画は術後5時間後の状態です。念のため、翌日退院することになりました。化膿止めを投薬して終了となりました。

今回、改めて身体検査の重要性を再認識しました。フィラリアや混合ワクチン接種などは、特に症状がなければ、何気ない理由で動物病院に行きますが、そこで普段の何気ない日頃の疑問を質問したり、身体検査をすることで早めに病気に気付き治療を開始できる機会になっています。本当に基本の身体検査が重要です。

 

 

次の症例は、9歳のコーギーの雄です。主訴は、血尿と睾丸を痛がり、舐めているという主訴でした。身体検査にて、睾丸を触診すると精巣(睾丸)の大きさが異なり、その表面が凸凹になっているのが解りました。少し触れるだけで、やはり異様に痛みがあるようでした。総合的に、精巣腫瘍の可能性が高いために両側共に精巣を切除することになりました。

手術前には胸部のレントゲン写真と血液検査、尿検査を行いました。

下の写真は、手術前の写真です。表層の一部が傷がついているのが解ります。この部分を自分で気にして噛んでしまったと思われます。この傷から出血して尿と混ざり、血尿に見えたと推察されました。

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次の写真が、切除した精巣です。表面が全体的に凸凹となっているのが解ります。M2190013

次が手術後の写真です。特別なことはありませんが、抜糸の必要はありません。M2190007

次の動画は手術終了後の動画です。非常に元気が良いですね。

しかし、この症例は、手術前の血液検査では異常のなかった腎臓の数値が、手術後の血液検査では正常値から逸脱して上昇していました。つまり、麻酔により慢性腎不全が顕在化した状態となりました。その後、静脈点滴を行い症状と血液検査の数値は落着き、翌日に退院されました。

今回も手術前の検査が、非常に重要であると再認識させられました。

次の症例は数年前から精巣腫瘍であることは認識していましたが、年齢や他の疾患などもあり手術に踏み切れませんでした。ただ調子が良く、腫瘍の巨大化のため、歩行がしずらくなったため手術を希望するに至りました。次の写真が手術前の状態です。確かに重そうで歩行しにくそうですね。

2~3年間の間に優に5倍の大きさになっており、その表面は触診にて凹凸が触れます。さらに水腫を伴っていたので大きさや重さが増しているのが推察されました。実際に切除した精巣です。右の正常な大きさの精巣に比べてかなり大きく、表面が凸凹しているのがわかりますね。

定法通り、血液検査などの術前検査を行い手術することになりました。

 

皮膚疾患の検査・治療切除

この症例はパピヨンの避妊メス、11歳です。少し前より体全体に痒みを示して、夜も眠れていないなどの症状で来院されました。当初、内科治療で体全体の痒みは落着きましたが、尾根部だけは内科治療では良くなりませんでした。下の写真の様に潰瘍が認められます。M1780003

そこで、飼主さんと相談して外科的に同部位を全体的に切除することになりました。目的は病変部の組織を取除くこと、同部位の病理組織診断をすること、培養検査を行うことです。ただし、デメリットもあります。最大のデメリットは、他の体表の部位と異なり尾の皮膚は余裕がないため、切除部位を大きく空けたまま終了することになります。つまり、傷が塞がるまで時間と管理が必要になります。下の写真は、手術終了直後の患部です。

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次の写真が手術17日後の写真です。徐々にですが、傷口が小さくなっているのがわかります。手術17日後

次の動画が手術28日後の状態です。殆ど傷口は塞がっています、瘢痕部の脱毛は認めますが問題ありません。また、当初、患部を気にしている様子もないので治療を終了しました。

次の写真は手術7か月後の状態です。全く分からない状態です。しかし、皮膚をかき分けてみると瘢痕形成部位は確認されます。現時点では、全く痒みもありません。M2130002

犬の瞬膜腺脱出(チェリーアイ)の手術

犬の瞬膜腺の脱出は、その見た目からチェリーアイと呼ばれています。瞬膜とは、目の内側に隠れている薄い膜です。瞬膜腺は、その膜の根元にある分泌腺で、通常では外から認められません。つまり、チェリーアイは、この瞬膜腺が脱出している状態です。

