ウサギの膿瘍は、様々な原因で体の表面にできることが知られています。
原因が不明瞭な膿瘍は治療が難しいこともあります。ただ、基本的な治療は外科的に膿瘍をとり除くことが必要であると認識しています。
下の写真は目の下にできた膿瘍です。膿瘍を取り除いた後も、皮膚を開けたままにしてあります。処置終了直後の写真です。
手術後は毎日消毒を行います。
犬の乳腺は10個くらいありますが、その乳腺組織が腫瘍性増殖した腫瘤を乳腺腫瘍と呼びます。犬の乳腺腫瘍は良性もあれば悪性のこともあります。切除した組織を病理診断することで正確な診 断が得られます。 治療は、外科切除が行われます。また、乳腺腫瘍の発生率を抑えるには2~3回の発情までに避妊手術をすることが必要です。基本的には手術翌日に退院となります。自宅では通院と内服の投薬が必要になります。
次の症例はやはり高齢犬で未避妊の雌犬です。左側の乳腺全切除と右最後乳腺を切除してあります。最後乳腺の近くには、残鼠径リンパ節もありますので一緒に切除します。次の動画は抜糸時の動画です。
次の症例も13歳くらいの雌犬です。左側の第2乳腺から最後乳腺まで切除してあります。やはり、抜糸の時の動画です。抜糸後には、エリザベスカラーが外れます。
この症例は、5歳の避妊していない雌犬です。やはり、胸部・前面に親指くらいの腫瘤があるために来院されました。腫瘤の発生部位と問診などにより乳腺腫瘍を疑い、外科切除して病理診断することになりました。次の写真は、腫瘤切除に傷口を保護するためにテープを貼った状態です。
次は抜糸直前の傷口の状態と、抜糸終了後にエリザベスカラーを外して飼主さんにお返した時の様子です。
次の写真は乳腺部にできた骨肉腫です。乳腺腫瘍なので乳腺腫や乳腺癌という診断が一般的ですが、病理診断では骨肉腫でした。このようなこともありますので病理診断は予後を見るうえでも重要です。
猫の抜歯とスケーリングは、基本的には歯が痛くて食べれない、あるいは歯根膿瘍の時に行なうのが殆どです。処置は、最初にスケーリング処置を行い、歯そのものを評価します。痛みの原因となっている歯や近い将来に抜歯や痛みの原因となるような歯は抜歯をします。歯科処置は、予約していただいた日の午前中に来院していただき、当日あるいは翌日に帰宅します。
この症例は6歳の雄猫で、口腔内からの出血という主訴で来院されました。強い痛みはないのですが、口腔内を観察すると下の写真の様に、歯肉が浮き上がり歯肉が暗赤色に変色して強い歯周炎が残存している臼歯周囲に認められました。
当院では、歯科処置は全身麻酔下にておこないます。この猫は大人しかったので、血液検査と胸部レントゲン検査を行った後に全身麻酔をかけて歯科処置を行いました。口腔全体を確認した後に、超音波スケーラーにて歯に付着した汚れを取り除きます。この症例では、切歯と犬歯は非常に状態が良いにもかかわらず、臼歯の状態は歯根がすぐに確認できる歯、動揺している歯、既に歯が割れて一部が残っている歯など悪いものばかりでした。よって抜歯することになりました。次の写真が抜歯後です。
次の動画が歯科処置2時間後の状態です。麻酔覚醒直後は、少し左右に動揺していましたが、暫くすると動画の様に普通ななっています。落着いていましたので、当日退院しました。
次に猫の歯肉口内炎による抜歯治療のお話です。猫の歯肉口内炎の原因は不明であります。ただし、ウイルスや細菌感染の関与や過剰な免疫反応などが関与している可能性があり、色々な要素により構成されて発症しています。このため、治療法が確立されておらず、内科治療では治りにくい病気です。
症状として、疼痛、流延、嚥下困難、口臭、食欲低下、被毛粗剛、体重減少などを示します。内科治療では抗菌薬やステロイド、インターフェロン、鎮痛剤や免疫抑制剤などが行われています。一方、外科治療では部分的抜歯、全臼歯抜歯、全顎抜歯などが行われています。
今回の症例は、尾側粘膜には炎症は殆ど起こしていませんでしたので、比較的良好な予後を示すタイプでした。内科治療で抗菌剤を投与している時は食欲もあり良いのですが、休薬して暫くすると流延や食欲低下、痛み、体重低下を繰返していました。そのため、前臼歯抜歯を行いました。次の写真がその際に抜歯した歯です。
その後は、抗菌薬を投薬しなくても症状を示すことがなくなりました。体重もほぼ2倍に増加しました。同じネコとは思えないですね。