下の症例は、生後4ヵ月のメスのイングリッシュ・ブルドックです。犬の左目の内側が赤く膨らんでいるのがわかります。これが脱出している瞬膜腺です。いわゆる、チェリーアイです。初診時Ⅱ

この症例は、すぐに手術をすることになりました。手術では、瞬膜腺が外に飛び出さないようにする作業となります。手術直後では、瞬膜腺の脱出は認められないものの、瞬膜が外に押し出されていました。下の写真は手術1週間後の写真です。手術1週間後

次の写真が、手術より1年半後の写真です。殆ど左右の違いがないのが解ります。しかし、時折脱出してしまうことがあるそうで、その時は容易に戻ると報告を受けました。日常生活に支障がない程度なので問題ありませんが、より研鑽が必要であると思いました。

チェリーアイ・手術1年半後

 

 

猫の精巣捻転の手術

猫の精巣捻転も珍しい病気だと思われます。元気や食欲が無くなるなどの症状はありません。ただ、捻転している側の精巣が血液のうっ血により正常側の精巣よりも腫大している点が外貌よりわかる変化でした。

これが正常の精巣の写真です。通常の精巣は、左右均等で肌色から淡いピンク色を呈しています。

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次が捻転した精巣の写真です。写真では途中から捻じれているの解ります。捻じれている部分から暗赤色を呈していてます。捻転後の経過時間が長いものは切除するのが良いと思われます。捻転経過が長い症例では、血液のうっ滞により解剖構造が正常と比較して解りにくいので注意が必要です。

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手術後は、特に感染が起きていなければ去勢手術と変わりません。

犬の会陰ヘルニア手術

はじめに

今回は、犬の会陰ヘルニア手術です。                            先ずは「会陰」?ですが、会陰とは、大まかにはお尻周囲の部分を指します。会陰ヘルニアは、この部分において直腸(大腸)を囲う筋肉が薄く、筋肉間の結合が離れてしまうため主に直腸が筋肉の間から飛出してしまう病気です。 原因は精巣から放出するホルモンが、会陰部周囲の筋肉に作用していることが知られていますので、未去勢の雄犬に多く認めます。直腸が筋肉の間から飛出して悪いの?と思う飼主さんもいると思いますが、この状態になるとスムーズに排便が出来なくなります。飛出した部分に便が溜ってしまい、さらに周囲の筋肉に便を送りだす力がありません。

ヘルニア孔より脱出する臓器について

上述した様に会陰ヘルニアは筋肉の萎縮や劣化により発生し、脱出する臓器は直腸が最も多いのですが、稀に膀胱や小腸なども脱出することがあります。

分類について

分類ですが、これを決めるのはどの筋肉と筋肉の間から臓器が逸脱したか?により決まります。次の症例では、外肛門括約筋と内閉鎖筋の間から直腸が脱出していました。次の写真は手術直後の写真ですが、切開線が直腸の真下を越えているのが解かります。

内閉鎖筋は下の方に位置しているため、切開線が肛門の脇から下の方に位置しています。次は手術後の退院前の動画です。特に変わりないのですが、割と元気が良いのが解かります。

次の動画は手術10日後の抜糸時の状態です。意外と発毛が早く傷口も分かりにくくなり奇麗になっています。エリザベスカラーも外れて、排便もスムーズに出るようになったとのことです。

会陰ヘルニア発症から経過が長い症例と合併症について

下の写真は、9歳、未去勢の雄のダックスフンドです。左側の会陰ヘルニアでお尻の左側が盛上がっていますね。この盛り上がりは、溜まってしまった便で、触ると固くなっています。やはり、この症例も排便できず、食欲がないという主訴で来院しました。

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手術は全身麻酔にて、精巣を摘出した後(去勢)に、希薄した筋肉同士をくっつける作業となります。この症例も無事に手術は終わりましたが、手術直後に肛門から脱腸(直腸脱:肛門よりの直腸粘膜の脱出)を起こしましたが、何とか当日までに直腸脱は改善しました。