膝蓋骨内方脱臼は、文字通り膝の膝蓋骨が関節から膝の内側へ脱臼してしまった状態です。本来、この膝蓋骨は、上下運動の動きにより膝を動かすことができますが、脱臼状態になると本来の動きは出来ないため、後肢を持上げた状態になります。
この脱臼の状態には進行状態によりグレードがありますが、脱臼が改善されない場合には手術をお勧めします。手術は、関節の溝を削り、筋肉の緊張を緩和するものが基本となります。溝を深くすることで膝蓋骨の脱臼を防ぐことになります。
次の症例は12歳のトイプードルです。右後肢を持続的に挙上しているため来院しました。この時は膝蓋骨内包脱臼で膝蓋骨を滑車溝に整復するも直ぐに脱臼してしまう状態でした。さらに、レントゲン撮影をすると、十字靭帯も断裂していることが解りました。そのため、膝蓋骨内包脱臼の手術と同時に十字靭帯断裂の手術も行った症例です。次の動画は術後凡そ3週間後の動画です。少し違和感はありそうですが、歩行しています。
では、実際の症例をみてみましょう。症例は、8歳のオスのマルチーズです。主訴は「階段など段差のあるところを登らなくなった。」とのことです。身体検査では、左後肢の十字靭帯断裂とグレード4の膝蓋骨内方脱臼です。つまり、膝蓋骨は常に滑車溝から外れている状態です。下の動画は、手術前の状態です。一見、何でもない様にみえますが、自宅では主訴のような症状があります。
手術終了後は3週間程度の入院になります。入院時にはバンテージ交換や鎮痛や感染症対策が重要となります。また、再脱臼なども起こしていないか?確認しています。手術翌日は患肢を挙上した状態ですが、徐々に負重するようになります。下の動画が手術10日頃の動画です。
次の動画が手術およそ1か月後の動画です。非常に順調に回復しています。以前よりも歩行がスムーズになって生活しているとご報告を受けました。治療が終了しました。
猫の骨折は、犬よりも稀ですが、時折認められます。多くは交通事故などの原因が多いのではないでしょうか?骨折部位はプレートとボルトあるいは、ピンにて固定をします。手術後は安静にして骨が癒合するのを待ちます。この時、猫では基本的にはギプスなどで保護しません。
次は実際の症例を見てみましょう。骨折の原因は布団の中にいる猫さんを気付かず踏んでしまったことが原因です。来院時には触診にてすぐに骨折しているのが解りました。その時のレントゲン写真です。骨折部位は右大腿骨遠位端で横骨折しているのが解ります。
次の動画は翌日の状態です。やはり元気はありません。患肢を下にしています。
来院から3日目に手術を行いました。下の写真が手術時にプレートとボルトで固定している時の写真です。下に3つボルトを入れる必要があったので、膝の関節包も切開してあります。比較的スムーズに手術は終わりました。
次の動画が手術終了1時間後の動画です。やはりぐったりしていますね。でも、これはぐったりしているのではなく、落着いている状態です。鎮痛薬の効果がしっかり出ていると思われます。
次の動画が手術翌日の動画です。ご飯を出すと勢いよく食べ始めました。そして、手術した右後足も地面につけ始めていますね。先ほどの動画に比べてすごく元気が出ていることがわかります。個人的にはもう少し大人しくしていてほしいのですが・・・。退院がはやくなりそうですね。1週間もすると抜糸をしますので、しばしお待ちください。
手術後5日目に本日抜糸をしました。非常に元気にしております。
早いもので手術後1週間が経過しました。順調に過ごしております。
今回の症例は、興奮して手すりから落下したことが原因で下腿骨を骨折してしまいました。骨折時の写真です。
下腿骨は、その内側面は豊富な筋肉で覆われていないため、骨折部位を把握しやすい特徴があります。また、手術では内側よりアプローチして写真の様に内側面にプレートを固定します。
次の動画は手術2日後の状態です。すでに後肢を着地しています。食欲も出てきて元気に過ごしていることがわかります。早く退院できるといいですね。
手術6日目に抜糸しました。傷口に問題はなく、エリザベスカラーを外しました。
成長板骨折のためピンで固定したレントゲン写真
手術後の様子
骨折手術から半年後の写真です。固定していたピンは既に役割を終えて、少し移動しいるのが解ります。何かの折に痛みが出る可能性があるので、次回にピンを抜く予定となりました。
動画の写真の子が生後1年となり、使用していたピンを抜き、抜糸した時の写真です。こんなに立派になりました。
犬の十字靭帯は、大腿骨の遠位端と下腿骨の近位端をつないでいる靭帯です。この靭帯の断裂は、膝に過度の緊張や負担がかかったりした場合に突然発症するケースが殆んどです。当然、靭帯が断裂すると膝関節が緩み、不安定な状態になります。 私の経験では、犬の犬種や体格には関係ない様に思われますが、比較的小型犬での発症を目にします。
この症例はトイプードルの9歳です。とても大切に育てられていますが、ちょっとしたきっかけで左後肢をびっこするようになりました。身体検査等で確認すると十字靭帯断裂であることがわかりました。次の動画は手術までの歩行状態で左後肢が殆ど負重していない事がわかります。
次の動画は手術後凡そ10日後の状態です。バンテージはしているものの、左後肢は地面に負重していることがわかります。もう少しで退院です。
次の症例は十字靭帯断裂を確定して手術しましたが、入院内では全く立ち上がりませんし、動きません。ただのんびりしているだけなので、術後の肢の状態が良いのか?悪いのか?判断が付きかねた症例です。あまりにも動かないので本日、確かめてみました。動画のように悪くないようです。
次の症例も4歳の避妊済み雌のチワワです。やはり急に痛がり、跛行を示して来院されました。検査をすると十字靭帯断裂の可能性が高いため、レントゲンにて確認して確定診断をしました。この動画は術後2日目の状態です。飼主さんにしか慣れていないので、私たちの前では全く動きませんが、ご覧の通り足は着地しているので問題ない様に思えます。引き続き経過観察をしながら入院をしています。
手術5日後もすると随分と余裕が出てきます。表情と態度が穏やかですね。
次の動画は手術8日後に抜糸が終了した状態です。随分と活動性と本来の性格が出てきますね。
次の症例はペキニーズの症例です。やはり跛行が1週間以上続いために来院されました。次の動画は手術後4日目の状態です。まだ不安定ながらも患肢(右後肢)は着地しています。この症例もバンテージにより患肢の負担軽減をする効果が得られます。
次の動画が術後11日目の状態です。バンテージを外した状態で歩行に馴らしています。
次の症例は12歳の柴犬の男の子です。ロープで遊んでいたら絡まり、キャンと鳴いた後から右後肢を挙上したままになり、来院されました。見ていてもかなり痛そうで、ほとんど右後肢が着地していませんね。
次の動画が手術して4日経過した時の状態です。右後肢にはバンテージで固定されています。足は少しづつですが、着地していますね。
次の動画が手術して10日経過した時の肢の状態です。なるべく安静に過ごしていますが、かなり痛みも低下しためか?凄く引っ張る力が強く、肢も随分安定した状態であることがわかります。もう少しで退院ですね。退院時にはバンテージもエリザベスカラーも外して退院です。
次の症例もシーズーの8歳の男の子です。やはり、跛行を示すことで来院しました。下の動画では、左後肢に負重できずに歩行していることが解ります。
身体検査とレントゲン検査にて十字靭帯断裂の診断がつけられ、手術になります。手術は、不安定な膝関節を安定するように行います。次の動画は手術1週間後の歩行状態です。随分と安定して歩行していますね。手術した左後肢にはバンテージ固定しています。時間が経つにつれより安定した歩行になります。
次の症例も比較的若いキャバリアの男の子です。何した訳でもないのですが、急に「キャン、キャン」と鳴いた後から右後肢をびっこを引くようになり来院されました。身体検査等で十字靭帯断裂を疑い、レントゲン検査で確認して手術になりました。次の動画は手術3日後の状態です。痛みに敏感なのか?手術翌日はじっとしていましたが、ようやく本来の調子に戻り食欲が出るようになりました。
次の動画は抜糸の時の状態です。傷口も良好です。
次の動画は、手術13日後で退院まじかの歩行状態です。あまり左右変わりませんね。包帯が巻いてある右足が患肢です。
次の症例は雄のマルチーズです。十字靭帯が切れることで、後肢は不安定になり跛行を示すことになります。下の動画は、手術前の歩行状態で、右後肢がぎこちない歩行になっているのが解ります。こ
次の写真が手術翌日の写真です。少し痛々しいですが、痛みがなくなってくると手術前と異なりしっかりと負重します。2週間後の退院となります。
膀胱結石は、文字通り膀胱内で結石が形成される病気です。結石も顕微鏡で確認されるくらいの結晶から始まり、徐々に大きくなります。大きくなった結石はやがて、尿道を閉塞してしまう結果となることも少なくありません。また、尿道は雌犬より雄犬の方が細いため、雄犬の場合には小さな結石でも尿道を閉塞する危険性があります。排尿が出来なくなった場合には、膀胱結石摘出手術になります。症状は、頻尿、血尿、排尿困難などが一般的です。