手術9日後に抜糸の時の写真です。手術前に比べて、左側と右側に違いは認められません。勿論、その後の直腸脱も起きていません。

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現在では、排便がスムーズになり、以前にもまして食欲が出てきたそうです。ご飯がおいしく食べられることは幸せですね。

 

会陰ヘルニアの発症から経過が短い症例について

症例は、イタリアン・グレート・ハウンドの未去勢、8歳です。次の動画は、お尻の膨らみを確認してから1週間経過した状態です。この段階では、膨らみは確認できますが、この部分は柔らかく便は溜まっていません。排便はし難いものの、食欲もあります。

手術は去勢手術後、会陰ヘルニアの手術を行いました。経過時間が短い段階で来院されたので、会陰部の筋肉が解りやすく手術を終えることが出来ました。また、直腸脱を起こすこともありませんでした。次の動画が手術翌日の状態です。

次の動画が抜糸時の状態です。食欲もあり、排便もスムーズに出るようになったと話されていました。

 

発症から経過が長くても排便の管理がされていた症例について

次の症例は8歳の去勢済のダックスフンドです。この症例は、発症から半年が経過していましたが、その間内服薬にて会陰ヘルニア部に便が溜まらない様に管理されていました。そのため、次の動画でも他の症例同様に会陰ヘルニア領域が膨らんではいるものの、柔らかく便は溜まっていません。

手術部位を切開してみると発症後の経過が長いから手術がし難いなどはありませんでした。しっかり内科管理されていたためです。強いて言えば、手術後に少しだけ直腸脱を認めましたが、ほとんど問題ありませんでした。元気もあることから翌日退院になりました。

犬の子宮捻転の手術

子宮捻転を初めて診察しました。手術前は、子宮蓄膿症と同じような検査結果を示します。エコー検査やレントゲン検査、血液検査などの結果は子宮蓄膿症とほぼ同じであることがわかりました。

子宮蓄膿症との違いをあげるならば、症状だと思われます。                    それは、殆ど外陰部からの排膿を示さない点と排膿というよりは血液あるいは血様分泌物を排出する点でした。下の写真は、捻転子宮を腹腔外へ出した写真ですが、子宮の根元より何重にも捻じれているのが解ります。さらに、捻じれた子宮の大部分は、多量の血液凝固塊を容れて暗赤色に腫大していました。症状として少量の血様分泌物を出していたのは、この部分から漏れ出ていたと推察されました。

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下の写真は手術直後です。この症例は、捻転子宮より腹膜炎を併発していたにもかかわらず、予測に反して術後の覚醒などはスムーズでした。この点も子宮蓄膿症との相違点かもしれません。

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手術3日目に退院しましたが、食欲と元気は徐々に回復しました。

 

ウサギの骨折手術

今回は、ウサギの骨折手術です。骨折部位は、ひざ下の下腿骨(脛骨)と腓骨でした。このウサギの年齢は5か月齢です。手術前も食欲や元気はありました。ただ、骨折部位をバリカンで確認してみると割れた骨の一部が皮膚の表面から突き出そうでしたので急きょ、手術になりました。

下の写真は、骨折部の写真です。

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次が手術前の動画です。骨折している足(バリカンで毛を刈っている足)の先がブラブラしているのが解ります。実際は、足は腫れていて内出血のため暗赤色になっています。

次に骨折手術後の写真です。手術は骨折受傷4日後におこないました。骨折部周囲には、血液凝固塊が目立ちました。手術は、太めのピンを順行性に内側膝下から骨折部へ入れました。骨折片は4個くらいあり、大きな骨片をワイヤーで固定しました。M1460003

手術翌日からは、骨が安定したため足の不安定な状態は改善されました。次の動画は、手術後8日目の様子です。すっかり、足に負重することができ、立ち上がるまでに改善しています。ただし、この時点では若干の患肢の負重の低下が認められます。

手術18日後の動画です。骨折した足の腫れや内出血などはなく、肢をしっかり負重しています。手術3週間後に退院することになりました。