次の症例は「尿意はあるが、排尿できない。」と来院された9歳の雄犬です。触診すると下腹部が張って硬くなっています。排尿できないために大きくなった膀胱と思われます。レントゲン撮影すると膀胱と尿道に結石があるのが解ります。 尿道の結石は恐らく精巣の上あたりにあると思われます。結果的には全く排尿できないため、すぐに手術をする必要があります。
次の症例は、2歳の雌犬です。最近、血尿が続くという主訴で治療をしていましたが、血尿が続くためレントゲン写真を撮ってみると、下の写真の様に比較的大きな結石が下腹部に写っていました。
この結石が本当に膀胱なかに存在するのか?エコーにて確認しました。
症状、レントゲン写真、エコー検査といずれも膀胱結石の可能性が高いので全身麻酔にて膀胱結石を摘出することとなりました。因みにこの犬の一般状態や血液検査等に異常は認められませんでした。ただ、血尿が止まらないということでした。下の写真のように元気です。
これがレントゲン写真に映っていた膀胱結石です。
まだ、2歳だからこんなに大きな結石は出来ていることは予想外でしたが、はっきりと血尿の原因がわかり、それを取除くことができました。ただし、膀胱結石は、犬の体質と食事に関係していることが多いので、今後も定期的な尿検査と食事管理が必要になるかもしれません。
雌犬の膀胱結石が写っている下腹部のレントゲン写真です。この症例は9歳くらいですが実は3~4年前にも排尿困難で膀胱結石摘出手術をしています。再発の膀胱結石です。棒で指したところに、結石が4個あります。
下の写真が実際の膀胱結石です。手術は、膀胱を開けて結石を取り除く作業となります。因みに膀胱結石の種類はいくつか知られ、下の結石はストルバイトという種類でした。
超音波スケーリングは、抜歯処置が必要な全ての犬に行ないます。これにより、歯の表面を覆っている歯石を除去できるからです。また、歯と歯肉の間に存在するプラークも丁寧に除去することができます。一方、抜歯は、歯の根元が化膿してしまう歯根膿瘍あるいは口腔内の腫瘤を切除する時に行ないます。また、スケーリング後に歯を観察して、近いうちに直に抜歯が必要になる場合にも行います。
また最近ではペットの高齢化が進み、高齢犬における歯科処置も増えています。高齢犬に全身麻酔をかけて大丈夫なの?という質問をよく受けます。安全な全身麻酔はありませんが、検査をして安全に行えるように努めています。次にご紹介する症例は15歳のミニチュアダックスフントです。少し痩せていて、両眼は老齢性の白内障です。症状は臼歯に重度付着した歯石から歯肉炎がおこり、さらに皮膚が壊死して穴が開いてしまっています。 身体検査、レントゲン検査、血液検査と異常がなかったので、処置を行うことになりました。次の動画が処置前の状態です。
この症例は殆どの歯の状態が悪く、残った歯は3本だけでした。次の動画が歯科処置翌日の朝ごはんを食べている動画です。歯の痛みが取れてむしろ食事がすすんでいるようです。この感想は、歯科処置をした飼主さんからもよく耳にする感想です。
下の写真は歯根膿瘍にて抜歯が必要な症例の写真です。目の下が赤く炎症を起こしているのが解ります。ここは臼歯の歯根があり、歯根に膿が溜まったため、炎症を起こしています。つまり、この歯を抜いて消毒する必要があります。
下の写真は、口腔内の腫瘤があるため、抜歯をしてから腫瘤を摘出しました。
腫瘤を摘出した後の写真です。
乳歯遺残は、若齢小型の犬の乳歯、特に犬歯の乳歯が残る症例を多く見かけます。
多くは、永久歯が横から出てくることで乳歯が押出されて抜けることになりますが、
永久歯があるにも関わらず乳歯が横にあることでその間に食事の残渣等が詰まりやすくなります。
結果、永久歯の犬歯の周囲から歯周炎や歯肉炎などダメージが進行することになりますので、出来ることならば、乳歯遺残が存在するならば抜歯をお勧めします。
下の写真は犬歯の横に細い犬歯の乳歯が残っているのが解ります。
次の写真は下顎の切歯が全て乳歯遺残となっていて、2列になっていることが解ります。割合は少ないですが、時折見られます。こうした場合にも避妊手術と一緒に乳歯を抜歯します。乳歯遺残があるのは、小型犬が主ですが柴犬などの中型犬でもごく希に認められます。
次が抜歯後の写真です。この症例は乳歯が8本残っており全て抜歯しました。